グリーン購入ネットワークでは、「持続可能な調達」を通じて、グリーン市場の拡大に貢献した取り組みやSDGs の目標達成に寄与する取り組みを表彰する「第26 回グリーン購入大賞」の受賞団体を以下のとおり決定した。なお、表彰式は12 月17 日(水)10 時より、コングレスクエア日本橋にて開催。

【大賞・環境大臣賞】
株式会社スーパーホテル

【大賞・経済産業大臣賞】
amu 株式会社

【大賞・農林水産大臣賞】
一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会

第26回グリーン購入大賞 受賞団体一覧

【賞】
受賞団体(応募部門)
タイトル
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【大賞・環境大臣賞】
株式会社スーパーホテル (大企業部門)
お客様と共に取り組む脱炭素実現への取り組み〔CO2 実質ゼロ泊〕

【大賞・経済産業大臣賞】
amu株式会社(中小企業部門)
海と生きるマテリアル「amuca®」で「いらないものはない世界」を実現

【大賞・農林水産大臣賞】
一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会(農林水産特別部門)
FOOD MADE GOOD 未来のレシピコンテスト
~サステナブルな料理人への扉を開くサステナビリティマスタープログラム~

【大賞】
国際航業株式会社(大企業部門)
持続可能な原料調達支援サービス「診ま森(みまもり)GLOBAL」

【大賞】
三和石産株式会社(中小企業部門)
生コン輸送にも配慮した再生セメントを使用した環境配慮型コンクリート

【大賞】
雪ヶ谷化学工業株式会社(中小企業部門)
B to B to The Future 〜ものづくり中小企業のサステナブルチャレンジ〜

【大賞】
株式会社カインズ (農林水産特別部門)
店舗をハブにした園芸用土の水平リサイクルシステムの構築(店舗で回収・再生品販売)

【優秀賞】
セイコーエプソン株式会社(大企業部門)
オフィス内紙循環で持続可能な社会への貢献を行う乾式オフィス製紙機 Paper Lab の製造、販売

【優秀賞】
八千代エンジニヤリング株式会社(大企業部門)
全国で拡大中!官民連携でごみ焼却施設から創出したグリーン電力証書で地域脱炭素促進

【優秀賞】
株式会社ウッドプラスチックテクノロジー(中小企業部門)
PPバンドを水平リサイクルした梱包用バンド「グリーンライトバンド」

【優秀賞】
奈良県地域デジタル化推進協議会 (行政・民間団体部門)
パソコン・プリンタ等の共同調達を通じた環境負荷の低減

【優秀賞】
山形市 (行政・民間団体部門)
わたしの工夫、一歩ずつ。~山形市環境マネジメントシステム~

【優秀賞】
株式会社ナチュラファーム(農林水産特別部門)
欧米で普及するエイビアリー(直立多段式平飼い)飼育による鶏卵の持続可能な調達を目指して

●グリーン購入大賞

グリーン購入大賞は、環境や社会に配慮した製品やサービスを環境負荷低減と社会的責任の遂行に努める事業者から優先的に購入する「グリーン購入」の普及・拡大に取り組む団体を表彰する制度として、1998 年に創設した。第 26 回グリーン購入大賞では、持続可能な調達(消費と生産)を通じた SDGs の目標達成、とりわけ、脱炭素社会やサーキュラーエコノミーの実現に寄与する取り組みを募集し、審査を行った。また、特別部門では、第25 回に引き続き、持続可能な農林水産業の実現に向けた取り組みを対象とした「農林水産特別部門」を設けた。

応募部門

大企業部門、中小企業部門、行政・民間団体部門、農林水産特別部門

審査方法・審査結果について

5 月28 日~7 月31 日に募集を行い、全国より応募のあった取り組みについて、1 次審査(9 月4 日)、本審査(10 月29 日)を経て受賞団体を選定した。

