里山を中心に自然循環の摂理を学び、自然・地域・社会が一体化したその仕組みと目指すべき方向性を探り、持続性を失いつつある現代社会を再構築する理論と実践の学習とその確立を目的とするAEONTOWAリサーチセンター。キャンパスを飛び出して活動を展開する、それらの取り組みの一端を報告し、検証する研究・活動成果報告会が3月18日に行われた。


挨拶に立ったAEONTOWAリサーチセンター共同代表である公益財団法人 イオン環境財団理事長の岡田元也氏は、2020年9月、時代に即した環境課題の解決を目指すために同センターが設立された意義を振り返りながら、「若い皆さんが新しい発想や方法を革新し、創造し、自らの言葉を整え、先頭に立って地球環境を改善し、社会を進化させてほしい」と要望した。早稲田大学総長 田中愛治氏は、学生や研究員に加えイオンピープルや地域の人々と共に行ったフィールド活動が今回の発表に結晶されていることに触れ、社会科学部で実施されている寄付講座やグローバルエデュケーションセンター、大学院環境エネルギー研究科での講義、学生主体で開催される里山ゼミナールなど多彩な教育活動がイオンとの連携で実現していることを紹介。今後もインターシッププログラムなどがさらに積極的に行われる予定にあると述べた。

学生等の活動報告では、里山系各プロジェクト6チームが登壇。寄附講座サステナブルコミュニティ論や関連⾏事から学んだ内容、海岸清掃ボランティアに参加した感想と共にネイチャーポジティブの意義について語られた。また地域の人々とのふれあいやそこに根差した多様な価値観から学び取った事柄なども紹介。⾥⼭⽂化に見出される資源回収システムの研究や新たなバイオマス産業の可能性についても報告された。

ディスカッション 『わたしたちは里山から何を学びとるのか』では、イオン環境財団理事・元環境省事務次官である南川秀樹氏をコーディネーターに同志社大学教授、元長野県副知事・元環境省脱炭素化イノベーション研究調査室長 中島恵理氏、ジェイアール東日本企画ソーシャルビジネス・地域創生本部担当部長林聖子氏、早稲田大学上級研究員 AEONTOWAリサーチセンター副代表岡田久典氏、早稲田大学環境総合研究センター所長小野田弘士がパネリストとして登場。里山が保全されない原因や何によって里山を支える人々を応援できるか、また、どうすることが里山を守ることにつながる大きな力になるか、などが議論され、里山に関するビジネスの推進が重要性や地元の推進の事業体の必要性が強調された。

そして、里山の崩壊がその地域だけではなく、地球温暖化そのものを伝えていることになり、その危機があらためて訴えられた。またネイチャーポジティブが単なる自然の保全に留まるのではなく、多面的な機能と可能性が凝縮した里山での活動のようにカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの構築、さらに地域の持続性確保や生きがいづくりなど科学面から文化、メンタル面まで様々な取り組みが必要であることを共有できた。