持続可能な社会の実現に貢献する多彩な集合住宅を提供
大東建託株式会社
長期環境目標「DAITO 環境ビジョン2050」を策定し、それに基づく建築、暮らし、ごみ、企業、自然、人の6つの取り組み分野を「エコ・ファーストの約束」として提出し、エコ・ファースト企業に認定された大東建託株式会社。ここではその先進性、独自性、波及性が認められた6分野にスポットを当てながら、同社の技術が結集した商品についてインタビューした。
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●オンラインインタビューに登場いただいた方
技術開発部 環境企画課 課長 大久保孝洋 氏
技術開発部 環境企画課 松永 隼太 氏
ビジョンを実現していくために重要となる6つの分野
――「DAITO環境ビジョン2050」を具体的に展開するために6つの分野を選んだポイントは、何でしょうか。
松永:この6つの分野は「DAITO環境ビジョン2050」にもとづき「事業活動を通して持続可能な社会の実現に貢献する」上で欠かすことのできない領域になります。
何よりも当社は建設会社であるので1つめに「建築」を挙げ、建物を建てるときの環境配慮とCO2排出量の削減を掲げています。2つめの「暮らし」については、当社は建物の建設だけではなく、不動産事業も行っています。その意味で入居者様の暮らしの中で入居中のCO2排出量のゼロを実現することも重要となります。3つめの「ごみ」では、すべての廃棄物の循環利用を実現し、サーキュラーエコノミーに通じることを目標にしています。次に「企業」です。これによって2050年までに事業活動においてCO2排出量ゼロの達成を目指していることを明確にしています。5つめの「自然」では自然環境と共生した社会の実現を訴え、最後の「人」では、以上の目標を実現するのは人であり、環境に配慮した人と組織をつくってまいります。
これらが6つの重点取り組み分野となり、その施策も様々にあります。たとえば「建築」では工期の短縮や排出量の見える化に努めています。この点に関して当社が注力しているのはLCAです。建ててから壊されるまでCO2ゼロを超えてカーボンマイナスになるLCCMというコンセプトの建物も開発されてきています。また施工現場の脱炭素化ということに関しては施工現場でも再エネを使うという取り組みになっております。
また「暮らし」では、ZEHの販売推進や省エネ資材を開発し、お客様の暮らしを快適にし、その中からCO2排出量の削減を推し進めていく施策となっています。
目標に関しては、当社はSBTに加盟しておりますので2030年に向けた1.5℃水準の削減目標を設定しております。これは大手の建設業では今、現在1.5℃の認定を取得しているのは当社のみとなっております。
具体的な目標達成へのアプローチとして、RE100に加盟し、事業活動に必要なエネルギーを100%再エネに切替える取組を推進しています。ここで根本から削減し、さらに足りない分に関してはEP100に加盟し、エネルギー効率の向上の取り組みを進めることで、CO2削減目標の達成を目指しています。
国内初となる2つの集合住宅でCO2削減に貢献
――ビジョン実現でしていく上で鍵になる商品にはどのようなものがありますか。
大久保:代表的なものがZEHになります。ZEHは、本来戸建ての基準であり、集合住宅にはなかったのです。そこで当社は戸建てのZEH基準を満たす形で2017年11月に静岡県で国内初となる集合住宅を完成させました。
これを皮切りにこの4月に新たにラインナップしたのが蓄電池搭載型のZEH賃貸集合住宅であり、屋根をフラットにしながら太陽光パネルを設置しているのが特徴です。その上でポイントは蓄電池を搭載しているところにあります。昨年度のFIT固定買取制度から10 kW超の場合は30%の自家消費が必須条件となっています。しかし、これだけの太陽光パネルであれば搭載容量10 kWを超え、入居者は働いている人が多いため、朝夕に電気の使用が集中し、自家消費率も30%を超えません。そこで蓄電池を設けることで昼の余剰分を夜に回して自家消費率をアップさせています。もちろん蓄電池は災害時にも使えるので「災害復旧型ZEH賃貸集合住宅」となっています。
賃貸住宅の場合は資本を投入するオーナーである出資者と太陽光発電や蓄電池の恩恵を受ける入居者という受益者がちがってきます。そこでオーナーにもメリットを還元できるよう、太陽光パネルを設置した屋根を借りる賃料を当社でお支払いしています。
もう一つの商品がLCCM賃貸集合住宅となります。LCCM住宅は「ライフ・サイクル・カーボン・マイナス」を意味し、建設時、運用時、廃棄時において可能な限り、省CO2に取り組み、さらに太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出で住宅建設時のCO2排出量も含めライフサイクルを通じてのCO2の収支をマイナスにする住宅となります。ZEHは単位がエネルギーですが、LCCMは単位がCO2そのものであることも特徴です。
LCCMの戸建て住宅は今までも造られてきましたが当社は日本で初めてのLCCMの賃貸住宅の建築に成功しました。LCCMは戸建ての基準はあったのですが集合住宅はありませんでした。その後、戸建てのZEHが増える中、ZEH-Mという集合住宅向けの規格ができました。それを見据えて今回もLCCMが集合住宅でも可能になることを、実際に建てる事によって実証させていただきました。これに伴ってLCCMの集合住宅向けの基準というものができることを望んでいます。有難いことにこの賃貸住宅は第4回「エコプロアワード」(主催:一般社団法人サステナブル経営推進機構)の優秀賞を受賞しております。
炭素貯蔵効果があり、入居者のCO2排出も抑えるCLT工法
大久保:次はCLT工法の集合住宅です。CLTはクロス・ラミネイティド・ティンバーの略称で、木材を縦と横に交互に重ねた分厚いパネルをふんだんに使いますので炭素貯蔵効果や適正な林業の成長に寄与できます。当社が設計したのは4階建ての中層のマンションです。この商品は「DAITO環境ビジョン2050」の中でも、CLT(木)を使うことで、CO2を多く排出する鉄筋やコンクリートの使用を大幅に減らすことができ、”特に「建築」の目標に貢献できます。また、CLTによって木が吸収するCO2を建物に貯めておく、炭素貯蔵効果もあります。加えて、CLTが持つ高い断熱性は入居者様のCO2排出を抑え「暮らし」の目標達成にもつながります。
2019年に発売し、既に設計を進めている案件がいくつかはありますが今後はこの集合住宅をシリーズ化していく予定です。この集合住宅はCLTという新しい工法に挑み、普及に努めたことが評価され、環境大臣賞2賞及び国土交通大臣賞、省エネ大賞を授与いただき、4冠を達成しています。
――今回のエコ・ファースト企業の認定は社内でどのような反響がありましたか。
大久保:私たちのステージとなる現場の中では、エコ・ファーストの認定を受けた住宅関連の企業と競合することもあり、それらの企業が一歩先を走っているように感じていました。しかし今回の認定で同じラインに立てたという体感があります。実際に現場のエコ・ファースト企業であることを看板等で掲げましたが、営業サイドだけではなく、技術のスタッフからも多くの反響がありました。
当社は技術開発部門の中に環境関係のセクションがあります。それは建設会社である以上、提供する商品が建物になりますので環境についても商品と結びつけていくべきだと考え、技術開発部の中に設けています。このことで現場に直結した対応ができると考えています。そういった現場から地球環境の保全を進める一員としてエコ・ファースト企業の認定は大きな意義を感じています。
- ZEH寄棟タイプ
- ZEH段違い屋根+蓄電池
- LCCM
- CLT