
「パリ協定」採択から10年。アメリカの離脱という衝撃を乗り越え、気候変動対策の前進のために各国の協調が求められる中、11月10日、ブラジルのベレンで国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)が開幕した。
地球規模での環境問題に取り組む国際環境NGOであるFoE Japanは、そのポイントを
1.2035年の温室効果ガス削減目標をどこまで高められるか
2.途上国への資金支援を具体化できるか
3.森林保全・森林破壊防止の議論が進むか
4.市民社会はどこまで声を届けられるか
の4点にまとめて開幕前に発表した。大要は以下のようになる。
ポイント1. 2035年の温室効果ガス削減目標をどこまで高められるか
2015年のCOP21で採択された「パリ協定」において地球の平均気温の上昇幅を産業革命前とくらべ1.5℃に抑える目標が掲げられ、その実現のために、各国が温室効果ガスの削減目標を含む国別目標(NDC)を5年ごとに提出・更新することが約束された。
各国が初回のNDCを提出したのは2020年頃で、2023年のCOP28では、実際にどれだけ削減が進んでいるのかの進捗確認(=グローバル ストックテイク)が行われた。その結果、残念ながら各国の削減計画では「1.5℃目標」達成に必要な道筋とは隔たりがあることがわかり、主に以下の内容が合意された。
・2030年までの重要な10年間で、化石燃料からの脱却に向けた行動を加速させる
・2030年までに世界の再生可能エネルギー設備容量を3倍に拡大する
・2030年までにエネルギー効率の改善率を倍増する
・2030年までに世界のGHG排出量を2019年比で43%、2035年までに60%削減する必要がある
これを受けて、各国は2035年の削減目標を含む新たなNDCを2025年2月までに提出することとなった。しかし、期限までに提出した国はわずか。遅ればせながらCOP30期間中には各国のNDCが出揃う見通しとなっており、全てをまとめた時にどこまで「1.5℃目標」に近づけられるかが大きな焦点となる。
ポイント2. 途上国への資金支援を具体化できるか
前回のCOP29では、途上国が気候変動対策を進めるための資金支援について大きく議論された。途上国は先進国よりも温室効果ガスの排出量が少ないにも関わらず、気候変動の悪影響をより大きく受けることや、先進国の歴史的な排出責任を踏まえ、途上国側は年間1兆ドル以上の支援を求めた。一方、先進国は、具体的な数値目標の提案に後ろ向きで、民間資金の動員や開発銀行の改革の重要性を主張していた。予定していた会期後も延長して議論が続けられた結果、以下の内容が合意された。
・2035年までに先進国が年間3,000億ドル(約46兆円)を途上国に支援する
・2035年までに官民合わせて少なくとも年間1兆3,000億ドルを拠出するよう呼びかける
これを受けて、今回のCOP30では、1兆3,000億ドルへの投資拡大に向けたロードマップが示される予定になっている。具体的な資金確保の見通しをつけられるかが注目されている。
ポイント3.森林保全・森林破壊防止の議論が進むか
世界最大の熱帯雨林としてCO2を大量に吸収してくれる「地球の肺」と呼ばれながら、違法伐採や火災などでその消失を加速させているアマゾン。今回のCOP30の開催地であるベレンがアマゾン川の河口に位置する都市という意義もあり、今回のCOPは「ネイチャーCOP」になると言われている。森林保全が大きなテーマであり、議長国ブラジルは、森林を守るための基金「トロピカル・フォレスト・フォーエバー・ファシリティ(国際熱帯雨林保護基金、通称TFFF)」を立ち上げた。国際熱帯雨林保護基金(TFFF)が目指す内容は以下のようになる。
・各国政府が拠出する公的資金を主とした250億米ドルを呼び水に、民間資金を引き込んで1000億米ドルの追加投資を得る
・この基金の運用益で、熱帯林を保全することを約束した国々のために年間40億米ドルの資金を提供する
・森林を保全・回復した面積に応じて、1ヘクタールあたり4米ドルを基準に資金が支給される
・森林の保全・回復状況は衛星画像によってモニタリングされ、もし森林の破壊や劣化が生じた場合は、支払いが減額または停止される可能性もある
・受け取った資金の20%は、先住民族と地域社会へ直接還元する
ポイント4.市民社会はどこまで声を届けられるか
COP30は、単なる国際会議ではなく、グローバルな社会運動が結集する場でもある。前回のCOP29が開催されたアゼルバイジャンやCOP28が開催されたドバイ等は、アクティビズムや抗議活動が厳しく規制されており、デモや集会などの開催が難しかった側面もあった。今回のCOPでは、会場外でのアクションや気候マーチなどが計画されており、民主的空間が取り戻され、議場の外での市民たちの活発なアクションによって、気候変動対策を加速するための後押しができるという期待が高まっている。
COP30と同時並行で開催される「ピープルズ・サミット」は、草の根レベルの多様な人々が参加し、公式会議を補完する役割を担っている。市民、先住民、ユース、NGO、科学者などが集まり、気候変動に関する問題を議論し、政策提言などを行うことで、本会議へプレッシャーを与えることを目指している。





