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監修:真打 春風亭 柏枝
【プロフィール】
芸名:春風亭 柏枝(しゅんぷうてい はくし)
本名:菊池貴紀
出身:北海道札幌市
階級:真打
出囃子:筑摩祭
所属:落語芸術協会
噺家迷い箸(はなしかまよいばし)第六回
「とにかく勉強すること!」
私も世界の政治のことについては
圧倒的に勉強不足を自認しておりまして
理解を深めている途上の者でございますが、
こないだアメリカの大統領が
また正式にトランプさんになりまして、
そしたらまたパリ協定を離脱する
というじゃありませんか。
前回トランプさんが大統領の時にも
パリ協定を抜けたんですよ。
それをバイデンさんが取り消しまして、
で また離脱ですよ。
トランプさんは
「みんなで辛抱強く進めて行こう」
と決めたことを
よくひっくり返しますね。
名前がトランプだからでしょうか。
離脱というのは、簡単に言えば
バッサリと“縁を切る”こと
かも知れませんね。
落語の『火事息子』は、
ある大店の旦那が
火事の大好きな一人息子を
勘当する噺です。
あと取りになる息子は、
修行もせずにいくつになっても
火事のことばかりを考え、
とうとう火消しになろうとします。
火消しというのは、
江戸時代は260年以上ありますので、
その時代時代によって編制が違うのですが、
当時は大きく分けて3つ種類がありました。
ご紹介いたしますと
まずは『大名火消し』、
これは「加賀鳶」なんてえのは、有名ですが
大名が責任者になっている消防団です。
続いて『町火消し』、
これは「いろは四十八組」なんてよく言いますが
私も「め組の頭 北島三郎さん」
なんてえのはよくドラマで見てました。
それから『定火消し(じょうびけし)』、
これは責任者が旗本が担っていたというんですが
この『定火消し』の火消し人足を
「臥煙(がえん)」と申しまして、
この人たちが素行が悪かったという話しなんです。
「ちょいと金貸してくれませんか?」
「貸してくれないってえと
オタクが火事になった時知りませんよ!」
なんてユスリタカリが
しょっちゅうだったなんて言われておりまして、
周りからも良く思われていなかった。
で、『火事息子』に出てくる息子は、
この「臥煙」になっていたので
父親は勘当してしまう訳です。
一方、一人息子を勘当した方の親は親で、
息子のいない家で歳を重ねていく暮らしの中で、
ふとした瞬間についつい息子のことを
考えてしまうという描写があったり、
勘当した一人息子に対する態度に
男親と女親の違いがあったりと、
聞いているお客様にはきっと
「いい噺だなぁ」と思って頂ける
いわゆる『人情噺』の類に入る噺です。
『火事息子』の親子のように
離れていたからこそ、
その大事さが深くわかることは
他にもありそうです。
この機会にあの方が
パリ協定の大切さをわかってくれたら、
とも思います。
火事といえばアメリカでは
ロサンゼルスの山火事が大変なことになってしまいまして、
仕事とはいえ他人のために一生懸命働いてくれた
消防団の皆様には頭が下がりますよね。
あの大谷翔平さんが表敬訪問するぐらいですもんね。