工期短縮・人材不足・資源循環に応える、事業用サーキュラー建築の新モデル

建設業界が抱える「施工人材不足」と「環境負荷の低減」。この2つの社会課題に対し、住友林業が新たな解決策を提示した。 同社は2026年9月、移設・再利用が可能な木造ユニット建築「KIBLO(キブロ)」を発表。小規模事業用建築を対象に、建物を“使い続ける”という発想を取り入れたサーキュラー建築モデルとして注目を集めている。

建物を「つくって終わり」にしない。循環型の木造ユニット建築

KIBLOは、約10㎡の木造ユニットを工場で製造し、現場で組み合わせて建築する方式。 ユニット単位で解体・移設・再組立ができるため、建物を廃棄せずに次の用途へ引き継ぐことが可能だ。 木材が持つ炭素固定の特性に加え、建物そのものを長期間活用することで、環境負荷を大幅に抑える。

将来的には、災害時の一時利用施設としての活用や、用途変更を前提とした柔軟な建築モデルとしての展開も期待されている。

左)基本ユニットイメージ 中)ユニット設置中写真 右)バックオフィス棟完成写真(外観)

工期は従来の“半分”。施工人材不足に応える新しい建設プロセス

KIBLOの最大の特徴は、基礎工事と工場製造を並行できる点だ。 基礎工事が終われば、完成したユニットを搬入し、短期間で設置・接合が完了する。住友林業のモデルケース(約80㎡)では、従来工法:約14週間/KIBLO:約7週間 と、工期を半分に短縮できる見込みが示されている。

主要工程を工場で行うことで品質も安定し、住宅分野で広く流通する一般木材を使うため、特定部材に依存しない調達が可能。 施工力不足が深刻な地方部においても、導入メリットは大きい。

延床面積約80㎡のモデルケース(住友林業 試算)

常設利用にも耐える快適性

移設可能なユニット建築でありながら、断熱等級4相当の性能を確保。木造ならではの心地よい空間と快適な室内環境を両立し、事務所・店舗などの常設利用にも十分対応する。

GREEN×EXPO 2027で実証活用

2027年国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」では、住友林業館「ひゃくの森」のバックオフィス棟としてKIBLOが採用される。18ユニットを組み合わせた約180㎡・2階建ての建物は、基礎工事完了後、 ユニット設置:3日/木工事:3日 という驚異的なスピードで完成した。会期終了後には解体し、別の場所へ移設・再利用する計画で、サーキュラー建築の実証事例として大きな意味を持つ。

木を軸にした住友林業の長期ビジョン

住友林業は、森林経営から建材製造、住宅・中大規模木造建築、不動産開発、木質バイオマス発電まで、木を中心に事業を展開する企業だ。長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では、同社のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで、森林のCO₂吸収量を増やし、木造建築の普及による脱炭素社会への貢献を掲げている。

KIBLOは、そのビジョンを体現する新たな建築モデルとして、今後の展開が期待される。

Vane編集部コメント
KIBLOは、建築を「使い捨て」から「循環」へと転換する技術だ。 ユニットを移設し再利用できる仕組みは、施工効率の向上だけでなく、木材の炭素固定と長期利用による脱炭素社会への貢献を同時に実現する。木造の心地よさとユニット建築の合理性を兼ね備えたこのモデルは、 地方の小規模事業、公共施設、災害対応など、多様な場面で新しい選択肢となるだろう。