
経済的価値と社会的価値を同時に創出し、持続的な価値向上を目指す
東レは3月25日、次期中期経営課題説明会を開催し、大矢光雄代表取締役社長が長期経営方針“TORAY Challenges 2035”および中期経営課題“IGNITION 2028”を公表した。
大矢氏は中期経営課題“プロジェクト AP-G 2025”を振り返り、目標には未達であるものの年度比では3年連続の増益となる見込みであること、本業でどれだけ効率的に利益(税引後営業利益)を上げたかを示す指標であるROICを上位概念とする経営の推進により、ROIC目標は達成見込みであることを説明した。セグメント別では、構造改革中のライフサイエンスを除き、すべてのセグメントで増益かつROIC改善がなされたこと、施策別事業利益分析やサステナビリティ目標の達成状況においても収益改善や着実な進展が見られたことを伝えた。
b-1024x800.jpg)
これらを踏まえ、東レが目指す世界と長期経営方針に言及し、長期的な経営の方向性について語った。そこでは「東レ理念」をベースに、目指す世界に向けた「ありたい姿・戦略」との関係性を時間軸で体系化。2050年に向けて目指す世界として、
1)人と地球が調和し、資源が循環し、自然が再生していく世界
2)すべての人が健やかに心地よく暮らす世界
3)安全・安心な社会の中で豊かさが生み出され、分かち合える世界
の3点に集約した。
さらに東レが目指す姿として、企業理念「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を起点に、先端材料開発力としての高品質・安定供給力、グローバルなバリューチェーン構築力、素材を起点としたソリューション提案力という東レグループの強みを活かし、経済的価値と社会的価値を同時に創出し、持続的な価値向上を目指すと述べた。
東レの「ありたい姿」を示す“Weaving Science into Society”
続いて事業ポートフォリオと経営のマテリアリティに触れた後、長期経営方針“TORAY Challenges 2035”を紹介。さまざまな事業環境と東レグループへの影響を列挙し、
●確かな成長と次世代市場での飛躍
●ビジネスモデルの転換
●現場力強化とサプライチェーンの強靭化
●DXによる価値創出の仕組み強化
●人材を核とした経営基盤強化
という5つの方針を掲げた。
そして TORAY Challenges 2035のゴールである2035年の東レの「ありたい姿」を端的に表す言葉「Weaving Science into Society ──『科学で社会の未来を紡ぐ』」にクローズアップ。この言葉を通して、素材に限らない東レの科学(R&D、生産、エンジニアリング、マーケティング)を社会課題やニーズと結びつけ、社会に実装することで不可欠な価値へと高めていく姿勢を示した。

次のステージへ再点火し踏み出す“IGNITION 2028”
大矢氏は続いて、次の3年間の中期経営課題“IGNITION 2028”を説明した。これは、これまで取り組んできた“プロジェクトAP-G 2025”の成果と課題、そして長期経営方針を踏まえた最初の実行フェーズであり、2026年4月から2029年3月までの3年間に取り組むべき課題であるとした。また「IGNITION」には、成長に再点火し次のステージへ踏み出すという意味が込められていると語った。
基本方針としては、投資の刈り取りの加速、構造改革完遂の「質と確度」を高め、長期的な成長に向けた事業構造の転換・経営基盤の整備、半導体や宇宙・防衛をはじめとする次世代市場の開拓強化、将来への種まきを着実に進めていく方向性を示した。単なる数量拡大ではなく、付加価値の創出・競争力の強化、人材やDXを通じた事業変革を同時に進めることで、成長の「質と角度」の向上を重視することを強調した。
2028年度の数値目標として、ROIC約7%、ROE約8%への引き上げを目指し、その前提となる売上収益は3兆円、事業利益は2,300億円とし、収益性と成長の両立を図り、事業利益率8%への改善を目標とすると述べた。
真のサステナブルな会社への進化を
続いて大矢氏はサステナビリティへの取り組みについて説明した。サステナビリティを持続的な成長と企業価値向上の基盤と位置付け、環境・社会・人の3つの視点から経済的価値と社会的価値の両立を目指し、事業活動を通じた課題解決に取り組んでいることを紹介した。
TORAY VISION 2050を実現するためのサステナビリティ活動の基本方針として、環境と人を軸に事業活動を通じたサステナビリティを推進することを強調。環境面ではGHG排出量削減、省エネ、燃料転換、再エネ化、資源循環、廃棄物削減、原料ソース多元化などに取り組み、環境貢献と人的価値向上を両立させ、環境貢献ビジネスと人的貢献ビジネスの拡大を図り、経済的価値と社会的価値の向上を目指すと述べた。
環境負荷低減ではGHG排出削減に言及し、省エネや燃料転換など現実的かつ着実な施策を積み重ね、2030年・2035年の削減目標達成を目指すと語った。併せて廃棄物、用水使用量、VOC排出量削減にも継続的に取り組み、社会的責任を果たしていきたいと述べた。
次に「人を基本とする経営」の実践に焦点を当て、東レでは多様な人材・価値観の包摂、変化に対応する人材・組織づくり、東レ理念への共感・働きがいのあるキャリア形成を人的資本経営の柱としていることを確認。従業員の自律・挑戦・共創を促進し、エンゲージメント向上を通じてサステナブルな成長を実現していきたいと語った。
事業を通じた社会への貢献では、気候変動、資源循環、水資源、ウェル&コンフォートライフといった分野で先端技術を活かし、社会的価値を経済的価値へと転換していくと述べた。
資源循環の取り組みでは、リサイクル繊維やフィルム製品の展開、バイオマス素材の活用などを通じて再生資源の使用率拡大を図り、2030年度に10%、2035年度に30%という目標に向け、循環型社会の実現に貢献していくと語った。ここまで述べた内容をいかに社内に課題として落とし込み、“IGNITION 2028”をどのような具体的施策で推進していくか。この3年間で成長戦略と構造改革の「質と角度」を高め、ROIC7%を安定的に生み出す事業構造への転換、経営基盤の強化、そして真のサステナブルな会社への進化を目指したいと話した。最後にユニクロと東レの戦略的パートナーシップに触れ、説明を締めくくった。






