7月に開幕したパリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会。その中で目を惹くのがTEAM JAPANが着用するオフィシャルスポーツウェアだ。その朝焼けの空を赤く染めるような鮮やかな「サンライズレッド」のグラデーションカラーが印象的なウェアやシューズ、バッグなどを作製し、提供しているのは、株式会社アシックス。「パフォーマンスとサステナビリティの両立」を開発コンセプトに、優れた機能性を持たせながら環境に配慮したアイテムが今回のオリンピックで活躍している。
アシックスとCFCLとのパートナーシップから生まれたシューズ
7月23日に行われた株式会社UPDATER主催のウェビナーでは、そういったアシックスのエグゼクティブアドバイザーの吉川美奈子氏とデザイン面におけるコラボレーションパートナーであるアパレルブランド「CFCL(シーエフシーエル)」の元CSOであり、株式会社SISON’S代表取締役の岡田康介氏が登場。UPDATER代表取締役 大石英司氏がファシリテーターを務め、製品の開発秘話やパートナーシップの重要性、明日からSXを実践するためのヒントなどが語られた。
岡田氏は2020年に発足したラグジュアリーブランドCFCLのエグゼクティブアドバイザーであり、ビジネスとSDGsの両立を支援する経営コンサルティングを手がけるSISON’S代表取締役も務める。ウェビナーの冒頭ではそういったCFCLとアシックスとのコラボが生まれた経緯を紹介。
岡田氏が脱炭素を広げていくために環境省と意見交換を重ねる中でアシックスの吉川氏との出会いがあり、そこでの提案と快諾からこのプロジェクトが始動したことが語られた。
攻めと守りの絶妙な戦略が開発成功の要因
続いてアシックス吉川氏からは世界最少CO2排出量スニーカー「GEL-LYTE III CM 1.95」の製品特徴や開発までの経緯、そして同製品やランニングシューズでのカーボンフットプリントの表示など、先進的にサプライヤーを巻き込んだ脱炭素への取り組みが話された。
同氏のプレゼンテーションでは2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す中、シューズ業界が世界の総GHG排出量の1.4%を占めながら、シューズのCO2排出量は複雑な製造プロセスや多くのステークホルダーとの関わりながら機能性は妥協できないなど排出量削減が難しい状況にあったことを解説。10年前にランニングシューズのCFPを算出し、標準化していたこことからそのLCAを俯瞰した際に材料調達と製造での排出になることがわかり、その領域での削減にフォーカスして開発が行われたと述べた。そして、実際に原材料にサトウキビやリサイクル材料が使用され、製造部門やサプライヤーなどそれぞれが専門性を発揮しながら、妥協点ではなく、機能面からデザイン面まで納得点を見出していったことが強調された。結果、世界最小のCO2排出量を削減するシューズが誕生。世界最小のCO2排出量や品質とサステナビリティの妥協のない追求という攻めや従来の慣行の見直しとCO2算出の精度向上や第三者認証という守りの戦略が絶妙のバランスで行われたところに成功の要因があったことが語られた。
トークセッションでは機能性とデザイン性の両立やボトムアップの必要要件などをテーマが話題に。デザインを担当したCFCLの取り組みが岡田氏から述べられ、炭素排出量を抑えるために色を厳選したことが話された。また吉川氏からはボトムアップについては「NO」と言われても取り組み続ける重要性が訴えられた。