エコ・ファースト推進協議会が4月17日、都内にて2024年度通常総会を開催し、上程された5つの議案について審議等が行われた。

総会の様子

エコ・ファースト推進協議会のさらなる活性化と進化を

総会ではまず議長である株式会社島津製作所 代表取締役会長 上田 輝久氏が登壇。

2008年発足時には23社であった認定企業が、この4月には新たに28社が認定され、合計94社となったことを報告した。そして、脱炭素やカーボンニュートラルの取り組みに加え、グリーントランスフォーメーション(GX)やネィチャー(ネイチャー)ポジティブへの移行が加速する中、今回エコ・ファースト企業に認定された企業が増えたことは意義深いと所感を述べた。

また、2023年度は気候変動関連については我が国においてはGX推進法の制定による投資の促進が掲げられ、ドバイで開催されたCOP28では産業革命後の地球平均気温の上昇幅を1.5℃までに抑えるという目標達成に向けて初めて化石燃料からの脱却について合意されたことを紹介。加えて2030年までには再エネ発電容量を全世界で3倍にするなど具体的な取り組み目標も掲げられる中、資源循環についてはG7広島サミットにて世界で年間1億トン以上のプラスチックごみが海などの自然環境中に流出されているという現状を踏まえて、2040年までにプラスチックごみの流出による新たな汚染をゼロにするという目標が示されていることを伝えた。

さらに生物多様性については日本では新たな生物多様性国家戦略が閣議決定され、2030年ネィチャーポジティブの実現を目指し、人と地球の持続可能性の根拠である生物多様性や自然資本を守り、活用していくということも示されていることに言及。このような様々な環境改善の取り組みがなされる中、エコ・ファースト推進協議会の活動もさらに活性化し、進化させていくことが不可欠であることを強調し、そのために重要となる以下の3点を確認した。

1)エコ・ファースト認定企業の増加、認知度の向上──多様化する環境問題を解決していくために、より多くの企業にエコ・ファースト制度に参画していただき、新たなアイデアで環境改善活動を進めていきたい。

2)環境問題の解決に向けた先進性・独自性のある取り組みの追求──我々はこれまで様々な活動を進めてきたが、グローバルな視点で環境問題に事業として取り組んでいくことでサステナブルにつながっていくと考えている。

3)各企業による連携・協働の強化──エコ・ファースト企業に認定される皆様はそれぞれの企業で独自性のある取り組みを進めている。企業が環境問題解決のために連携し取り組むことができれば、より多くの効果をもたらすことができる。

様々な社会課題解決に貢献しながらESG価値向上に向けた連携を推進

続いて環境大臣 伊藤信太郎氏が挨拶。エコ・ファースト推進協議会の発足より、今日まで環境分野を取り巻く状況が大きく変化する中、ネィチャーポジティブや2050年温室効果ガスネットゼロ、さらにサーキュラーエコノミーへの移行という、これら3つを統合的に実現することが喫緊の課題となっていると述べた。そして、こうした新たな時代の要請に対して、その解決に向けた推進力であり、環境省のかけがえのないパートナーであるエコ・ファースト認定企業の皆様と手を携えて邁進していきたいと訴えた。

次に環境省 総合環境政策統括官 鑓水洋氏が「環境政策の最新動向」と題して講演した。ここでは地球温暖化対策計画の改定やGX推進戦略の策定や今後実施される官民投資等に触れた後に「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」の愛称であるデコ活を紹介。二酸化炭素(CO₂)を減らす(DE)脱炭素(Decarbonization)と、環境に良いエコ(Eco)を含む”デコ”と活動・生活を組み合わせた新しい言葉であるデコを効果的に推し進める活動の普及・参加を要望した。

また「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定され、二国間クレジット制度(JCM)の実施体制強化等が盛り込まれていることを報告。この改定でJCMの実施体制を強化するための規定が整備でき、地域脱炭素化促進事業制度の拡充等の措置を講じることにより、国内外で地球温暖化対策を加速するものとなると話した。

さらに30by30といった生物多様性の損失を食い止めるための生物多様性国家戦略に言及。生物多様性損失と気候危機の2つの危機への統合的対応が求められることを訴えた。そして新たな第六次環境基本計画が、基盤である自然資本を維持・回復・充実させることで現在及び将来の国民一人ひとりのWell-being、生活の質、経済厚生の向上を目指すものであることを説明。政府に加え、国民一人ひとりとの連携や地域・企業等の取り組みが不可欠となり、その中でもエコ・ファースト企業が第六次環境基本計画達成の重要なパートナーとなることを力説した。

その後、上田議長の進行による討議が行われ、2023年度の事業報告や2024年度の事業計画等の議案が審議された。ここでは引き続きエコ・ファースト企業として、環境省と認定企業との交流による相互理解の深化、社会におけるカーボンニュートラル・循環型社会・生物多様性保全に貢献する活動などを行い、エコ・ファースト制度およびエコ・ファースト企業のESG価値向上に向けた連携を推進していくことが全会一致で可決・承認された。