オーストラリアのNGOにCEDAMIA(2017年設立)があるが、これはClimate Emergency Declaration & Mobilosation in Action(気候非常事態宣言と行動における動員)の略である。アメリカのNGOのTCM(2014年設立)はThe Climate Mobilozation(気候動員)の略である。

いずれも気候と自然が非常事態にあることを認識し宣言して、問題解決のために社会的な動員計画を立案し実施することを目的としている。2025年11月27日に英国マンチェスターのセントラルホールで国会議員や社会の指導層に向けて、気候と自然の危機に関する国家緊急ブリーフィングが開催された。ブリーフィングは成功を収め、国会議員150名を含む1200名の参加者があったと報じられている。日本国内でも2026年9月30日に同様な趣旨で緊急ブリーフィングが計画されている。筆者の視点から気候と自然の非常事態の最近動向をまとめてみた。

筆者は既に温暖化地獄(2007年)、温暖化地獄Ver.2(2008年)、残された時間(2009年)、気候危機(2020年)を出版して気候非常事態と問題解決のための社会的動員について論じてきた。環境関連のこれまでの著作については次頁に掲載した。“地獄”とか“危機”という言葉は科学的書物や科学コミュニケーションには相応しくないのではないかとの批判もある。しかし気候や自然の非常事態を形容するには他に適切な言葉が見つからないところに来ているのではないか。

他の科学者の書いた本の表題を見てみよう。有名なNASAのJames HasenはStorms of My Grandchildren(2011年)、副題は「来るべき気候崩壊についての真実と人類を救う最後のチャンス」である。Hans SchellnhuberのSelbst Verbrennung(2015年)の表題は恐ろしいものである。“焼身自殺”である。人類が温室効果ガス(GHG)を大気中に大量放出し続けている行為は温暖化を促進する自殺行為であるというのである。Schellnhuberは別のところ面白いことを言っている。国家安全保障戦略として相互確証破壊(Mutually Assured Destruction)があるが、地球温暖化問題の解決策は相互確証脱炭素化(Mutually Assured Decarbonization)でなければならないというのである。

いずれも英語の頭文字をとるとMAD戦略となるところが面白い。アトリビューション研究(極端気象に地球温暖化がどの程度関わっているかを調べる研究)で有名なFriederike OttoはAngry Weather(2020年)を出版している。今や異常気象、極端気象には“怒れる気象”という表現がぴったりである。William J. Rippleはリスクが広く社会に認識されるようになると、社会は驚くほど迅速に方向転換できると述べている。サステナブル社会への転換が遅々として進まない理由の一つはリスクの社会的共有が不足していることは間違いない。

気候非常事態宣言運動始まる

2016年12月にオーストラリアのメルボルン郊外の、人口16万人のDarebin市が気候非常事態宣言を宣言し、この世界的な運動が始まった。2017年2月には同じくメルボルン郊外のYarra市が宣言し、11月にはアメリカ、ニュージャージー州のHoboken市が宣言した。2018年に入ると、この運動は世界に広まりロンドンを含む22の自治体が宣言するまでに成長した。

2018年8月20日に、当時15歳の1人の少女がスウェーデンの国会前で気候ストライキを始めた。Greta Thunberg(グレタ・トウンベリ)の「Fridays For Future(未来のための金曜日)」運動である。気候変動に対する政府の無策への抗議として始めたこの運動は瞬く間に全世界に広まった。2019年3月15日の金曜日には、125ヶ国で100万人以上の子供たちや学生が気候ストライキに参加したと伝えられている。2019年4月17日にはローマ教会のフランシスコ教皇がGreta Thunbergと会見し、「続けなさい、前へ進みなさい、神のご加護がありますように」と述べられた。

「気候のための学校ストライキ」は2019年9月20日と9月27日に最高潮に達した。9月20日には全世界で400万人、9月27日には同じく200万人が参加したと推定されている。子供たちの気候ストライキは大人たちを動かし、気候非常事態宣言を発出する自治体の数は2019年に急増した。

かつて1992年6月11日、リオの地球環境サミットで、当時12歳だったカナダのSevern Suzuki(セヴァン・スズキ)は次のように演説して世界を動かした。“If you don’t know how to fix it, please stop breaking it!”(どうやって直すのか分からないものを壊し続けるのはもうやめてください)。

グレタ・トウンベリも2019年9月23日にCOP24で演説し、次のように述べて出席者を動揺させた。“We are in the beginning of a mass extinction, and all you can talk about is money and fairytales of eternal economic growth. How dare you!”このHow dare you!(よくもそんなことができるわね)が特に有名になったのである。COP24というのは気候変動枠組条約の締結国の条約調印から24年後の会議ということであるから、24年も経っているのに気候変動を抑制することができず、ますます深刻化している現状に対して、若い世代を代表して大人たちに“How dare you!”と抗議したのである。

グレタ・トウンベリはニューヨークで開かれた国連気候行動サミットへ参加するため、二酸化炭素(CO2)を大量に放出するジェット機を利用せず、ヨットで大西洋を横断したことでも有名になった。まさに言行一致である。

日本では長崎県壱岐市(白川博一市長)が2019年9月25日に初めて宣言し、鎌倉市(松尾崇市長)が10月4日にこれに続いた。2024年までに宣言した自治体はCEDAMIA(前出)の統計によれば136となっている。東京都は2020年12月4日に宣言している。衆議院では2020年11月19日に、参議院では11月20日に気候非常事態宣言が決議されている。菅総理は2020年10月26日に「2050年カーボンニュートラル」を目標とすることを宣言した。

(寄稿文 全文に続く)


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