「大賞」は大企業部門:国際航業株式会社、株式会社スーパーホテル、中小企業部門:amu 株式会社、三和石産株式会社、雪ヶ谷化学工業株式会社、農林水産特別部門:株式会社カインズ、一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会の7 団体、優秀賞は、大企業部門:セイコーエプソン株式会社、八千代エンジニヤリング株式会社、中小企業部門:株式会社ウッドプラスチックテクノロジー、行政・民間団体部門:奈良県地域デジタル化推進協議会、山形市、農林水産特別部門:株式会社ナチュラファームの6 団体に決定致した。

また、「環境大臣賞」は株式会社スーパーホテル、「経済産業大臣賞」はamu 株式会社、「農林水産大臣賞」は一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会への授与が決まった。

【審査総評】 審査委員長 梅田 靖 GPN 会長(東京大学大学院教授)

今年の初め、2024 年の世界平均気温がパリ協定が目指す 1.5℃目標を初めて超えたと報道され、世界に衝撃が走りました。気候変動対策に異を唱え、国としての方針を転換する動きも見られる中、ビジネスの現場ではサプライチェーン全体で温室効果ガス(GHG)排出量を削減する取り組みが広がり、削減努力を可視化したり、公共調達等を通じて環境配慮型製品の市場創造につなげたりする動きが活発化してきていることは、好ましい傾向と言えます。

グリーン購入大賞は、持続可能な調達(消費と生産)を通じて、温室効果ガス削減等の環境保全や社会課題の解決につながる優秀事例を表彰し、普及させることを目指しています。26 回目となる今年度も、SDGsの目標達成に寄与する消費と生産の取り組みを募集し、「農林水産特別部門」も含め、全体で 13 団体を表彰しました。

今年度は、これまでの取り組みをカーボンニュートラルへ発展させたり、環境価値を可視化・証書化させたり、プラスチックを中心とした資源循環を高度化させたりする事例の応募が見られました。資源循環では、全国の漁港で発生する漁網やコンクリートの再資源化、プラスチック資材や園芸用土の水平リサイクル等、バラエティに富んだ応募がありました。これらの事例では、顧客やステークホルダーへ情報発信することによる啓発効果と取り組みへの共感の獲得、共感を得やすくするためのストーリーデザインに趣向を凝らしている点が特徴的でした。

また、新たなビジネスを興そうとするスタートアップや、業界の環境配慮を底上げするために次世代を育成する取り組みも印象深いものでした。サプライチェーン全体の環境負荷削減を実現するうえで、原材料の調達における自然環境や生産者の権利への配慮は、最も重要なポイントの一つと言えます。原材料調達におけるリスク対策をサポートするサービスやフェアトレード天然ゴムの調達の事例は、原料産出地への向き合い方のヒントとなるものでした。環境マネジメントシステムの中にグリーン購入を位置付けたり、近隣の他団体と連携して共同調達を行ったりする事例は、資源(人材・予算・知見)が限られる中で効率的にグリーン購入に取り組む知恵と、まだ十分に取り組めていない地方自治体へグリーン購入を広げるポテンシャルがあることを示してくれました。

これらの 13 事例は、Think Globally, Act locally の手本であり、私たちの道標と言うことができるでしょう。企業・地方自治体・団体の方々には、成果に至るプロセスや関係者との連携の形等のエッセンスを掴み取っていただき、自らのフィールドでの実践に活かしていただきたいと思います。

本審査委員(敬称略)

【委員長】
梅田 靖(東京大学大学院 工学系研究科人工物工学研究センター 教授、GPN会長)

【委 員】
伊坪徳宏(早稲田大学 創造理工学部 環境資源工学科 教授、GPN 副会長)
奥 真美(東京都立大学 都市環境学部 都市政策科学科 教授、GPN アドバイザー)
石川雅紀(叡啓大学 特任教授、神戸大学 名誉教授、GPN アドバイザー)
近藤康之(早稲田大学 政治経済学術院 教授)
栗栖 聖(東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻 准教授、GPN アドバイザー)
平尾禎秀(環境省 大臣官房環境経済課長)
中原廣道(経済産業省 GX グループ 環境政策課長)
坂下 誠(農林水産省 大臣官房みどりの食料システム戦略グループ地球環境対策室長)
池田三知子(日本経済団体連合会 環境エネルギー本部長)
竹ケ原啓介(政策研究大学院大学 教授)
崎長敬志(読売新聞東京本社 編集局生活部 次長)
江口 一(毎日新聞社 くらし科学環境部 部長)
田中太郎(日経 BP 日経 ESG 事業室 シニアプロデューサー)

