
国立大学法人東京農工大学は、文部科学省が推進するJ-PEAKS事業 注1)およびCOI-NEXT 事業 注2)の一環として実施している研究プロジェクトの成果紹介を兼ねた田植え体験イベ ントを5月30日(土)に開催した。同イベントでは、伝統的な手植え体験に加えて、米 国ハワイ州で約60年ぶりとなる稲作の成功事例や、イネに関する炭素耕作 注3)技術など、 本学が開発に取り組む先端的農業技術および最新の研究成果を紹介。さらに、日本 および世界の農業課題の解決にむけて、国内外の地域をつなぐ新たな農業の在り方を議論し、稲作の未来図を共有する体験の場を創出した。 当日は会場に設置した大型スクリーンにてハワイ稲作や炭素耕作の概要の説明を行うと ともに、アイガモロボ 注4)の実演も行った。

◆成果報告の内容について
同イベントにおいて、以下の二つの事業に関する最新の研究成果を報告した。
1. J-PEAKS:ハワイにおける稲作研究と三大学連携事業の成果
2025 年度、ハワイにおいて 60 年ぶりとなる稲作に着手。日本のイネであるコシヒカリやひとめぼれを陸稲 注 5)栽培した結果、日本で栽培した陸稲に匹敵する収量を発揮したことに加え、日本を上回る玄米品質を達成(国際学術誌『Front. Agronomy』)。ハワイ大学で実施した食味試験には 150 名が参加し、その様子を報じた記事は同大学の 2025 年年間アクセスTOP10 に入るなど、現地でも大きな反響を呼んでいる。今後はハワイでのサプライチェーン開拓を目指す。また、J-PEAKS に共同で取り組む電気通信大学、東京外国語大学との連携事業の成果と進捗についても報告する。
2.COI-NEXT: 脱炭素を越える「ネガティブエミッション農業 注 6)」の実現と東南アジアへの展開
COI-NEXT では、稲作における温室効果ガスの排出抑制に加え、イネの CO2 固定能力、バイオマス生産能力を強化することで、炭素の吸収・固定量が排出量を上回る「ネガティブエミッション農業」の実現に取り組んでいる。当日は、本学育成の水稲品種「さくら福姫」の西表島における栽培実証や 2024 年ロボット大賞を受賞した「アイガモロボ」による雑草抑制効果などについて紹介。将来的には、稲作が盛んな東南アジア地域への技術導入・展開を進め、世界規模でのカーボンニュートラル実現への貢献を目指す。
各事業における今後の展開
同学は、J-PEAKS 及び COI-NEXT の両事業を通じて、環境と調和する「炭素耕作イネ」の社会実装を加速。今後は、国内外の地域農家や教育機関との連携を深化させ、同学発品種のブランド化や地域振興を推進。環境負荷を抑えながら安定多収を目指す日本型農業のルモデルを確立し、世界へ向けて発信していく。

用語解説
注 1)J-PEAKS(地域中核・特色ある研究大学強化促進事業)
大学の特色を生かし、地域経済の活性化やグローバルな課題解決に貢献する研究力強化を支援する文部科学省のプロジェクト。
注 2)COI-NEXT(共創の場形成支援プログラム)
大学等が中心となり、企業や自治体等の多様なステークホルダーと連携し、地球規模の課題や地域社会の課題解決を目指す「バックキャスト(未来から逆算した目標設定)」による研究開発を支援する文部科学省と科学技術振興機構のプログラム。
注 3)炭素耕作
バイオ技術により炭素(CO2)を固定し、材料、エネルギーを生産・価値化・循環再利用化すること。本学の COI-NEXT 拠点では、バイオマスの固定量を大きく増大させた「炭素耕作イネ」と炭素蓄積量を増大させる栽培法の開発により、ネガティブエミッション農業の実現を目指している。
注 4)アイガモロボ
水田を自律走行して泥を巻き上げ、雑草の繁殖を抑える自動抑制ロボット。東京農工大学発ベンチャー企業である有機米デザイン株式会社(2024 年 4 月 1 日に現在の株式会社 NEWGREEN に社名変更)が開発を行い、井関農機株式会社が製品化・販売を担当している。2024 年にロボット大賞「農林水産大3臣賞」を受賞した。
注 5)陸稲(りくとう)
水を張らない畑状態で栽培するイネ。雑草管理や水管理が水稲と異なる。
注 6)ネガティブエミッション農業
作物の栽培過程で排出される温室効果ガスよりも、植物の光合成による CO2 吸収・固定量が上回る状態を目指す農業のことで、単なる排出削減(脱炭素)に留まらず、農業を通じて大気中の炭素を積極的に減らす革新的な取り組み。





