
前回に比べ2倍以上、67カ国・172名がノミネート
2010年から2年に1度行われる、「生物多様性MIDORI賞」の授賞式・受賞者フォーラムが、今年も(2026年)8月27日に帝国ホテル東京「孔雀の間 西」で開催された。
同賞は、公益財団法人イオン環境財団(岡田元也理事長。イオン株式会社 取締役 代表執行役会長)と、国連環境計画(UNEP)の生物多様性条約事務局(SCBD)が主催するもので、環境省、外務省も後援となり、生物多様性保全と利活用において顕著な活動を行った個人を表彰している。
今回は第9回を数え、
・リサ・パグンタラン‐マルテ氏
(フィリピン。フィリピン生物多様性保全財団/PhilBio)エグゼクティブ・ディレクター)
・アレクサンドラ・ツィマーマン氏
(ドイツ。国際自然保護連合 種の保存委員会/IUCN SSC)人間と野生生物の紛争・共存専門家グループ長)
の両氏が受賞した。ちなみに、今回は67カ国から172名がノミネート、前回の35カ国・78名と比べ2倍以上の候補者数となった。

授賞式を前にしたプレス・カンファレンスには、多くのメディアが詰めかけ、環境保全に対する関心の高まりを物語った。両氏は大勢のメディアを前に、環境保全や生物多様性に対する想いとその重要性を熱く語った。
挨拶に立った岡田氏は、「高度成長時代の急速な排出によって、豊かな自然や生態系急速に失われていくことへの強い危機感があります」と財団設立の経緯を改めて強調。
これを踏まえ、2010年に名古屋で開かれた、『生物多様性条約 第10回締約国区会議・COP10』を機に、国連生物多様性条約事務局と連携して設立したのが同賞である。
世界各地で生物多様の保全や持続可能な利用に顕著な貢献をした個人を、これまでに20カ国・21名顕彰いている。
岡田氏は、「世界は2030年までに、生物多様性の喪失を止めて回復軌道に乗せる『ネイチャー・ポジティブ』を目標に向かっています。この実現のために同賞の顕彰が、一助になると考えます」とその意義を強調、さらに「大変な困難にも負けずに活動・研究する方々が世界にたくさんいます。この人々の成果とリーダーシップを、同賞の顕彰によってより多くの人々に知っていただき、共有してもらい、賛同していただきたい。やがては大きな1つの変えていく力になり、よりよい地球環境・生物多様性の全世界的な動きになればと考えています」と訴えた。

【受賞者】 リサ・パグンタラン‐マルテ氏
自治体の計画・予算に生物多様性保全を包含、先住民族・女性の尊重と参画促進を重視した、政策と地域社会を結ぶ持続可能モデルを構築。
【受賞理由】
パグンタラン‐マルテ氏は母国・フィリピンで25年以上にわたり生物多様性の保全活動に注力。絶滅危惧種の調査・保全で素晴らしい成果を上げ、特に絶滅したと考えられていた「フィリピンハダカコウモリ」を再発見するという快挙を成し遂げている。
フィリピン生物多様性戦略・行動計画の地域実装を主導、生物多様性保全を地方自治体の計画や予算に組み込む仕組みも構築し、その主流化を推進している。
同時に先住民の権利の尊重や、女性の参画促進を重視した取り組みも展開、政策と地域社会を結ぶ、持続可能な保全モデルの確立にも挑む。
「フィリピンで生物多様性に関わる素晴らしい人達を代表して、(私が)同賞をいただいたと考えていまず」と満面の笑みを浮かべる。
「セブ島(フィリピン中部)には、セブクロシキチョウという、同島固有の鳥がいますが、以前は約50個体しかいないと考えられていました。しかし市民や、科学者、ボランティアが連携し、地道な調査を続けた結果、約1万5000個体が21地域に生息することが分かったのです」と絶滅危惧種の実態把握の重要性を説く。
続けて、「とはいうものの、(絶滅の)脅威がなくなったわけではありませんが、地域の知識と科学、フィールド・ワークの組み合わせで変えることが可能です」と、手応えを感じている。
さらに、「私のキャリアの最初の頃に、絶滅したと思われていたフィリピンハダカコウモリを再発見する機会を得られ、本当にうれかったです」とコメント。
しかし、「ただ『再発見』は、絶滅危惧種の“回復”ではありません。しかし知識が得られ、今後どうするか、知識によって将来を変えるか否かを決められます。科学的発見は保全のプライオリティに影響与え、資金のあるプログラムへと拡大しなければなりません。それにはコミュニティを呼び込み、政府を囲い込むことが重要です」と注意を促す。
「保護は既存のプログラムが終了した後も持続しなければなりません。私の仕事は、単なる野生生物保護にとどまらず、『関係づくり』にも焦点を当てることです。政府と人とをつなげることで、政府のアクションプランが立ち上がり、政府予算もついてきます。レポートの中にエビデンスを記すだけでなく、政府として理解し、活用し、行動に結びつけるが可能となります」とさらなる挑戦に臨む。
「この重責を次世代につないでいかなければなりません。知識やパートナーシップ、勇気が、次につなぐ意味でも、同賞受賞は重要な意味があります」