「大賞・大臣賞」 受賞団体の取り組み概要

【大賞・環境大臣賞】
株式会社スーパーホテル(大企業部門)
「お客様と共に取り組む脱炭素実現への取り組み〔CO2 実質ゼロ泊

【取り組み概要】

株式会社スーパーホテルは、2010 年より、公式ホームページ経由の予約および Premier 店舗の利用室分を 対象に、宿泊に伴う CO2 排出量(Scope1、2 相当)をカーボン・オフセットする「ECO 泊(エコ泊)」を提供してきました。2024 年 10 月からは、対象範囲を全ての宿泊に拡大し、「CO2 実質ゼロ泊」のサービスを開始しました。宿泊時のガス・水道の使用による CO2 排出量は 100%カーボン・オフセットし、電力消費に関しては電力会社の CO2 フリープランや非化石証書を活用して全ての宿泊施設で再生可能エネルギー由来のグリーン電力を使用しています。2025 年 3 月までの「ECO 泊」および「CO2 実質ゼロ泊」の宿泊数は 延べ約 2,959 万泊となっており、カーボン・オフセットによる累計削減量は 154,957t- CO2 に達しています。「CO2 実質ゼロ泊」はホテルとしての環境負荷低減の取り組みであると同時に、お客さまによる宿泊サービスのグリーン購入の実践につながります。

【評価ポイント】

長年継続的に実施されてきた ECO 泊の取り組みを、全ての宿泊に対象を拡大し、業界をリードする CO₂ 削減の活動として実現させた点は高く評価できる。特に、環境配慮の取り組みについて宿泊者への啓発、 従業員への環境教育、地域と連携したクレジットの創出等、様々なステークホルダーとの協働の輪を積極的に広げている点は他の模範となる取り組みといえる。今後、このような取り組みが消費者におけるホテル 選択の基準となるよう、業界全体への波及や貢献を期待する。

【大賞・経済産業大臣賞】
amu 株式会社(中小企業部門)
「海と生きるマテリアル「amuca®」で「いらないものはない世界」を実現」

〈取り組み概要〉

amu 株式会社は、「いらないものはない世界」の実現をビジョンに掲げ、耐用年数を終え使用済みとなった漁具が環境負荷をもたらし、その処分が漁業者にとって経済的負担になっている状況を踏まえ、使用後の 漁具を漁師から買取り高品質の素材に再資源化する事業を展開しています。漁具の回収から素材・製品開発、流通まで一貫したサプライチェーンを構築し、トレーサビリティも確保に努めています。これまで 30 を超える都道府県の漁港を巡り、現地の漁業者との関係構築や漁具回収に関する相談を行った結果、見込み回収量は約 100 トンに達しています。

また、素材の品質や透明性を保証する「amuca®タグ」を提供し、QR コードを読み取ることで、どの地域で回収した廃漁具を使用しているかを見える化し、集積地域、漁具提供者、回収量などをその場で伝えています。
amu 株式会社では、これらの取り組みを通じてサーキュラーエコノミーの実現に寄与するとともに、漁業を営む地域において新たな価値を生み出すことに貢献しています。

〈評価ポイント〉

廃漁具の回収から製品製造・販売まで行うシステムの構築に加えて、地域との結びつきを重視し、製品のQR コードから「物語」を発信することで、消費者に対して価値を伝え、海洋プラ問題への意識変革の促進につなげている点は高く評価できる。多くの情報をコンパクトで共感を得やすい形で発信されている工夫は他の模範といえる。また、地域産業としての漁業は、後継者不足など人的にも経済的にも厳しい状況にあるため、本取り組みを通じて、地域経済・雇用への貢献を期待する。

【大賞・農林水産大臣賞】
一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会(農林水産特別部門)
「FOOD MADE GOOD 未来のレシピコンテスト
~サステナブルな料理人への扉を開くサステナビリティ マスタープログラム~」

