最先端技術の〝祭典〟「CEATEC 2022」が2022年10月18日~21日に千葉市の幕張メッセ(千葉市)で開催、コロナ禍の影響でリアル開催は実に3年ぶり。

今回のテーマは「Toward Society 5.0」。経済発展と社会課題の解決を両立させることを意味する「Society5.0」に則した最新技術が一堂に会し「共創」で未来を描いてくことをアピール。なかでも目を引いたのが、「音響家電・ゲーム機」のイメージが強いソニーのブース。

「ソニーの環境への取り組みの展示」(Sony’s Story on the Environment)と題し、ブース中央に配したSUV型EVのプロトタイプ「VISION-S 02」を始め、近く商用開始予定の人工衛星のモックアップ、VR関連のテクノロジーなど「ソニーらしい」アイテムが並ぶが、今回注目なのが「素材」にスポットを当てた点だろう。

「PEOPLE/人:一人ひとりが行動する」をキーワードに、人類が毎日消費しているありとあらゆる物質は、そもそも何を原材料にして製造されているのか――。環境への影響を考えるきっかけ、「気づき」を与えると同時に、まずは1人ひとりが出来ることから取り掛かれるように、新しい選択肢、つまり「地球にやさしい新素材」を作ることにチャレンジしているとアピールする。

具体的には、古紙を発泡させ緩衝材に再利用した「紙発泡材」や、大量廃棄される籾殻から造られる多孔質カーボン素材「Triporous」(トリポーラス)、水ボトルや光ディスクなどに使われるプラスチック「ポルカーボネート」の再利用率最大99%を誇る難燃性再生プラスチック「SORPLAS」(ソープラス)が紹介されたが、特筆なのが「竹」「サトウキビ」「古紙」の〝三位一体〝〟による「オリジナルブレンドマテリアル」だ。上記3種類の原料を独自配合することで剛柔性を自由に変えることが可能で、パッケージやテーブル、什器、建材など様々な製品に応用できる。

「ポイントは非木材の『竹』と『サトウキビ』を使っている点です。成長の速い樹木でもパルプ材として使えるまでには10~20年はかかります。これに比べ竹は2~3年、サトウキビなら1年です。植物は大気中のCO2を固定化しますが、固定化のサイクルを考えた場合、10~20年の年月が必要な樹木よりも成長の速い竹やサトウキビを使用した方が明らかに有利です。特に後者の場合は毎年栽培され、大量の搾りかすが廃棄されるのでこの再利用は実に有意義です」とブースの説明員は強調する。

ちなみに竹は中国・貴州産の2~3年モノを厳選して伐採。同地には関東地方ほどの広大な竹林があり、昔から人間と動物が共生する場所。間伐することで竹林のサステナビリティにも寄与しているという。

「こうした情報は全世界に公開しています。私たちの目的は『素材循環』で、そのためには消費者に捨てるか、再生するかを選択してもらうことで、消費者の行動いかんにかかって来ます。だからこそ全ての情報を公開しているのです。いわば『コミュニケーション・マテリアル』で、消費者に行動異変を起こして素材循環を加速させるための材料になれば、と考えています」と説明員は強調してやまない。

「紙発泡材」。古紙を発泡させ緩衝材に再利用。シート状緩衝材を材料にエンボステクスチャーやハブリッドクッションなどを製造、海洋汚染が問題になっているプラスチックの使用量削減を目指す。
籾殻を原料にした「Triporous」は多孔質が特徴で消臭効果も高い。
「Triporous」を使ったスポーツウエア
「オリジナルブレンドマテリアル」で作られた各種パッケージ。
「オリジナルブレンドマテリアル」は「竹」「サトウキビ」「再生紙」(市場回収リサイクルペーパー)をミックスした新開発のセルロースナノファイバー(CNF)でできている。