
東洋学園大学では9月20日、学生たちと企業がコラボレーションしたイベントが本郷キャンパスにて開催された。同大学では、成功企業のケーススタディや消費者の立場から社会を分析する実践的な授業が多く提供されており、理論だけでなく、現代の具体的なビジネスケースを取り入れた学習が特徴となっている。
今回実施されたのは、現代経営学部の教授・本庄加代子氏が担当する「マーケティング戦略とプロジェクトマネジメントゼミ」(以下、本庄ゼミ)による一般公開イベント。
本庄ゼミでは、前例の少ない企画を立案・実践する中で、期限内に成果を出すプロジェクトマネジメント教育を徹底し、学生がゼロから企画・提案・実施していくことを目的とした学びを実践してきた。今回は「#サステナブルがとまらない展」と題し、サステナブルファッションの価格以上の価値を、体験を通じて広めることを目的に、15人のゼミ生たちがサステナブルファッションに取り組むさまざまな企業にアプローチ。株式会社三栄コーポレーション、株式会社シンゾーン、ラヴィストトーキョー株式会社との産学連携がこのイベントに結実した。

この「#サステナブルがとまらない展」では、「トークジャム」「サステナブル人生ゲーム」「レザーワークショップ」「トークセッション」の4つのイベントで構成。
「トークジャム」では、株式会社シンゾーン(以下、シンゾーン)の「竹を使った素材で人々を健康に」という想いから生まれたブランド「takes.」の魅力について、同事業部の豊島蒼一郎氏が講演。100%竹素材の「TAKEFU(竹布)」をメインに使用し、肌にも環境にも優しい点などが紹介された。講演後には、同ブランドの機能性を活かしたサービスやそのキャッチコピーをグループで考える商品企画体験が行われた。

「サステナブル人生ゲーム」では、自身のサステナブルに対する取り組みなどの問いに答える人生ゲームを体験しながら、株式会社三栄コーポレーション(以下、三栄コーポレーション)が社会のサステナブル活動を主導・支援する「OUR EARTH PROJECT」の7ブランドの取り組みが楽しく理解できる展示を実施。裁断時の端切れを元に生地をつくることで染色の必要がなく、大量の水を使わずに服をつくる「Pure Waste」や、廃棄されるはずだった自動車のエアバッグ、シートベルト、ベルトのバックルを再利用してバッグを製造している「AIRPAQ」など、野心的な取り組みがゼミ生の解説とともに紹介された。

「レザーワークショップ」では、廃棄リンゴから生まれた「アップルレザー」を展開するラヴィストトーキョー株式会社(以下、ラヴィストトーキョー)の共創型ブランド事業「LOVST TOKYO」と産学連携。オリジナル刻印入りレザーアイテムづくりを行い、石油由来の素材ではなく、リンゴジュースの搾りかすから革小物が生まれる過程の一部を、子どもから大人まで体験していた。

社会課題への取り組みが熱く語られたトークセッション
「トークセッション」は、3つのイベント終了後に「#サステナブルがとまらない展」のクライマックスを飾る形で開催された。まずゼミ生代表が本庄ゼミについて紹介。アポロの月面着陸計画のように、誰もやったことがないことをゴールに定め、協業し、降りかかる課題を期限内に完遂するスキルを育成するプロジェクトマネジメントを実践しているゼミであることを伝えた。
そして、自分たちの未来を自分たちで切り拓くために、身近なファッションを切り口としてサステナブルをより身近なものと感じてもらうことをゴールに、サステナブルファッションに取り組む30社に連絡を取ることからスタート。今回、産学連携が実現した3社が話を聞いてくれた経緯を語った。

続いて、今回のトークセッションに登場する3氏をゼミ生が紹介。サステナブルファッションと通常のファッションの違いは「愛の深さ」にあると訴え、三栄コーポレーション服飾雑貨事業部・服飾雑貨第3部チーフマネージャーの山田敦氏、シンゾーンtakes.事業部の豊島蒼一郎氏、ラヴィストトーキョー代表取締役の唐沢海斗氏が登壇した。3氏は、コスト度外視でサステナブルファッションに取り組んだ理由を語った。
三栄コーポレーションの山田氏は、石油を用いて洋服を大量生産することが当たり前となっている中で、衣料品の製造工程で出るコットンの端材や端切れをリサイクルして服に作り直すブランドを知り、衝撃を受けたことを述懐。こうした取り組みを広げたいと考え、さまざまなサステナブルファッションブランドを支援し、自社でも同様のブランドを立ち上げる新たな「OUR EARTH PROJECT」を始めたと語った。
シンゾーンtakes.事業部の豊島氏は、代表を務める染谷裕之氏が「役に立とう、感謝されよう、心を満たそう」をモットーに、ファッションと社会貢献の架け橋となることをミッションとして掲げ、さまざまな奉仕活動を行ってきたことを紹介。その一環として、肌にも環境にも優しいtakes.が誕生したと説明し、まさに愛のこもったブランドとなったと語った。
ラヴィストトーキョー代表取締役の唐沢氏は、海外での生活の中でビーガンやプラントベースといった動物系素材を用いないライフスタイルと出会ったことを紹介。最初は疎んじていたものの、畜産業が多くのCO₂を排出し、気候変動を加速させている事実を知ることで認識を改め、リンゴジュースの搾りかすを用いたアップルレザーの誕生に至ったことを語った。そして、そこには社会課題に対する憤りが込められていると述べた。
今回の「#サステナブルがとまらない展」は、ゼミ生たちが様々な課題に悪戦苦闘しながら、自ら企画し、そのアクションが実を結んだイベントだった。ゼミ生たちは、イベントのプロではない。だからこそ、サステナブルへの率直で熱い想いが注がれていた。イベントの参加者たちは、きっとそこにも“愛の深さ”を感じたことだろう。






