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シリーズ「気候危機と向き合う」では今回、環境省 大臣官房 地域脱炭素政策調整担当参事官室 再生可能エネルギー促進区域推進室長の服部弘氏にインタビュー。気候危機の解決において欠かすことのできない「地域脱炭素」の取り組みについて伺った。

地域課題の解決に大きく貢献する「地域脱炭素ドミノ」
─まずは環境省の「地域脱炭素」に関する基本的な戦略やビジョンについてお伺いできればと思います。
服部:環境省としましては、2050年までにネットゼロを実現するという方針を受け、現在さまざまな取り組みを進めています。 私たちとしては、地域に密着し、地方公共団体が主導する「地域脱炭素」を推進することが重要だと考えています。
年次で申し上げると、まず2021年に「地域脱炭素ロードマップ」が策定されました。 同年の温対法改正により、2050年ネットゼロが理念として明記され、さらに「地域脱炭素化促進事業制度」が創設されました。
翌2022年には温対法が再度改正され、「株式会社脱炭素化支援機構(JICN)」が設立されました。これはカーボンニュートラル実現に向け、脱炭素事業への出融資を行う官民ファンドで、人件費などを圧迫することなく、呼び水として民間資金を呼び込む役割を担っています。こうした制度を活用しながら、2021年以降、毎年さまざまな施策を進めてきました。
地域特性に応じた脱炭素の取り組みは、昨今のエネルギー価格高騰への対応にも資するほか、未利用資源である風や森林などを活用して地域産業を支えることにもつながります。 また、非常時のエネルギー確保や地域レジリエンスの強化、防災力向上にも寄与すると考えています。
さらに、地域内でエネルギーを生み出すことで、これまで化石燃料の購入により地域外へ流出していたお金が、地域内で循環するようになります。こうした仕組みづくりは、地域課題の解決にも大きく貢献すると考えています。理想論のように聞こえるかもしれませんが、地元にお金が落ち、循環する仕組みをつくることが重要だと思っています。
その一つの方策として「脱炭素先行地域」を選定し、伴走支援や交付金による支援を行っています。これらの地域がモデルケースとなり、脱炭素の取り組みが全国へ広がっていくことを期待しています。 私たちはこれを「脱炭素ドミノ」と呼んでおり、先行地域の成功をきっかけに、次々と取り組みが広がっていくイメージで進めていきたいと考えています。
市町村や住民と対話する機会を設け、理解を深めていく
─ただ単に脱炭素という視点だけではなく、活性化にも部分とも関連させていらっしゃるということになりますね。具体的な施策をもう少し詳しくお話ししていただけますでしょうか?
服部:最近私たちが進めている事業の紹介になりますが、都道府県が核となり、市町村を牽引していく仕組みが必要だと考えています。小規模な市町村は、企業でいうと中小零細どころか“ほぼ零細”で、規模が小さくなるほど計画づくりも実行も難しいのが現状です。
その上で脱炭素関連の事業は、ある意味で“死活問題”ではありません。すぐに脱炭素をやらなければ誰かの命に危機が迫るという性質のものではないため、自治体にとって最優先事項になりにくいという側面があります。 そこで、都道府県が主導して市町村を引っ張る体制が必要だと考え、私たちは今年度から都道府県に働きかけ、脱炭素事業の政策づくりを支援する委託業務を開始しました。これが一つの大きな取り組みです。
一方で、ネガティブな要素も無視できません。残念ながら自治体としては、再エネに関する議論については“あまり触れたくない話題”になりつつあると感じています。 そこで、市町村が住民等の皆さんと対話する機会を設け、理解を深めてもらう取り組みも進めています。
これまで再エネに関するトラブルは、事業者が住民に説明するもので、自治体は「ノータッチ」という姿勢も見られました。しかし問題が大きくなる中で、「我が町の再エネをどう位置づけるのか」「そのために何をすべきか」を自治体自身が考える必要性が高まっています。私たちはその支援をしたいと考えています。
具体的には、自治体の皆さんと話し合い、住民等が集まる場に出向いて、 「この地域は再エネのポテンシャルが高い。太陽光や風力を導入するとしたらどう考えるか」 といった対話を行います。