〈取り組み概要〉

一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会は、英国のサステイナブル・レストラン協会との連携により、調達・社会・環境を 3 本柱とした FOOD MADE GOOD スタンダードというグローバル基準に基づき、飲食店に包括的な食のサステナビリティへの取り組みを促しています。また、飲食店へのサポートも行い、フードシステムをよりサステナブルな方向へシフトさせるための活動を展開しています。

2021 年より実施している「未来のレシピコンテスト」は、若手料理人のサステナビリティへの意識を育成し、「何をつくるか」だけでなく「何を選ぶか」を問う機会としており、2024 年までの 4 年間に延べ約 130 人が参加しました。2025 年には受賞レシピを提供する協力店舗も生まれ、実店舗での展開により消費者の反応を得る機会ができるなど、食のサステナビリティの社会的な広がりにつながっています。

〈評価ポイント〉

食に関する環境負荷は重要な社会課題であるなか、「未来のレシピコンテスト」は、食に関わるステーク ホルダーを環境影響や社会影響の観点で結びつける機能を有し、若手料理人向けに持続可能な食材選定を促す教育型コンテストとして継続的に開催されており、次世代に繋がる活動として高く評価できる。特に、積極的に成果を社会に情報提供していること、海外組織との交流の場を設けていること、そして、料理人自身が食のサステナビリティについて探求し、消費者に発信する力を養うことなど、今後の展開が大いに期待できる。

「大賞」 受賞団体の取り組み概要

【大賞】
国際航業株式会社(大企業部門)
持続可能な原料調達支援サービス「診ま森(みまもり)GLOBAL」


〈取り組み概要〉

国際航業株式会社は、衛星画像と GIS 解析技術を活用して原料の調達先に潜在する森林減少や生物多様性への影響などの環境リスクを可視化し、継続的にモニタリングを行うサービス「診ま森(みまもり)GLOBAL」を提供し、持続可能な原料調達を支援しています。

本サービスは、調達先のマッピング、衛星データによる現地の状況把握、リスクの発生可能性や影響の大きさ等の評価、定期的なモニタリングなどのプロセスを通じて、リスクの早期発見、サプライヤーとの対話や現地調査の優先順位付けによる効率化、サプライチェーンの強化等を支援し、ステークホルダーへの説明責任を果たす役割をサポートします。これまでに、パーム油やカカオ豆など食品のサプライチェーンの透明化支援、製紙会社の森林管理支援などを行い、持続可能な調達の推進に貢献しています。

〈評価ポイント〉

原材料調達に潜むリスクを可視化し、継続的にモニタリングすることにより、取り組みの改善につなげる「診ま森(みまもり)GLOBAL」は、企業の持続可能な調達を推進するツールとして高く評価できる。また、衛星画像による継続的なデータ収集とその解析技術の進歩は、サプライチェーンの様々な環境リスクに対処する重要な要素となり、今後の発展を大いに期待できる。

【大賞】
三和石産株式会社(中小企業部門)
「生コン輸送にも配慮した再生セメントを使用した環境配慮型コンクリート」


〈取り組み概要〉

三和石産株式会社は、工事現場で使用されず工場に戻ってきたコンクリートの大半が廃棄されている状況を踏まえ、こうした戻りコンクリートを使用して高品質の再生セメントを製造する技術を確立しました。再生セメントを 10~30%使用した「SR コンクリート」は建設現場で活用され、利用拡大につなげています。「SR コンクリート」は、通常のコンクリートと同様の工事施工、維持管理を実施できる環境に配慮した コンクリートで、通常のコンクリートに比べ 1 ㎥あたり 8.7~26.1%の CO2 排出量を削減できます。こうした取り組みに加え、生コンクリートをより多く積載できるミキサー車を開発し、運搬回数の低減により輸送時の CO2 排出削減も実現し、低炭素化に関する取り組みを推進しています。これらの技術により、これまでの約 17,000 ㎥の納入実績による CO2 排出削減量は約 1,400t-CO2 に達しています。

