生物多様性みどり賞は、公益財団法人イオン環境財団と国際連合環境計画生物多様性条約(Convention On Biological Diversity、以下 CBD)事務局が共催で隔年実施している国際賞。この賞は、生物多様性の保全とその普及や啓発、共有において、顕著な功績と活動が認められる個人を顕彰する賞となる。受賞者にはその生物多様性保全活動を支援するために10万米ドルの賞金が贈られる。2024 年は2名の受賞が決定した。

「生物多様性みどり賞」は、2010年「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が名古屋で開催されたことに加え、当財団設立20年の節目を迎えたことを記念して創設され。これは、顕著な活動が認められる個人を顕彰するもので、これまでに17カ国19名が選出されている。第8回となる本年は、35カ国78名の候補者の中から生物多様性の世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の推進において大きく貢献された受賞者2名を決定した。10月の生物多様性条約第16回締結国会議(COP16)のコロンビア開催を受け、授賞式はCOP16の会場で実施。 授賞式には環境省の松澤地球環境審議官なども出席し、財団の岡田理事長がプレスカンファレンスと授賞式でスピーチを行った。

同財団は、受賞者との連携により、2011年からインドネシア・ジャカルタや2014年 からのベトナム・ハノイ近郊での植樹の実施、2013年からのベトナム国家大学ハノイ校生のアジア学生交流環境フォーラム(ASEP)への参加や、今年の生物多様性国際ユース会議(IYCB・横浜開催)への参加が実現した。今後も受賞者との連携を強化し、取り組みを推進していく。

COP16会場の様子

第8回生物多様性みどり賞 受賞者



ヴェラ・ヴォロノヴァ  Vera Voronova(カザフスタン) 
カザフスタン生物多様性保全協会 エグゼクティブディレクター 

ヴェラ・ヴォロノヴァ氏は自然保護・回復を専門とするカザフスタンの市民社会組織ACBK の優れたリーダー。ヴォロノヴァ氏は複数国の政府や自然保護団体と連携し中央アジア全域における種の回復、保護区の創設、自然保護法の整備に取り組んできた。特に絶滅が危惧される状態までに陥っていた草原地帯の哺乳類個体群の回復と移動コリドー(※1)の回復、中央アジア・フライウェイ(※2)の保護において大きな功績を残している。彼女の活動は多くの農村コミュニティの生活を改善し、環境保護問題について次世代を教育し、国境を越える移動動物の保護に貢献している。今後のさらなる国際的な活躍が期待される。


※1 移動コリドーとは、野生動物が移動できるよう保護された自然生息地帯。 
※2  中央アジア・フライウェイとは中央アジアに位置する渡り鳥の飛路。

写真左)ヴェラ・ヴォロノヴ



イサベル・アグスティナ・カルデロン・カルロス 
Ysabel Agustina Calderón Carlos(ペルー)
環境活動団体 スマック・カウサイ 創設者兼 CEO 

スマック・カウサイ(良い生活の意)の創設者兼 CEO であるイサベル・アグスティナ・カルデロン・カルロス氏は、花粉媒介者の減少を食い止め、回復させる保護活動を指揮する一方、地域コミュニティの社会経済的発展を推進している。「ビーハニー・ルート」プロジェクトはアグロツーリズムを活性化し、蜂蜜の生産と観光収入を生態系の回復、原生植物の再植林、研究、保全に充てている。生物多様性を保全し、持続可能な生計を支え、男女平等を推進するこの活動は、生物多様性と市民社会の双方に利益をもたらす革新的なビジネスモデルを構築している。

写真左)イサベル・アグスティナ・カルデロン・カルロス氏