ホームセンター「カインズ」を日本全国に展開し、日用品からDIY用品まで幅広い商品を提供する株式会社カインズは、園芸用土の水平リサイクルシステムを構築した取り組みが評価され、第26回グリーン購入大賞・農林水産特別部門において「大賞」を受賞した。

ここでは、同社のCSV推進部 環境グループ グループマネージャー・井上裕之氏に、その取り組みの経緯や、地域共生を志向する企業風土などについて話を伺った。

地域の困りごとと地球規模の課題を同時に解決するために

──今回は、グリーン購入大賞農林水産特別部門「大賞」受賞、おめでとうございます。
受賞に対する社内やステークホルダーの皆様の反響はいかがでしょうか。


ありがとうございます。今回の受賞は、自治体の皆様との信頼関係構築において、よい後押しになったと感じています。すでに導入いただいている自治体様からは、住民サービス向上と環境対策の両立という観点から高い評価をいただいています。また、受賞によって本システムが第三者からも認められたことになりますので、現在導入を検討されている他の自治体様に対しても、信頼できるスキームであることを示す取り組みになったと感じています。

カインズは、地域における困りごとや関心、ニーズに丁寧に耳を傾け、「人々が自立し、共に楽しみ、助け合える、一人ひとりが主役になれる『まち』を実現する」ことを目指す『くみまち構想』を掲げています。今回の園芸用土の水平リサイクルシステムは、その代表的な取り組みの一つです。導入している店舗では、小売業の枠をこえて地域課題を解決するインフラとして機能していることを実感でき、従業員のモチベーション向上にもつながっています。


──園芸用土の水平リサイクルシステムは、どのような経緯で誕生したのでしょうか。

やはり『くみまち構想』が原点となっています。今回の園芸用土の水平リサイクルシステムを最初に導入いただいた自治体は、京都府の亀岡市様です。同市は2018年に「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を発信し、多くの事業者とパートナーとして提携を進め、地域資源を活用した新たな価値創出による持続可能なまちづくりに取り組んでいらっしゃいます。

カインズでは、日本の地域やくらしが抱える様々な課題を「くみまち15の共創価値領域」として分類しています。その一つに「環境領域」を位置付けており、同市と同じ方向性を目指して2021年に「かめおか未来づくり環境パートナーシップ協定」を締結後、さまざまな環境課題について対話を重ねてきました。そうした中で、不用になった園芸用土の処分について市民より多くのお問い合わせが寄せられていることを知りました。

園芸用土は、地球の土を削り生産されている、限りある土資源です。また、不用となった土は東京23区をはじめ多くの自治体で、土や砂、石をゴミとして出すことができず、その処分方法が課題です。こうした地域の困りごとと、資源循環という地球規模の課題を同時に解決するために、何かできないかと着手したことが、この取り組みの始まりとなっています。


自分が地域の役に立つという成功体験が、自分ごと化に直結する

──このシステムの誕生に際し、直面した最も大きな課題は何だったでしょうか。また、どのようにして乗り越えられたのでしょうか。

この事業が1回だけで終わらず、2回、3回と継続していくためには、CSRという慈善事業ではなく、本業を通じて社会課題の解決と経済的価値を両立させるCSVである必要がありました。その中で重視したのは、ベースにある「くみまち構想」で大切にしている近江商人の三方よしの考え方です。それは「売り手よし、買い手よし、世間よし」という、利益だけでなく、取引を通じて社会全体に貢献することを目指す経営哲学です。

本スキームは、自治体様、メーカー様を含む企業、そして地域住民(お客様)の三者に利益がもたらされるがように体制を構築しました。自治体様には問い合わせ対応の負担軽減、メーカー様には資源枯渇の課題解決、そしてお客様には「困りごとの解消」を提供し、カインズは資源循環の拠点となる。このそれぞれの課題を解決し、価値を生み出すことが、我々の目指す三方よしにつながります。

メーカー様には焼成・殺菌技術によって、安心して使える品質であり、かつ他社製品と比較しても生育スピードが早い高品質な再生土を生産していただきました。自治体様には広報誌やホームページによる周知・啓発によって信頼性を担保していただきました。そして我々カインズとしては、お客様が回収拠点として買い物ついでに不用となった園芸用土を気軽に持ち込めるよう、店舗が地域のサーキュラーステーションの役割を担ったのです。このように役割分担を明確にしたことで、より循環可能なシステムとして稼働させることができました。


──今後、水平リサイクルシステムで改善したい課題は何でしょうか。

このシステムを一部地域の特別な取り組みで終わらせるのではなく、当たり前のように存在する社会インフラとして定着させていくことが課題だと捉えています。先ほど申しましたが、園芸用土はほとんどの自治体で”自然物”として取り扱われており、廃棄することができません。市民の方がもっとガーデニングや家庭菜園に取り組みやすくするためには、不用になった園芸用土の回収拠点が社会インフラとして定着していく必要があると感じています。こうした拠点が広がれば、ガーデニングや家庭菜園はさらに普及していくと考えています。


──店舗で循環型培養土の販売や不用な園芸用土の回収など、第一線を支えるスタッフには、サーキュラーエコノミーや環境問題に対してどのような意識の変化が見られたか教えてください。

全国にあるカインズの店舗で本取り組みを行っているわけではありませんが、多くの従業員に認知されていると感じています。おかげさまでこの取り組みは、2024年に環境省主催のグッドライフアワード、2025年にはグッドデザイン賞、グリーン購入大賞を受賞することができました。そのことをリリースや社内イントラで発信したことで、社内にも広がっていったという状況です。導入している店舗では、お客様から「捨てる場所がなく困っていたので助かった」という感謝の言葉を直接頂戴する機会が増え、それが大きなやりがいにつながっています。


──地域共生を志向する「くみまち構想」が、社員一人ひとりにとって自分ごととして捉えられるようにするためにどのような工夫をしていますか。

「くみまち構想」は、地域の困りごとやニーズに耳を傾け、まちのくらしをつくる取り組みです。亀岡市は、環境課題がメインテーマですが、今では高齢者支援、教育・子育て、防災・災害対応など、さまざまな課題に対して連携が広がっています。店舗をハブとして、行政やNPO、地元自治体と共創しながら、課題解決につなげていくというプロセスそのものを重視しています。そこで得た成功体験を積み重ねることが、そのまま自分ごと化につながっていくと考えています。



──本日はありがとうございました。