〈評価ポイント〉

戻りコンクリートのほとんどが産業廃棄物として処分されるという重要な環境課題が顕在化する中、戻り コンクリートから再生セメントを製造する技術を開発し、環境配慮型コンクリートとして循環させる取り組みで実績をあげていることは高く評価できる。今後、再生セメントの更なる活用を通じて、工場現場における廃棄物削減、CO₂削減を期待する。

【大賞】
雪ヶ谷化学工業株式会社(中小企業部門)
「B to B to The Future 〜ものづくり中小企業のサステナブルチャレンジ〜」

〈取り組み概要〉

雪ヶ谷化学工業株式会社は、全社で SDGs プロジェクトを推進しており、全社員参加型のワークショップを開催し、議論を通じて生まれたスローガン「B to B to the Future」を掲げ、2030 年までの目標「雪ヶ谷 サステナブルチャレンジ 2030」達成に向け、製品開発や社内改革を推進しています。

この「雪ヶ谷サステナブルチャレンジ 2030」では、①スコープ 1、2 の CO2 排出量実質ゼロ、②再生可能原材料比 50%、③調達~納入の廃棄物 50%減、④女性管理職 50%、⑤日本国内で流通する天然ゴム 100%フェアトレード、の 5 つの目標を設定しています。

また、再生可能エネルギーの利用拡大、フェアトレード天然ゴムや植物由来原料を使用した化粧スポンジの開発などを進めるとともに、積極的に情報発信を行っており、ものづくりを営む中小企業としてサステナビリティへの取り組みのあり方を追求し、着実に成果につなげています。

〈評価ポイント〉

全社員のワークショップを通してサステナブル経営の課題を見極め、サプライチェーン全体での自社の役割を認識した上で、5つの目標を掲げ継続的に取り組んでいること、化粧品業界において積極的な環境配慮型製品の開発に取り組んでいる点は高く評価できる。また、様々なステークホルダーとの連携、協働を重視し、サステナブル経営を進めていく中小企業の好事例として、今後の活動の発展を期待する。

【大賞】
株式会社カインズ(農林水産特別部門)
「店舗をハブにした園芸用土の水平リサイクルシステムの構築(店舗で回収・再生品販売)」

〈取り組み概要〉

株式会社カインズは、地域共生を志向する「くみまち構想」のもと、市民・自治体・企業と連携した園芸用土の水平リサイクルシステムを構築。店舗がハブとなり、地域課題解決と持続可能な社会づくりを推進しています。

多くの自治体は古土の処分方針がなく、家庭ゴミ混入や不法投棄、土資源の循環利用が課題です。本シス テムは、自治体が市民に周知・啓発。市民は異物除去した不用な園芸用土を店舗へ持参。店舗は無料で回収・一時保管。土メーカーは店舗から回収後、工場で焼成・殺菌を行い、他の植物由来原料やリサイクル原料と配合し循環型園芸用土を生産。店舗で再販売することで水平リサイクルを実現。現在まで約 200t の園芸用土を回収、循環型培養土(10ℓ)を約 10,000 袋販売し、土資源が循環する持続可能な社会づくりに貢献しています。

〈評価ポイント〉

店舗をハブに、園芸用土の回収・再利用・再商品化のシステムを構築し、水平リサイクルを実現させた点、特に、自治体と市民の共通課題であった処理方法と資源循環を両立する仕組みは高く評価できる。また、様々なステークホルダーが関わる協働事例といえることから、今後、更に多くの自治体と連携体制を構築し、循環型園芸用土の普及と市民の意識向上を期待する。

