2002年に「鎌倉市グリーン購入等基本方針及び同調達方針」を策定し、庁内で率先した環境配慮製品の調達に努めるなどグリーン購入に対して意欲的に取り組んでいる鎌倉市。加えて2020年2月に「鎌倉市気候非常事態宣言」を行い、ゼロカーボンシティとして2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロへのチャレンジを続けている。また役所や支所などにおいてペットボトル飲料の販売を中止し、リサイクル率においても人口10万以上都市で全国トップクラスを記録するなど環境問題に意欲的に取り組んできた。

ここではそういった鎌倉市が4月25日に庁内職員への啓発のために実施した「脱炭素・資源循環に向けたグリーン購入の促進に関する研修」を取材した。当日は若い世代からベテランまで幅広い世代の職員が参加。環境問題に意欲的に取り組む同市の高い熱量を感じることができた。

ライフサイクル思考を通し、
自身の関係する領域で “自分ごと化”を実践

最初に横浜国立大学大学院環境情報研究院教授であり、グリーン購入ネットワーク(GPN)アドバイザーを務める松本真哉氏が「地方公共団体における環境施策の重要性と必要性―ライフサイクル思考に基づく環境対策への気づき―」と題して講義した。

講義では環境に対する諸問題を俯瞰的に捉え、製品やサービスの誕生から破棄において

地球環境に与える影響を想像し、行動するライフサイクル思考を紹介。今、全業種の企業に求められる視点が地球温暖化をはじめ、人権や多様性尊重から循環型システム構築という持続可能性への対応であり、それは自治体でも同じであることを強調した。

さらにゼロエミッションの実現とレジリエンスのある地球を構築するために重要な役割を担う都市が、GHG排出削減に関する科学目標であるSBTを設定する意義などに触れた。そして、環境負荷低減や持続可能性を「業務」という枠組みだけで考えず、自身の生活を起点としながら思考を拡大していく重要性を力説。個人、家庭、係、課、役所など自身の関係する領域単位でライフサイクル思考を行う“自分ごと化”に言及し、「ペットボトルのお茶を飲む」「バスに乗る」といった様々な場面を列挙し、日常の行為がどのように環境負荷を与えているかを受講生たちと考えた。

その中で松本氏は、たとえばバスに乗る際などにガソリンというエネルギーの利用による大気や地球温暖化への影響は容易に想像できるが、バスの製造に使われる金属や布、ガラスといった資源の利用とその破棄によって生じる廃棄物が与える環境負荷には無関心でいることを指摘。モノを使うこと自体に環境負荷が伴っていると述べ、モノがWhenいつ、Who誰が、Whereどこで、What何を、Whyなぜ、Howどうやって、作ったか?使ったか?捨てたか?という物質の5W1Hとそのライフサイクルを想像し行動を考えることが大切だと話した。最後にグリーン購入法適合品は、環境省が毎年公表するグリーン購入法の「基本方針」の判断基準を満たし、資源利用やCO2排出においても妥当な製品・サービスであることから自治体として市民などにも勧め、生活においても活用が必要な時代であることを強調。非財務要素に対する業務感覚の見直しや自分ごと化に向けた意識改革、Z世代を含めた新しい世代を意識した取り組みなどが今、求められる中、グリーン購入もそういった時代の要請の中で加速していく必要があると結んだ。

研修の様子

講演:グリーン購入ネットワーク アドバイザー 松本真哉 氏
(横浜国立大学大学院環境情報研究院教授)

グリーン購入の実践で
“一人の百歩から百人の百歩”へ

続いて「グリーン購入の概要と適合品の探し方―グリーン購入手順書の改訂―」をテーマにGPN事務局 竹内孝曜氏が講師として登壇。①グリーン購入の位置づけ・意義②グリーン購入法③環境に配慮した商品の探し方④グリーン購入の手順書の4点から説明を行った。まず竹内氏は、生活のなかで出来る環境配慮行動について、モノの使い方や捨て方の工夫により、エネルギー消費量やごみの量などを減らすことができるが、さらに選び方(買い方)を工夫することでさらに環境負荷を軽減できることを強調。価格やデザイン、品質、便利さに加えて「環境」という視点を加えたモノの選択法が、グリーン購入であると話し、その基本的な考え方となるグリーン購入基本原則に言及した。そして購入の必要性を十分に考えた上で、環境負荷の低減や社会的責任の遂行に努める企業の商品やサービスを優先して購入し、応援していくこと行為がグリーン購入となると述べた。

さらにGHGの排出削減には、使用時の省エネだけではなく、様々な脱炭素への手段の組み合わせが不可欠であると述べ、グリーン購入が“未来への投資”となると訴えた。また2001年に施行されたグリーン購入法が、国等の機関や地方公共団体による公共調達の市場のグリーン化を目指した上で民間に波及させていく目的を持ち、地方公共団体は努力義務の位置づけの元、どの品目で、どのような基準でグリーン購入を実践するかを定めた調達方針の策定や調達目標の設定、方針に基づいた調達の実施が求められていることを確認。鎌倉市ではグリーン購入法に沿った「鎌倉市グリーン購入調達方針」を策定しているが、そのため、各課の職員がグリーン購入に取り組む上で、環境配慮型商品(グリーン購入法適合品)をどのように探すか、その方法について説明。参考情報として、GPNが運営する商品等の環境情報データベース「エコ商品ねっと」では、コピー用紙や文具といった事務用品以外に、オフィス家具、OA機器、自動車等の幅広い分野のグリーン購入法適合品、エコマーク認定品等、約13,000点掲載しており、地方公共団体が多く利用していると紹介した。

また、職員が物品調達を行う際、通販カタログを参照することが多いが、「エコ商品ねっと」と連携した「各種通販カタログ」では環境配慮型商品のマークが表示されており、参考となるほか、資源エネルギー庁が運営する「省エネ型製品情報サイト」などグリーン購入法適合商品の探し方を具体的に解説。いずれも商品情報を探す負担を軽減するためには、グリーン購入法の適合品や環境ラベルを探す場合に、通販カタログではG法適合、エコマークが目印であると話した。また、最後に、庁内の調達担当者にわかりやすく適合品の探し方を説明する資料として、昨年度改訂を行った「グリーン購入手順書」について説明。

グリーン購入のさらに波及を願い、“一人の百歩から百人の百歩”を歩もうと呼びかけて講演を終えた。

研修の様子

講演:グリーン購入ネットワーク 事務局 竹内孝曜 氏