アサヒグループでは、グループ理念“Asahi Group Philosophy”の行動指針の一つとして「事業を通じた持続可能な社会への貢献」を掲げている。サステナビリティの重点テーマの一つである「気候変動への対応」においては、CO2排出量削減の中長期目標「アサヒカーボンゼロ」を設定し、2040年までにCO2排出量をネットゼロとすることを目指している。
その中でアサヒ飲料は、将来世代にワクワクと笑顔をつなげていくための活動「100 YEARS GIFT(100年ギフト)」の一環としてCO2資源循環モデルの取り組みを推進。自動販売機を通して環境負荷低減に貢献している。
ここでは同社と他社とのコラボレーションによる CO2の吸収とその活用で国内初となる2つの取り組みを紹介する。
【CASE 1】
日本エムテクスとCO2吸収材を主原料とした無焼成のタイル開発
「CO2を食べる自販機」で回収したCO2活用のタイルを商品化
アサヒ飲料株式会社は、日本エムテクス株式会社とCO2吸収材を主原料とする内装用タイル「二酸化タイル」を共同開発したと12月4日発表した。「CO2を食べる自販機」で回収したCO2を活用し商品化する国内初の取り組みで、CO2資源循環を推進していく。CO2吸収材を使用した無焼成の内装用タイルについては特許出願中となる。
「二酸化タイル」はCO2吸収材と高炉で鉄鉱石を溶融・還元する際に発生する高炉スラグを主原料に使用した内装用タイル。主原料となる2つの素材と水を混合したものを圧縮・硬化させる工程で製造するため、一般的なセラミックタイルの製造工程で必要な約1200~1300度の加熱焼成が不要な無焼成のタイルとなる。一般的な無焼成のタイルと比較しCO2排出量を大幅削減することが可能。2025年4月から、日本エムテクスがハウスメーカーやデベロッパー向けに販売していく。
アサヒ飲料はCO2資源循環の推進に向けて、CO2吸収材をコンクリートやサンゴ移植の基盤に活用する実証実験に取り組んでいる。今回、日本エムテクスの“価値を未来へつむぐ“ビジョン、資源循環型社会づくりの理念に共感したことをきっかけに同開発を実施した。
【CASE 2】
京王電鉄・アゲオとCO2吸収材を活用したケーブルトラフ開発
駅に設置する「CO2を食べる自販機」で回収したCO2を活用し
鉄道路線内ケーブルトラフの材料とする取り組み
アサヒ飲料株式会社は、京王電鉄株式会社、株式会社アゲオと協業し、鉄道路線内の電気配線用ケーブルを保護する管であるコンクリート製ケーブルトラフを開発。12月18日から京王電鉄施設内で導入した。同トラフは京王電鉄新宿駅および府中駅に設置する「CO2を食べる自販機」での回収分も含むCO2を活用しコンクリート製ケーブルトラフ材料とし、CO2吸収材をケーブルトラフに活用する国内初の取り組みとなる。
事前検証により、コンクリート製ケーブルトラフは、原料の一部にCO2吸収材を配合することで、コンクリート体積1立方メートルあたり約28kgのCO2排出量を削減できることが分かった。同コンクリートの適用性を検証するため、浜田山駅から高井戸駅間の約165m分のケーブルトラフへ導入となる。
京王グループでは「京王グループ理念」で掲げている「環境にやさしく」に基づき、環境に配慮した事業活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。地球環境保護を目的とした機器の導入や省エネルギー施策の着実な推進、再生可能エネルギー由来の電力の活用検討等、脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一環として、CO2資源循環モデルを推進することとなった。また、株式会社アゲオは、「プレキャスト鉄筋コンクリートの製造を主たる業務とし、原材料の調達から製品の出荷に至るまでに発生する環境影響を低減するとともに、地球環境を保全し、循環型社会の構築に貢献する」ことなどを環境方針に掲げ、事業活動を展開している。
〈CO2の吸収〉
CO2吸収性能として1台当たりのCO2年間吸収量は稼働電力由来のCO2排出量の最大20%を見込んでおり、スギ(林齢56-60年)に置き換えると約20本分の年間吸収量に相当する。現在は関東・関西エリアを中心に、CO2濃度が高いとされる屋内に加え屋外などさまざまな場所に2024年11月末時点で約350台設置している。
脱炭素社会の実現に貢献する国内初の取り組みであり、大気中のCO2の吸収を可能にした自動販売機は、特許(特許第7282338号)取得済み。
〈吸収したCO2の活用〉
自動販売機から吸収したCO2は、取り組みに賛同する各自治体や企業と共創しながら、さまざまな工業原料として活用することを計画している。アスファルトやコンクリートの原料に配合しCO2の固定化や海中での藻場造成などに活用することでブルーカーボン生態系※の再生を図ることなどを検討している。
※ブルーカーボンとは「海洋生態系に蓄積される炭素」のことであり、そうした作用を有する生態