
東京湾(内湾)の出入り口・浦賀水道で、西岸の三浦半島(神奈川県)と、東岸の房総半島(千葉県)を結ぶ東京湾フェリー(本社・横須賀市。齊藤宏之社長)は、フェリー「しらはま」丸に漆黒のラッピングを施し「黒船」に大変身。海賊船、いや、「サスケハナ」号へのオマージュで、”映え”力もバッチリだ。

1953(嘉永6)年米海軍のペリー艦隊が突如江戸湾に来航、同社が拠点とする横須賀市久里浜に一行は上陸。黒船艦隊4隻の代表格が「サスケハナ」号というわけである。
来航170周年に当たる2023年、同市の新たな魅力発進の一環として「黒船」へとリニューアル。合わせて同クルーズをスタートした。年4回(羽田便、横浜便ともに2回)の開催だ。
超人気のイベントで、定員350名の乗船券は毎回ほぼ売り切れ。今回(2026年5月17日)の羽田便も満員御礼で、朝10時久里浜港をいざ出帆。「入船・出船」の浦賀水道を横目で見ながら内湾の奥部へ。クルーズは、環境保護と「江戸前」の再生を推進する「東京湾大感謝祭」とも連携、変化する湾内の自然を直接伝える、数少ないイベントでもある。

浦賀水道は太平洋から豊富に海水が供給されるためか、海面は青く澄み白波も輝いている。
フラ&タヒチアンショーや、島巡りシンガー「ORICA」の歌、「黒船楽団」によるピアノとバイオリンの演奏なども披露。クルーズは終始優雅な雰囲気に包まれている。

マスコットのキャプテンペルリくんも一緒に乗船。

帝都防備のため大正初期にされた海の要塞で、今では歴史を伝える貴重な戦争遺跡だ。
「皆さま、ぜひとも海の色の変化に注目して下さい」と、案内役を務める同社常務の寺元敏光氏は、船内放送で乗客にアナウンス。確かに浦賀水道辺りでは青く透き通る海原だが、徐々に濁りを増して行く。東京湾アクアラインを越え、反時計回りでUターン。羽田空港沖に差し掛かる頃には、海は褐色を帯びて来る。それでも半世紀前に比べ水質はずっと改善され、かつての「油臭さ」はもはやないが、海に対する、より一層の「思いやり」を痛感する瞬間でもある。

ぺーリー来航時とほぼ同じコースだが、この辺りになると、水面に褐色が目立つ。
ふと周囲に眼をやると、漁船の多さにも気づかされる。意外にも「湾」は芳醇で、スズキやクロダイ、アナゴ、カレイ、ハゼなど魚種も豊富と聞く。
「黒船」はその後、川崎、横浜、横須賀の各港湾を眺めながら、昼過ぎの2時に無事久里浜へ到着。地球温暖化によるものなのか、黒潮の大蛇行の影響もあり、東京湾外海の千葉・館山沖の海水温が上昇し、かなり前からサンゴ礁が確認されている。また、かつては南西諸島以南に生息の、有毒生物・ヒョウモンダコが千葉県沿岸で確認されるなど、湾の生態系に対する悪影響も心配される。
「海の色」の違いも含め、湾の”生の声”を実感できる同クルーズは、貴重な存在と言えるだろう。
(深川孝行)





