気候変動へのより強力な取り組みが求められるエコ・ファースト企業

社員一人ひとりが、科学技術で社会に貢献する
エコ・ファースト企業
株式会社島津製作所

 145年以上前に京都で事業を興し、現在は分析・計測機器、医用機器、産業機器などで、様々な分野における研究開発・生産・品質管理、そして新薬の開発や医療機関における診断などをグローバルで支援している株式会社島津製作所。同社は、環境課題を解決するために『脱炭素社会』と『循環型社会』の実現を目指し、全事業所でCO2排出量の削減や廃棄物のリサイクル率向上など、環境負荷の低減策を強化してきた。さらに優れた環境性能の製品を提供していくために、自社製品の消費電力を従来品よりも25%以上削減するなど基準を達成した製品を認定する「エコプロダクツPlus」の取り組みを推進するほか、すべての新製品について、環境負荷低減を目指した開発を行っている。
また、地球環境保全を支援する分析計測機器を長年にわたって開発、提供し、近年は環境・新エネルギー分野の新たな技術開発の支援にも注力している。
そういった同社に、最新の脱炭素社会と循環型社会に対する取り組みやCSRとCSVについての視点を中心に話を伺った。

エコ・ファーストの約束PDFを表示


●オンラインインタビューに登場いただいた方
環境経営統括室
シニアマネージャー 阪ノ下 健 氏
主任        前田 綾 氏

社内外でエコ・ファースト企業であることを周知

――昨年の『エコ・ファースト企業』の認定に対する社内の反応はどのようなものがあったでしょうか。何かエピソードのようなものがあれば教えてください。
前田:環境大臣から直接認定証をいただく認定式を開催していただき、それまでエコ・ファースト制度を知らなかった社員にも興味を持ってもらう、良いきっかけになったと思っています。またエコ・ファースト企業であることをウェブサイトで社内外に開示、当社のエコ・ファーストの約束や認定式の写真は、ショールームや工場などに掲示し、お客様へ社員が説明できるようにしています。
社員が意識していくことはもちろんですが、お客様にも認識していただくことで、エコ・ファースト企業の一員としての取り組みを広げていきたいと考えています。

再エネ電力100%の目標達成と3Rの推進に取り組む

――『脱炭素社会』と『循環型社会』の実現に力を注がれていますが、それぞれ最新のトピックスを教えてください。
前田:脱炭素社会に関しましては2021年の3月24日、RE100に加盟し、国内外の島津グループが使用する電力を2050年までに再エネ100%にすることを宣言しています。これについては中間目標を設定し、2030年度に85%、2040年度に90%にすることを掲げ、電力の再エネ化を図っているところです。
 2021年7月には、当社の国内グループの工場や研究所などの主要な拠点に、再エネ電力を導入しました。このことで島津グループが使用する電力の再エネ率は80%に達しました。昨年度が7.5%でしたのでかなりの飛躍だと思います。
 また、カーボンニュートラルについては、世界中で今、進められているグリーン成長に向けた各施策が経済活動の中心になると認識し、様々な技術課題の解決に当社の製品やサービスが貢献できると考えています。具体的には水素燃料やバイオ燃料、洋上風力などの再エネ分野、また自動車蓄電池関連の技術開発や品質管理において、当社の製品や技術などを提供してまいります。
 循環型社会につきましては今回、統合報告書でも紹介させていただいていますがリデュース、リユース、リサイクルの3Rを進めています。リデュースではバイオプラを梱包材に使用し、リユースに関しては社内の梱包材を再利用しています。リサイクルに関しては木製パレットや木枠の梱包材などを多く使っているため、そちらを木炭化して、土壌改良剤として社内の植栽に使う他、NPOに寄付をして使っていただく活動を行っています。

環境活動を先駆してきた企業の誇り

――CSRとCSV(戦略的CSR)の両輪を動かしていく上で重要なポイントは何になるでしょうか。
阪ノ下:以前は環境活動といいますと事業活動を進めていく上で負担に感じるという声が大きかったと思うのですが、現在は事業成長に環境の視点は欠かせないという認識に変わりつつあります。特に菅総理がカーボンニュートラルを宣言し、日本政府がグリーン成長戦略を打ち出し、今後10年間、経済と環境の好循環につなげていくという方針を出しました。課題はたくさんあると思うのですが、それらの解決に向けてはいろいろな新しい技術が必要ですし、そういった部分において私たちが社会貢献できると考えています。
 今、世の中ではSDGsやESGなどの言葉もようやく浸透しつつありますが、当社の社是は「科学技術で社会に貢献する」であり、経営理念が「人と地球の健康への願いを実現する」です。SDGsやESGといった言葉が出る前から、当社の社会的責任は社是や経営理念の形で社員の心にしっかり浸透しているのです。環境を大切にする考え方は自然に社員の心の中に入ってきていると感じていますし、行動も自然なものだと感じています。そこには社会貢献と事業活動を分けて考える意識はあまりないように感じています。当社では社是と経営理念がしっかりと社員に浸透していることが、CSRとCSVの両輪についても自然と取り組めているポイントだと思います。

インタビューページへのリンク

●佐藤工業株式会社

●株式会社島津製作所

●大東建託株式会社

●株式会社ネクシィーズグループ

●楽天株式会社