学校法人金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター(以下ICC)では、世界有数の応用研究機関であるフラウンホーファー研究機構(Fraunhofer-Gesellschaft)の鋳造・複合材料・加工技術研究所(以下「フラウンホーファーIGCV」)との共同研究開発・事業化拠点として「FIP-MIRAI@ICC」をICC内に立ち上げた。

フラウンホーファーIGCVは炭素繊維複合材料を主な研究対象の一つとしている研究所で、日本国内における共同研究開発・事業化拠点の立ち上げはICCが初めてとなる。

FIP-MIRAI@ICCは「リサイクル炭素繊維複合材料を活用した製造技術と適用技術」を研究テーマに研究開発と技術移転・事業化を進める。共同研究開発期間は2025年から2029年までの5年間。総予算は200万ユーロ(日本円で約3億1700万円)で、フラウンホーファーとICCが半分ずつ負担する。

脱炭素社会の実現に向けて、軽くて強靭な複合材料が果たす役割は大きくなる一方で、複合材料関連の廃棄物の増加は世界的な課題となっている。FIP-MIRAI@ICCでは、複合材料の廃棄物を貴重な資源と見なし、新しい技術により再利用することで、次世代の持続可能性を保証する先進的な循環経済の創出を目指す。

【FIP-MIRAI@ICC 立ち上げの意義】
今後ますます増大する世界的な課題をイノベーション創出のチャンスに変える

航空宇宙、風力エネルギー、スポーツなどの産業における複合材料の使用が世界的に増加するにつれ、リサイクルが難しい廃棄物の量も増加している。 2023年には早くも、世界中で75キロトンの炭素繊維廃棄物が生まれ、航空業界だけでも2028年には350キロトンに達すると予想されている。さらに複合材料は水素貯蔵タンクとしても注目され、 移動手段や輸送手段における水素技術の利用拡大に伴い、この問題はさらに深刻化すると考えられている。

複合材料でリードする日独の研究所が緊密に連携。
one-stop-shopの研究開発拠点を設置

フラウンホーファー IGCVの熱分解技術、リサイクル製品の品質保証、ウェットレイドプロセスと、ICCが持つ試験能力、プレス加工、連続ダブルベルトプレス技術など、日独の専門知識と強みを組み合わせた研究ユニットがFIP-MIRAI@ICC。リサイクル炭素繊維複合材料の研究開発・技術移転・事業化に向けたone-stop-shopとして、フラウンホーファーの研究員とともに県内外の企業における炭素繊維複合材料事業の成長に貢献していく。

【FIP(フラウンホーファーイノベーションプラットホーム)について】

FIP(フラウンホーファー・イノベーション・プラットフォーム)は、外国の大学または非営利の研究機関が、ドイツ国内の1つまたは複数のフラウンホーファー研究機構と密接に協力して運営する共同研究開発・事業化拠点。当初は5年間の期限付きで設立される。

研究成果を活用、移転、商業化するために、共同研究パートナーは共通の戦略を策定し、専門知識を補完し相乗的に組み合わせた独自のビジネスを展開していく。

【フラウンホーファー研究機構について】

フラウンホーファー研究機構はドイツ各地に75の研究所・研究施設を構え、約32,000人のスタッフを擁する世界有数の応用研究機関です。鋳造・複合材料・プロセス技術研究所(IGCV)はその研究所のひとつとなる。