瀬戸内町ネリヤカナヤの海協議会が環境保全と地域の食文化を融合し、海・森・里が紡ぐ自然共生型のまちづくりの推進の一環として「奄美大島マングローブ植栽×自然共生お弁当プロジェクト」を瀬戸内町の西側に位置する集落・小名瀬地区のマングローブ原生林付近と瀬戸内町漁業協同組合にて11月29日(土)に実施した。当日は協議会会員をはじめ、漁協職員・養殖業関係者、古仁屋高校の生徒、役場職員などが参加し、奄美大島・瀬戸内町が誇る沿岸生態系の再生に向けた実践的な活動が行われた。

瀬戸内町ネリヤカナヤの海協議会は地域の海洋資源の保全を軸に、地域の漁業・暮らし・文化を未来へつなぐことを目的に2024年に設立。藻場・マングローブ林・サンゴ礁・ウミガメの産卵地など、多様な自然環境が広がる「ネリヤカナヤの海」を対象に、瀬戸内町漁業協同組合、瀬戸内町、地元企業、専門家が連携し、地域一体となった保全活動を行っている。

ネリヤカナヤは奄美の方言で「海の彼方にある理想郷」を意味し、瀬戸内町内の白浜、諸数、小名瀬、デリキョンマ、安脚場、西阿室の6か所を自然共生サイト登録の対象とし、それぞれの地区で保全活動などを実施している。

今回のプロジェクトでは小名瀬地区でのマングローブの植林、瀬戸内町漁協での自然共生サイト及び参加企業のプレゼンテーションと自然共生お弁当の試食が行われた。

マングローブの植林は、これまでのメヒルギに加え、初めてオヒルギを植栽、オヒルギは約54本、メヒルギは約135本を植栽。メヒルギとオヒルギは、塩分濃度・水位・地盤高といった微妙な環境条件の違いによって生育場所が分かれる種類のため、メヒルギは干潟の中でも海側に、オヒルギは陸側に配置し、現場の環境差に合わせて一本ずつ丁寧に植え付けが行われた。

さらに自然共生サイトに認定された地域素材を活用した「自然共生お弁当」の試食も実施され、環境保全と地域資源のつながりを体感する機会となった。

説明会は、瀬戸内町ネリヤカナヤの海協議会のアドバイザーを務め、山川漁業協同組合および「山川の海のゆりかごを守る会」の会長でもある川畑友和氏の進行でスタート。

専門家によるレクチャーでは、マングローブの研究者・海辺つくり研究会理事長である古川 恵太氏がマングローブの歴史や生態とブルーカーボンの価値について解説し、世界の酸素の半分以上を海が生み出していること、マングローブがCO2を吸収して炭素を蓄えるブルーカーボン生態系の中心的存在であることに加え、台風や高潮から海岸線を守る防災機能を持つことも紹介され、マングローブ林の再生が地球規模の気候変動対策として極めて重要である点が強調された。瀬戸内町役場水産観光課の禧久 幸太氏からは、藻場の消失や水産資源の減少といった環境問題、そして漁業の存続という社会課題について説明があった。