「優秀賞」 受賞団体の取り組み概要

【優秀賞】
セイコーエプソン株式会社(大企業部門)
「オフィス内紙循環で持続可能な社会への貢献を行う乾式オフィス製紙機 Paper Lab の製造、販売」

〈取り組み概要〉

セイコーエプソン株式会社は、「繊維化」・「結合」・「成形」の 3 つの技術で構成される独自技術「ドライファイバーテクノロジー:DFT」により、オフィスで発生した使用済みコピー用紙をその場で新たな用紙に再生する世界初の乾式オフィス製紙機「Paper Lab」を 2016 年に開発し、近年小型化を実現しました。「Paper Lab」は、コピー用紙からコピー用紙への水平リサイクルにより、古紙配合率 100%の紙を生産でき、新たにコピー用紙を購入する場合に比べ、水消費量の大幅な削減と CO2 削減、木材資源の有効利用等に貢献します。利用者はモニター画面により、製紙実績や CO2 排出削減量、水消費削減量等をリアルタイムで確認できます。「Paper Lab」は企業や地方自治体などに導入が広がっており、紙の持続可能な消費・生産に寄与しています。

〈評価ポイント〉

独自開発した DFT 技術により、オフィス内で発生したコピー用紙の水平リサイクルを実現させたこと、従来の再生紙製造と比較し、CO₂排出量、水・木材資源使用量等、環境負荷低減につなげたことは評価できる。また、環境情報の見える化を推進し、利用者自身の動機付けや環境教育にもつなげた点は、他の模範となる取り組みといえる。

【優秀賞】
八千代エンジニヤリング株式会社(大企業部門)
「全国で拡大中!官民連携でごみ焼却施設から創出したグリーン電力証書で地域脱炭素促進」

〈取り組み概要〉

八千代エンジニヤリング株式会社は、自治体が運営するごみ焼却施設(バイオマス発電)からグリーン電力証書を創出し、地域内の企業に優先的に販売することにより、環境価値の地産池消を実現しています。これまで 10 自治体 11 施設と連携して事業を進めており、証書による年間の CO2 削減量は約 18,000t-CO2です。

このスキームを通じて自治体は新たな収入源の獲得が可能になり、得られた収益を清掃工場の維持管理や再エネ施策の拡充等の地域活性化に結びつけることができます。加えて、地域内の企業に対して初期コストを抑えた再エネ導入策の選択肢を提供し、再エネ導入の敷居を下げることにつながります。地域の企業は、脱炭素化を推進するととともに、環境や地域貢献といった側面から官民連携の脱炭素化を具体化させることができます。

〈評価ポイント〉

グリーン電力証書発行事業者として、自治体・地域企業に働きかけ、ごみ焼却施設における環境価値の地産地消を目指して好循環のシステムを作り実績を上げていることは評価できる。特に、自治体と地域企業を つなぐ役目を担っており、官民連携、CO₂削減と地域経済活性化を同時に実現できる取り組みである。今後、多くの自治体との協働を通じて、更なる広がりを期待する。

【優秀賞】
株式会社ウッドプラスチックテクノロジー(中小企業部門)
「PPバンドを水平リサイクルした梱包用バンド〈グリーンライトバンド〉」

〈取り組み概要〉

株式会社ウッドプラスチックテクノロジーは、梱包用の PP(ポリプロピレン)バンドメーカーや排出元企業、資源回収企業との連携、マテリアルリサイクル工場の新設などにより、分別・リサイクルの協力の環を拡げ、リサイクルプラスチックを原料とした製品への転換と資源循環に取り組んでいます。

PP バンドは、大半がバージンプラスチック製であり、使用後に廃棄されている状況です。当社の 2024 年のリサイクルプラスチック製 PP バンドの販売量は 1,075t で、全体の 49%を占めています。製品 1kg あたりのCO2 排出量は、バージンプラスチックからリサイクルプラスチックへの変更、焼却処理からマテリアルリサイクルへの転換により 4.28kg 削減され、2024 年の販売量による削減効果は 4,601kg-CO2 と試算されています。

〈評価ポイント〉

環境配慮型製品の製造に留まらず、原材料の確保、環境配慮型製品の認知度を高めるための様々な工夫・ 取り組みを実施しており、環境配慮型製品のマーケットをつくるプロセスを体現化した好事例と言える。 ほとんど処分されてきた PP バンドの水平リサイクルのシステムを構築したこと、確実に成果をあげている点は評価できる。

