2024年2月28日~3月1日に東京ビッグサイト(江東区)で、次世代の”賢い”エネルギー技術を一堂に集めたSMART ENERGY WEEK 春2024/スマートエネルギーWEEK春2024」が開催。今回は、近未来で地球にも優しく、特にモビリティーの動力源として期待が高まる「水素」に焦点を絞り、H2に懸ける国内企業の”熱量”をお伝えする。

【岩谷産業】
大阪・関西万博で就航の日本初「旅客運航するFC船」

2025年大阪・関西万博で、国内初の水素燃料電池(FC)船の旅客運航を実施予定の岩谷産業は、同船の模型を展示。FC船の名称は未定だが、船体構造は波の揺れを抑えるカタマラン(双胴船)で、全長30m、全幅8m、総トン数約120トン、定員150名、速力10ノット(時速20km弱)。

動力はFCとリチウムイオン電池(プラグイン)のハイブリッド。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業で、カーデザイナーとして著名な山本卓身氏がデザインを担当。「動くパビリオン」として、大阪都心の中之島ゲート~ユニバーサルシティポート(UCP)~夢洲(万博会場)を航行予定。

【川崎重工業】
世界初の「水素エンジン搭載型オートバイ」

川崎重工は世界初となる水素エンジン搭載型オートバイの試作車を展示。同社製「ニンジャH2SX」をベースに、水冷4ストローク並列4気筒/DOHC4バルブ・ガソリンエンジン(排気量998cc)を直噴化して「H2化」、スーパーチャージド・エンジンに仕上げている。車体後部の左右には大型の水素タンクを装着、2030年代初頭の実用化を目指す。

【本田技研工業】
新型FC車「CR-Ve:FCEV」を世界初公開

本田技研工業は新型FC車「CR-Ve:FCEV」を本展示会にて世界で初お披露目。北米・中国で販売する6代目「CR-V」のSUVパイプがベースで、国内燃料電池車(FCEV)メーカーでは初めてプラグイン機能を持たせている。

電気自動車(EV)の大きな弱点、「長時間の充電時間」「航続距離の短さ」を払拭するのが最大のウリで、燃料(H2)補給は3分で完了、EV走行による航続距離は60kmだが、FC併用で600kmまで大幅アップするという。今年の夏に国内、今年中にアメリカでの発売を予定。

写真(右) ホンダの「CR-Ve:FCEV」にも搭載される同社製FCモジュール(プロトタイプ)。
外販も積極的に行い量産効果による価格低減・信頼性向上を狙う。
重量206㎏、最大出力80kw、最高効率58%、最低起動温度∸30℃

【トヨタ自動車/千代田化工建設】
トヨタの水電解モジュール使い 巨大H2製造工場実現

トヨタ自動車が開発した高性能の水電解セル・スタックと、大規模プラントの設計・建設で定評のある千代田化工建設がタッグを組み、共同開発した「大規模水電解システム」の模型を展示。

トヨタが開発した水電解スタックは、世界最小規模のサイズながらH2の製造効率がトップクラス(水素製造能力400kW/時)。この利点を活かし、同スタックを十数個並べ5MW級を原単位(モジュール。2.5m×6m、水素製造能力約100㎏/時)としたシステムを開発、これを標準パッケージとして量産化し価格低減するのがねらい。

2025年にトヨタ本社工場の水素パーク内に同システムを設置、実証試験を兼ねながら、将来的に10MW級まで出力をアップする模様。

写真右)トヨタ製の高性能水電解スタック(400kW)

【JR西日本新幹線テクノス】
業界最小・最軽量のポータブルなFC発電機

JR西日本グループで新幹線の車両整備や保線などを手掛けるJR西日本新幹線テクノスは、深夜における保線作業の騒音低減の一環として、ボルト緊解作業装置に搭載されている従来型のガソリン・エンジンを超小型FC発電機とモーターの組み合わせに変更。(特許出願中)

現在より小型で洗練されたデザインにし、キャリー・バッグのように運搬が楽な外販用商品を開発中(重量24.8kg、最大出力1400W、平均出力約350W)。

写真右)より小型で運搬に便利な外販用も開発中。

(取材・文 深川孝行)