【受賞者】 アレクサンドラ・ツィマーマン氏
人間と野生生物との「紛争」に着目、平和的解決の知見を保全分野に導入、研究者、実務者、政策立案者の国際的共同基盤の構築に尽力。
【受賞理由】
ツィマーマン氏は、野生生物と人間社会との対立・紛争が世界中で深刻化する中、「人間と野生動物の共存」を生物多様性保全の重要課題として提唱、25年以上にわたる、研究、実戦、政策形成を牽引する。
IUCN SSC人間と野生生物の紛争・共存専門家グループを設立し、国際指針の策定や十銭ネットワークの構築を推進。同時に平和構築・紛争解決の知見を保全分野へ導入を図る。
また、研究者、実務者、政策立案者を結ぶ国際的な協調基盤の構築を進め、この課題を生物多様性政策における重要課題として位置づけることに貢献する。
「人間と野生動物の対立、つまり『紛争』の深刻さが増しています。特に生物多様性においては顕著です。どの国にも『対立』があり、人間と野生生物が持続可能な形で、隣り合って生活することが難しくなっています。日本でもクマの問題が社会問題化していますし、他の国でもシカやゾウの被害が急増しています」と警告を鳴らす。
続いて、「10年ほど前に、IUCN保存委員会を立ち上げる機会を得ました。世界中の課題を検証し、研究し、多くの知見・洞察を学術的に導き、政策立案に結び付けるのが主な任務です。また、この課題を国、NGO、個人個人に全体的・包括的に見てもらうことが肝要なのです」と強調。
「また、保全科学セクターだけでなく、他のセクターと結びつけ、さらに各国政府のつながりを構築も重要です。トレーニングコース、研究会、技術液ガイダンスなどで政府と連携していきます」とコメント。
2023年に初めて、人間と野生動物との対立・競争に関する国際を、英オックスフォード大学で開催し、70カ国・600名の方々に加え、50カ国の政府代表や科学者、NGOなど様々なセクターが出席、議論を深めた。
「会議は非常に好評で、2027年に第2回会議を開く計画で、100カ国以上の政府代表の参加を目指しています。日本の政府代表の方の出席も願っています。多くの人々が参加した方が、より効果があるのです」
「生物多様性条約の枠組みの中に、人間と野生生物の『紛争』が条約の文脈に取り込まれ、専門家の多くが取り組みたいと思っています。私たちも技術面から支援し、政策立案にこの課題に対する行動を政策立案に漏り込むように努力しています」と、今後のプランを披露。
「まだまだ道半ばですが、今は非常に重要な局面だと思います。同賞を受賞したことは非常に誇らしいことで、次の段階へ取り組んでいる人々にとっての動機づけ、そして人々を活動に動員するためにも重要だと考えます」と感謝を述べた。