住民の皆さんは、自分たちの地域が「風況が非常に良い」「日射量が高く太陽光発電に向いている」といった特性を意外と認識していません。一方で自然環境を守ることも大切です。 その中で「どうバランスをとるか」を自治体と住民が一緒に考え、私たちはその議論を後押しする役割を担います。それが今年度から本格的に動き始めている事業です。
こうした取り組みを進めるには、いわゆる“メガソーラー対策パッケージのビフォーアフター”は大きく変わったと感じていることがあげられます。メガソーラーへの批判が高まったことを境に、状況は大きく変化しました。
以前は「再エネをポジティブに進めよう」と、予算もつけながら積極的に促進していく流れでしたが、批判の声等を踏まえ、年末にはメガソーラーの新たなパッケージも示されました。 その結果、アフターの世界では、自治体と住民がしっかり対話し、地域と共生できる形で再エネを適切に導入することがより重要になっています。私たちとしても、こうした変化に対応し、地域共生型の再エネ導入を支援するメニューを整備していくことが求められていると感じています。

全国約20の先行事例を取材し、動画や記事として紹介
─意識啓発や行動変容は、どのように促しているのでしょうか。
服部:まず、地元の皆さんは再エネについて十分に知らないことが多いと思います。事業者と接した経験のある人は理解していますが、一般の方々は報道やSNSベースの情報しかなく、不安を抱きやすい状況ではないかと思います。
そこで重要なのは、「地域にどんなポテンシャルがあるのか」「事業が入ると景観や経済にどんな変化が起きるのか」といった情報を総合的に伝えることだと考えています。地域と共生するために再エネとは何かを発信していくことも欠かせません。
私たちは現在、全国約20の先行事例を取材し、動画や記事としてまとめています。6月初旬に公開し、地域共生を実現している好事例として紹介する予定です(※6月2日に公開済)。
(脱炭素地域づくり支援サイト:https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/goodecho/)
その一つのパターンとして、住民も市町村も受け身の状態でいるところに、突然メガソーラーの話が降ってきたケースがあります。「そんな話は聞いていない」と混乱が生じ、そこから事業者との対話が始まる――
その過程で、住民の皆さんが「実はこの景観や環境は自分たちにとって大事だった」と気づき、「ここを残してほしい」「この部分を整備してほしい」といった要望が生まれることがあります。事業者はそう言った中で利益の一部を地域へ還元し、住民の希望に応える形で森林整備などが実現しました。結果として、メガソーラーが導入され、地域の望む環境整備も進んだという事例があります。
こうした事例は一般の方々にはあまり知られていません。まず「実際に地域で何が起きているのか」を知っていただくことが理解の第一歩だと考えています。知ったうえで判断していただく――そのプロセスが重要です。
再エネへのネガティブイメージの払拭が今後の課題
─現在直面している課題は何でしょうか。
服部:再エネ(主に太陽光発電)に対するイメージが悪化し、風力を含め批判的な声が増えています。もともと課題に加えて、悪い事例が強調され、再エネ全体の印象が大きく損なわれてしまったと感じています。
ただし、悪い例は全国的に見てもごく少数で、多くの事例は問題なく進んでいます。しかし以前は問題視されなかった景観や事業が過度にネガティブに捉えられるようになってしまったことが課題の一つではないでしょうか。
─最後に新たな展望について教えてください。
服部:ハード面だけではなく、やはりソフトの面でも支援は必要だろうと思います。我々からすると、少なくとも理解を得て事業や施策を進めていくための支援というのは重要だと思っております。ソフト面の支援があることで、自治体や地域住民の方々が、地域の実情に応じて主体的に柔軟に取り組むことができると考えており、予算要求の際にはそうした点の重要性も訴えていきたいと考えております。
─ありがとうございました。
脱炭素地域づくり支援サイト
https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/goodecho/





