6月6日、国連大学サステイナビリティ高等研究所と公益財団法人イオン環境財団が連携協定を締結し、その会見を行った。
両者は今後、昆明・モントリオール生物多様性枠組及びパリ協定等の国際目標達成に向けた取り組みを加速させるために、双方のこれまでの知見と国際的なネットワークを最大限に活用し、その解決策に関する調査研究を共同で推進するとともに、国際的な課題に効果的な解決策を提案できるユース世代のグローバルリーダーの育成を推進していくとのことだ。
科学的な知見とネットワーク、環境活動の経験が融合する連携
挨拶に立った 国連大学サステイナビリティ高等研究所 所長 山口しのぶ氏は国連大学が1972年国連総会にて創立され、日本に本部を置く唯一の国連機関であることを紹介。同研究所が国連大学の研究所として「持続可能な開発のためのガバナンス」「生物多様性と社会」「水と資源管理」「イノベーションと教育」という4つの研究テーマ領域の研究を推進するとともに、修士、博士課程、ポスドクフェローシップならびに短期集中コースを提供しながら、ユース世代の取り組みにも注力してきたことを述べたあとにイオン環境財団と連携する重要な理由を三点から説明した。
第一に2021年にSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップに参加し、我々の研究所とイオン環境財団は協力の基盤を確立してきたこと。
第二に民間団体との連携の重要性を掲げ、横断的な環境問題の解決には異なる分野の専門知識を持つパートナーとの連携が必要不可欠であることを強調。国を挙げて実施しているカーボンニュートラルやネイチャーポジティブ、SDGsの達成に向け、多種多様な取り組みを目指す国連大学にとっては民間団体であるイオン環境財団との連携は極めて重要であるとした。
第三にイオン環境財団のアジア学生交流環境フォーラム等のユース支援に対する実績に言及。生物多様性の損失や気候変動などが地球規模で進行する環境問題の影響をより多く受けるのは若い世代であることに触れ、パートナーとして共にユース世代のグローバルリーダー育成に取り組んでいきたいと話した。また若い人材を国連大学の代表として生物多様性条約などの国際会議へと派遣するグローバルユースミドリプラットフォームの事業(GYM)について述べた。そして、この連携が国連大学サステイナビリティ高等研究所の科学的な知見と国際的なネットワーク、イオン環境財団の持つ長年にわたる環境活動の経験を融合し、国際目標の達成に向けた取り組みを加速すると期待し、挨拶を結んだ。
よりグローバルにユース世代の育成に取り組む新しい挑戦
次に登壇した公益財団法人イオン環境財団 専務理事 山本百合子氏は同財団が日本初の地球環境に特化した民間団体であることを紹介。財団説立者であり現名誉理事長、そしてイオンの創業者で岡田卓也氏が1989年のベルリンの壁の崩壊のあと、今後地球の課題は、東西冷戦問題から環境問題や水の問題となると捉えて財団の設立に至った背景を話した。また、財団20周年を迎えた際に国連の生物多様性条約事務局と連携協定を発表し、ユース世代に対する環境教育を推進してきたと語った。
さらにアジア主要国の大学に対して行ってきたアジア学生交流環境フォーラムのプログラムが持つ意義を継承、発展させ、GYMではさらなる環境人材を輩出していきたいと抱負を述べた。続いて万里の長城をはじめとするグローバルなステージで植樹活動を行い、近年は現代社会にマッチした里山づくりに地域とともに取り組んできたことを紹介。これまで様々なパートナーシップを結んできたが今回のようなグローバルでユースを対象にしたパートナーシップは、新しい挑戦となると力説し、平和構築に欠かせない環境教育の重要性を訴えた。
継続性に注力する人材育成のプラットフォーム
国連大学サステイナビリティ高等研究所プログラムヘッド竹本氏と公益財団法人イオン環境財団次長 西原謙策氏は、両団体の概要紹介を行った後に連携協定の範囲について説明。今後、SATOYAMイニシアティブに関する共同研究やユース世代を対象とした人材育成に取り組んでいくとした。
さらにGYMに関しては今後、オンラインによる国際合同研修や生物多様性COP16への派遣、さらに国連大学が開催する国際会議に登壇する機会を提供していくと述べた。
質疑応答ではVane側より田邊プロデューサーがユースたちの卒業後のフォローアップ体制や教育する側の体制について質問。竹本氏は卒業後に次の世代をサポートするメンターとして活躍の場を提供することで育成の継続に努めたいと述べた。山本氏はGYMが単発の取り組みではなく、プラットフォームであることからそこにある永続性を強調。山口氏は、若い教員の研修など教育する側のキャリアアップの重要性を語った。