人口減少やインフラ老朽化が全国的な課題となるなか、水道インフラの維持管理にも新たな解決策が求められている。キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)は株式会社FREEと共同で、岐阜県美濃加茂市の宿泊施設「月読の宿」において、水循環型ソリューションの実証を2026年10月より開始する。本実証では、大気中の水分や雨水を活用して水を生み出し、使用した水を浄化・再利用する仕組みを継続的に運用。平時の資源循環と災害時の水確保を両立する、自立分散型水インフラの社会実装を目指す。

写真左)宿泊施設「月読の宿」  写真右)竣工式の様子

地域インフラの課題解決に向けた取り組み

日本では人口減少や上下水道設備の老朽化により、水インフラの維持管理負担が年々高まっている。特に岐阜県は森林率が高く、集落が広域に点在する地域特性を持つことから、地域内で水を確保し循環利用できる仕組みへの期待が高まっている。

キヤノンMJとFREEは、2025年から2026年にかけて岐阜県土岐市の住宅で実証実験を実施。水質や設備稼働状況などを検証し、その有効性が評価されたことで、「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靱化大賞)2026」において最優秀賞を受賞した。

今回の美濃加茂市での実証では、住宅から宿泊施設へとフィールドを拡大し、複数利用者がいる環境での継続運用を検証する。

水を生み出し、繰り返し利用する仕組み

本ソリューションは、大気中の水分から飲料水を生成する空気製水機「POTORI」を中心に、雨水利用や浄化技術を組み合わせた水循環システムだ。飲用水と再利用水を用途ごとに使い分けることで、水資源を効率的に活用する。さらに、太陽光発電や蓄電池との連携により、電力・水道・下水道などの既存インフラへの依存を抑えながら運用できる点も特徴だ。平時には持続可能な水利用を支え、災害時には断水下における生活用水の確保に貢献することが期待されている。

宿泊施設で実用性を検証

実証では、
・利用人数に応じた設備稼働状況
・水質や製水量の確認
・循環水の再生性能
・エネルギー消費量の把握
・遠隔監視を含む維持管理体制
・事業化を見据えた経済性の検証
など、多角的な評価が行われる。

単なる技術検証にとどまらず、実際の宿泊施設運営のなかで継続利用できる仕組みづくりを目指す点が特徴だ。

災害に強い「フェーズフリー型インフラ」へ

キヤノンMJは、本実証を通じて技術面・運用面・経済性の課題を整理し、将来的には過疎地域や中山間地域、災害対応拠点への展開を視野に入れている。平時には地域の持続可能な水利用を支え、非常時には断水対策として機能する「フェーズフリー」の考え方を取り入れた新たな水インフラとして、その可能性に注目が集まる。

Vane編集部コメント
水道インフラの維持が課題となる地域が増えるなか、自ら水を生み出し循環させる仕組みは、地域のレジリエンス向上につながる取り組みだ。今回の実証は、災害時の備えだけでなく、人口減少社会における持続可能なインフラのあり方を示す挑戦でもある。平時と非常時をシームレスにつなぐ自立分散型水インフラは、地域社会の新たな選択肢として期待される。