【優秀賞】
奈良県地域デジタル化推進協議会(行政・民間団体部門)
「パソコン・プリンタ等の共同調達を通じた環境負荷の低減」

〈取り組み概要〉

奈良県地域デジタル化推進協議会は、奈良県および県内市町村等が連携し、パソコン、プリンタ等の ICT 機器を共同で調達する取り組みを実施しています。調達にあたって、仕様書にグリーン購入法に準拠した 環境配慮型製品である旨を要件として明記することにより、持続可能な公共調達に寄与しています。

2025 年度の共同調達では県内 11 市町村が参加し、グリーン購入法に準拠したノート型パソコン 725 台を調達。共同調達を実施することにより、スケールメリットによるコスト削減に加えて、グリーン購入調達方針未策定の自治体や温暖化対策実行計画等にグリーン購入を位置づけていない自治体でのグリーン購入への認識を深め、取り組みの輪を広げることにつながっています。

〈評価ポイント〉

単独では組織的な取り組みとしてグリーン購入を実施できなかったり、手間がかかってしまったりする状況(課題)を克服するために、「共同調達」という仕組みを活用し、各自治体の事務作業の工数削減とコスト削減、グリーン購入を同時実現させている点は特徴的で、他の都道府県も参考にできる事例だと評価できる。

【優秀賞】
山形市(行政・民間団体部門)
「わたしの工夫、一歩ずつ。 ~山形市環境マネジメントシステム~」


〈取り組み概要〉

山形市は、平成 21 年度に独自の山形市環境マネジメントシステムを構築し、これに基づき、PDCA(計画・実施・点検・見直し)サイクルを通じて全庁の職員への環境配慮行動の定着を図っており、本システムの 一環としてグリーン購入を推進しています。

環境マネジメントシステム関連業務を担当する「環境リーダー」を各課に配置し、課内での環境配慮活動の呼びかけ、所管施設のエネルギー使用量等の調査、グリーン購入の実施状況の報告等を行っています。また、既存の「1物品1伝票」の仕組みを利用し、契約担当課が各課の発注物品 1 点ごとにグリーン購入基準に 照らして確認できる体制を整備しました。こうした取り組みによりグリーン購入率は 80%台に達しており、目標の 100%達成に向け継続的な活動を進めています。

〈評価ポイント〉

市独自の環境マネジメントシステムを構築し、継続的に課題の改善に取り組む PDCA サイクルで、全庁的に環境配慮行動を定着させグリーン購入率の向上に成果をあげていることは評価できる。特に、各課に『環境リーダー』を選任・配置し、「1 物品1伝票」の運用など、確実にグリーン購入を浸透させる取り組みは他の模範となる。

【優秀賞】
株式会社ナチュラファーム(農林水産特別部門)
「欧米で普及するエイビアリー(直立多段式平飼い)飼育による鶏卵の持続可能な調達を目指して」

〈取り組み概要〉

株式会社ナチュラファームは、アニマルウェルフェアの観点から、「鶏本来の行動欲求」を満たすエイビアリーシステム(直立多段式平飼)飼育を実践しています。鶏が休息や睡眠時に止まり木で休む休息エリア、いつでも新鮮な水と飼料を摂取できる給餌給水エリア、自然な状態で落ち着いて産卵ができる産卵エリア、砂浴び行動ができる運動エリアなどを設け、広い空間を自由に動き回り、活発で健康的な鶏が産んだ鶏卵の供給に取り組んでいます。

2004 年に 1 棟 8,000 羽からエイビアリー飼育を開始し、2021 年には 3 棟目を建設し 30,000 羽まで飼養を拡大。取引先も 2024 年には 50 店舗に達し、アニマルウェルフェアを重視して生産した鶏卵の普及に貢献しています。また、当社の事例を他の鶏卵生産者に共有し、エイビアリーシステムの啓発・導入をサポートしています。

〈評価ポイント〉

エイビアリーシステムの導入により、アニマルウェルフェアと衛生管理を両立し、持続可能な鶏卵供給を実現するだけでなく、先駆者として他の養鶏生産者へ普及活動も活発に実施されている点は評価できる。また、エイビアリー飼育を開始して以降、着実に生産規模や売上等を伸ばしており、今後更なる市場拡大を期待する。