歴史は繰り返さないが、韻を踏む
(History doesn’t repeat itself, but it often rhymes.)
Mark Twain

1.「ホルムズ危機」と「基軸通貨米国ドルの終焉」

今回のイラン戦争は、イランの核開発問題や石油危機という表層的な現象だけみていると、その本質を見誤る。

そこに「基軸通貨米国ドルの終焉リスク」という補助線を引いて解像度をあげて洞察すると、その本質が見えてくる。「基軸通貨(key currency)」[1]とは、国際貿易の決済や金融取引、各国の外貨準備において最も広く中心的に使用される通貨のことである。

イランによるホルムズ海峡封鎖によって惹起した「ホルムズ危機(Hormuz Crisis)」は、基軸通貨米国ドルの行方を左右しかねない重要な「通貨戦争」の一断面であるとも考えられる。

それすなわち、米国の命運を左右する一大事なのである。まさに、「基軸通貨米国ドルの終焉」は、米国にとって「国家存立危機事態(survival-threatening situation)」なのである。

なぜ、西半球だけに勢力圏をとどめる「ドンロー主義(Don-roe Doctrine)」[2]を標榜したトランプが、その勢力圏主義とあい矛盾するような遠距離にある中東のイランに対して戦争を仕掛けたのか?そして、なぜ、トランプが、ベネズエラを急襲して石油利権を奪取したのか?

この2つの疑問への答えも、実はここにある。

理由は「基軸通貨米国ドルの終焉」への危機感である。

トランプが気にしているのは、石油ではない、その石油と表裏一体の決済通貨「基軸通貨米国ドル」の終焉リスクなのである。なぜなら、それが米国の命運を左右する一大事だからである。

イスラエルにそののかされたとの解説も側聞するが、それだけではない。米国にもそれなりの必然性があったのである。だから、大国米国は、切羽詰まって、イランに、そして小国ベネズエラに噛みついた。「窮鼠、猫を噛む」ならぬ「窮猫、鼠を噛む」だった事情がここにある。

それでは、なぜ、米国は、ここまで、基軸通貨国であることに固執するのであろうか。



(寄稿文全文に続く)



第2章:「トリフィンのジレンマ」と「ペトロ・ダラー」の破綻
以降の寄稿文全文は、下記PDFにてご覧ください。

[1] 「基軸通貨(key currency)」とは、国際貿易の決済や金融取引、各国の外貨準備において最も広く中心的に使用される通貨。基軸通貨として認められるためには、以下の3つの条件を満たす必要がある。①決済性: 国際間の貿易や資本取引で広く使われていること。②基準性: 各国通貨の価値を測る基準となっていること。③保有性: 各国の中央銀行などが対外支払い準備(外貨準備)として保有していること。

[2] 「ドンロー主義(Don-roe Doctrine)」とは、第47代アメリカ大統領ドナルド・トランプが掲げる外交・安全保障方針。自身の名前(ドナルド)と、19世紀の「モンロー主義」を掛け合わせた造語で、西半球(南北アメリカ大陸など)をアメリカの絶対的な勢力圏とみなし、必要とあれば軍事介入も辞さない強硬な姿勢を特徴としている。