虐待や貧困等で苦しんできた児童養護施設の子どもたち(全国で約3 万人)は、入所中は手厚い公的支援が受けられるが、成人すると途端に自立を迫られ、頼れる人もおらず転落していくケースも多くみられる。今年4 月の改正児童福祉法施行で児童養護施設入居年齢制限は撤廃されるが、施設現場では職員やスペースの不足などで全く余力のない状況となっている。

一方で、長年人が住まずに放置される空き家は全国では7 軒に1 軒に及び、景観、防犯、地域活性化などの観点から社会課題化している。そういった中、NPO 法人・東京里山開拓団はボランティア団体として2009 年4 月の設立以来、東京周辺の荒れた山林や空き家を都内5 軒の児童養護施設の子どもたちとともに再生し、ふるさとを創り上げる活動を推進してきた。そして2024年4月、株式会社住栄都市サービス(空き家提供・中古家財提供・退所者雇用推進)、個人家主(空き家提供)、一般財団法人世田谷トラストまちづくり(空き家紹介)などの協力を得て、児童養護施設退所者が最大5 年間家賃無料で住める家「まちごろりん」を都心に2 軒オープンするなど民間ボランティアの力による総合的な退所者自立応援プロジェクトを開始することとなった。

その試みのポイントは浮いた家賃や中古家財提供で積立促進する「経済基盤づくり」から、定期会議やイベント運営を通じた「生活習慣づくり」「仲間づくり」、連携企業による「退所者雇用機会づくり」、当団体活動参加による「ふるさとづくり」まで総合的な退所者自立応援を実現できること。そして、 単なる支援ではなく退所者の自立努力を応援!児童養護施設の子どもたちも空き家の片付けや改修に参加でき、さらに民間ボランティアで運営し、コストは最低限に抑制、税金に頼らず民間寄付や自主事業で運営できるところにある。

同団体の発表したリリースでは「公的資金に依存した退所者支援の延長も真の自立には結びつきません。そこで、退所者自らも開拓者精神を発揮して自立努力しつつ、民間ボランティアが埋もれた資産を生かして自立を応援する本企画によって、みんながよりたくましくよりすこやかに生きられる『フリーシェア社会』の実現を目指します」と熱い想いを語っている。

【まちごろりん運営の仕組み】

・同団体が空き家を志ある大家から3~5 年間無料で現状のまま借り受け※税・保険は同団体負担
・同団体と連携する児童養護施設の子どもたちが一緒になって空き家の片付け、改修を推進
・児童養護施設退所者が期間限定・家賃無料で入居※家賃以外は本人負担
・同団体、児童養護施設、企業、市民が退所者の自立を応援。入居者は同団体活動に参加協力
・契約終了後、きれいに片付けて大家に返却