鹿島建設株式会社(以下、鹿島建設)は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、鹿島環境ビジョン:トリプルZero2050 ※を見直し、CO2排出量削減の新たな目標を設けた。具体的には、基準年を従来の2013年度から2021年度に見直した上で、2030年度の中間目標を自社排出(スコープ1・2)で40%削減とし、サプライチェーン排出(スコープ3)についても中間目標25%削減を設定。2050年度には自社排出およびサプライチェーン排出の双方でカーボンニュートラル(100%削減)を目指す。

※持続可能な社会を「脱炭素」「資源循環」「自然共生」の3つの視点でとらえ、2050年までに鹿島建設が達成すべき将来像を「Zero Carbon」「Zero Waste」「Zero Impact」と表現

自社排出CO2の削減に向けて

鹿島建設では、自社開発した環境データ評価システム(edes)を2020年度から国内の全現場に導入し、工事中に発生するCO2排出量の実態把握に注力してきた。加えて2021年度からは、海外グループ会社を含むグループ全体のCO2排出量(スコープ1・2)の把握を開始した。これを基に、2021年度実績を基準年として、2030年度、2050年度のグループ全体のCO2排出量を予測し、CO2排出量削減の新たな目標を設定した。

鹿島建設は自社での削減のほか、不足分はカーボン・オフセットを活用するなど、2050年カーボンニュートラルの達成を目指し諸施策に取り組んでいくという。

サプライチェーンCO2削減への取り組み

鹿島建設はこれまで、主に建設現場で工事中に発生するCO2排出量の削減を進めてきた。しかしながら、グループ全体のサプライチェーンCO2排出量の内訳を見ると、施工時(同じ社にとってのスコープ1・2)が4%であるのに対し、建材製造時(スコープ3、カテゴリ1)が56%、引渡し後の建物運用時(スコープ3、カテゴリ11)が29%と、大きな割合を占めている。そこで同社は、建材製造時ならびに建物運用時に排出するCO2(同社にとってのスコープ3)の削減策を拡充し、顧客と共にサプライチェーン全体のCO2排出量削減を加速していく。

建材製造時に発生するCO2の多くは、コンクリートと鉄の製造過程で発生するもの。これに対し同社では、2008年から、CO2削減に寄与するCO2-SUICOM®をはじめとする多様な環境配慮型コンクリートを開発し、現場に適用している。鉄については、低炭素鋼材への置き換えなどに努めることで、CO2排出量を削減する。この他、建物の構造材や意匠に木質材料を採用することも、鉄やコンクリート、プラスチックなどの使用量低減、ひいてはCO2排出量の削減につながるため、積極的に顧客に提案していく。

また、ZEB(Net Zero Energy Building)などの省エネルギー建物は、顧客の自社排出(スコープ1・2)となる建物運用時に発生するCO2排出量の削減に大きく貢献できるもので、同社の設計部門が特に注力する分野の一つとなる。さらに引渡し後は、グループ会社の鹿島建物総合管理株式会社が有する、建物の省エネルギーを総合的に支援する管理ツール「EneMASTER®」(エネマスター)を用いることで、運用段階でのチューニングが可能。加えて、鹿島建物総合管理株式会社が提供する低炭素エネルギーの供給などのエネルギーサービス事業を通じて、顧客の建物の脱炭素化に寄与していく。