公益財団法人イオン環境財団が2月18日(水)、東京都渋谷区の国連大学において「第3回イオンSATOYAMAフォーラム」を開催した。同フォーラムは、自然災害の頻発や地域社会の変化を背景に、里山や地域コミュニティがもつ「レジリエンス(回復力)」に着目し、持続可能な地域づくりの在り方を考える場として開催。 東北大学副学長で災害科学国際研究所の今村文彦教授による基調講演をはじめ、同財団が連携する各大学の研究成果や、被災地で活動する団体・自治体の実践事例を共有し、防災・減災、復旧・復興、里山保全の視点から意見交換を行い、自然と共生する地域社会の未来像を探った。

フォーラム会場の様子

開会にあたり、イオン環境財団専務理事山本百合子氏が挨拶。同財団の歴史を振り返りながら、その活動の特徴が地域のボランティアのメンバーといっしょになって行うことであることを強調した。また東日本大震災など被災地に注力した植樹活動を展開してきた事例を紹介し、同財団が目指す里山が現代社会にマッチし、ユース世代も活動しやすいサステナブルな里山をつくるところにあると語った。

イオン環境財団 専務理事 山本百合子 氏


環境省地域ネイチャーポジティブ推進室 奥田青州氏、国連大学サステナビリティ高等研究所所長 山口しのぶ氏の来賓挨拶に続き、第一部の基調講演では東北大学副学長 災害科学国際研究所教授 今村文彦氏、一般社団法人のと復耕ラボ 代表理事 山本亮氏、長崎県南島原市みんなの森守協議会 理事 内田繁治氏、宮崎県綾町役場 ユネスコエコパーク推進室 係長 河野円樹氏、大阪公立大学大学院 理学研究科 教授 竹内やよい氏が登壇。


今村文彦氏は「東日本大震災から15年 教訓とその伝来」と題し、来襲した津波などの被害と復興を振り返りながら、減災、回復力、環境価値を提供する今後のグリーンインフラへの期待とそれを促進する植林活動の意義に言及。過去の災害経験、教訓も伝承しているはずなのに住民はなぜ避難行動できずに被害を受けてしまったことに着目し、伝承に力を入れる3.11伝承ロードなどの活動の重要性を訴えた。


山本氏は「能登半島地震からの地域内外のつながりを活かした再生と復興の実践報告」をテーマにスピーチ。能登半島地震前の里山の風景を紹介し、能登半島全体が自然の恵みとそこに感謝する祈りと祭りの半島であることを伝えた。そして、地域を一つのホテルに見立てて里山の暮らしをまるごと楽しめる取り組みを進めてきたことを紹介した。そういった中で起きた震災や後に豪雨災害に触れ、応急復興が終わった状況の中、本格的な復興はこれからであることを強調。里山・地域コミュニティが持つレジリエンスを復旧から復興へ未来づくりの場として里山の大切さを力説した。そして、小さい道を山につくり管理がしやすい自伐型林業を取り入れた森づくりを開始したことを述べ、正しい山道づくりが災害の被害を食い止め、そのノウハウを他地域へ発信していきたいと語った。


続いて「里山整備による減災対策」をテーマに講演を行った内田氏は南島原市にある南島原イオンの里山にクローズアップ。そこが2010年から2012年という3か年にわたってイオン環境財団と南塩原市が植樹を行った場所であり、ドーム7.5個分に相当する日本で最も大きな規模の植樹を行った里山であることを紹介。その後2021年8月に長崎県を襲った集中豪雨ではイオンの里山の南側にも地滑りが発生したが里山を整備したことで地表を流れる雨量を減少させる働きがあったことを説明した。また、衛星によるリモートセンシングによる調査によって周辺地区の保水力を高めていることが判明し、イオンの里山を整備したことによって減災対策に繋がったことを紹介した。


続いて登壇した河野円樹氏は「宮崎県綾ユネスコパークのつながる自然とつなげる地域」をテーマに講演。伐採を食い止め、生物多様性の保全を進めてきた綾の照葉樹林プロジェクトが2005年にスタートしたことを紹介し、奥山という人が住んでいないエリアでも森が守られるようになったことを伝え、そうした取り組みが評価され、2012年に綾町を含むエリアがユネスコエコパークに登録。奥山の自然と里山の自然がそれぞれつながり、そこに自然が持つレジリエンスが存在し、それをいかに引き出していくか、それを様々な人たちが利用できるカタチをつくっていけるか、が今後の活動のポイントとなり、今後も企業や大学とその取り組みを進めていきたいと話した。


基調講演の最後は竹内やよい氏が登壇。「熱帯里山にみる森林と地域住民のレジリエンス~ボルネオ熱帯の事例から」をテーマにボルネオのユニークな植物や多様な文化を紹介しながら、その里山から得られる恵みに言及。ラタン工芸品にクローズアップした。またこの森が原生林に匹敵する生物多様性を有し、希少種や保護種も多いことを強調。動物の多様性においても同様であることを説明した。しかし、オイルパームによる熱帯雨林景観の減少の中で土地利用の配置、空間的配置、連結性が今後のレジリエンスの鍵になると話した。

第2部では、連携大学による2025年度活動紹介、パネルディスカッション、そしてイオンモール仙台上杉の事例紹介が行われた。

パネルディスカッションの様子



国連大学サステイナビリティ高等研究所客員リサーチフェロー・SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップの渡辺綱男氏は「能登らしさを大切にした創造的復興」と題して講演。能登復興支援シンポジウムや能登復興支援国際シンポジウム、EXPO2025大阪・関西万博「~CONNECTING YOU TO 能登~」などのイベントを振り返り、世代や地域を越えて学び合いが行われた成果について語った。また、能登の里山・里海にある文化や生物多様性のつながりを取り戻していくことが、能登の復興における重要なポイントであると訴えた。


続いて、早稲田大学文化構想学部4年の柳百香さん、千葉大学大学院園芸学研究院教授の高橋輝昌氏、東京大学大学院新領域創成科学研究科サステイナブル社会デザインセンター特任准教授のヤゼムブスキ・マルチン氏による活動報告が行われた。


その後、「里山・地域コミュニティがもつレジリエンス」をテーマにパネルディスカッションが実施された。ここでは、東北大学災害科学国際研究所准教授の佐藤翔輔氏をモデレーターに、京都大学フィールド科学教育研究センター特定研究員の小井土凛々子氏、基調講演を行った山本亮氏、そして活動報告を行った4名が登壇。それぞれの活動現場を紹介しながら、里山・地域コミュニティがもつ可能性について多角的な議論が交わされた。


イオンモール仙台上杉の事例紹介では、イオンモール株式会社戦略統括部地域サステナビリティ推進部長の渡邊博史氏が発表。再エネEVステーションの設置や、コミュニティの場となる屋内外一体型広場「KAMISUGI ONE PARK」などを紹介し、東日本大震災での津波被害においてイオン多賀城店が約5000台の車両流失を食い止めた事例を挙げ、イオンふるさとの森による減災効果を強調した。


その報告を受け、東北大学副学長・災害科学国際研究所教授の今村文彦氏は、イオンモール仙台上杉における防災拠点の在り方に言及。レジリエント・コミュニティへの取り組みが発展し、その成果はSDGsなど今後の活動にもつながると述べた。

そして、同フォーラムは今村氏と佐藤氏が全体への所感を述べ、閉会した。




フォーラム開催中に行われた、グラフィックレコーディングの様子