学びとネットワーキングのためのコミュニティ・イベント「サステナブル・ブランド国際会議2024東京・丸の内(以下、SB’24 東京・丸の内)」 が『REGENERATING LOCAL──ここから始める。未来をつくる。』をテーマに2月21日(水)、22日(木)に開催された。

SB’24 東京・丸の内の特徴は、サステナビリティのリーダーが集うアジア最大級のコミュニティ・イベントのスケールにふさわしく多彩なセッションプログラムが両日に実施されるところにある。ここではその中の一つである「ビジネスと人権 転換期の新たな挑戦」にクローズアップした。

【登壇者】
ファシリテーター
矢守 亜夕美氏(株式会社オウルズ コンサルティンググループ プリンシパル)
パネリスト
菊地 明重氏(株式会社リクルート サステナビリティ推進室室長)
向井 芳昌氏(日本たばこ産業株式会社 サステナビリティマネジメント部長)
吉川 美奈子(株式会社アシックス エグゼクティブアドバイザー)


ファシリテーターの矢守氏は、2023年を「人権」や「人権デューディリジェンス」という言葉が多く用いられた一年だったと振り返りながら、すべての企業にとって人権は他人事ではないテーマとなったことを強調。企業活動の大前提である人権デューディリジェンスがその中身、使い方や課題解決のためにどのような努力・工夫をしているか、が本質的に問われる時代となり、自社が人権侵害に関与しないという守りから社会に存在する人権問題を積極的に解決していく攻めの人権対応への転換期にあることを確認する中でセッションは幕を開けた

アシックスの吉川氏は社内外への周知を徹底する人権方針を上位概念とする同社のデューディリジェンスを解説。サプライヤーとのビジネス関係の見直しまで含む課題への改善方法を具体的に説明した後に工場閉鎖に伴う人権への影響に配慮した取り組み事例を紹介した。そして、攻めの人権対応の事例として人権国際NPO「Right To Play」と協同し、同社が難民の子どもたちにスポーツプログラムを提供する同社の活動を伝えた。

日本たばこ産業の向井氏は、同社のPurpose「心の豊かさを、もっと」と25項目からなるJTGroup Sustainability Targetsに触れたあとwebにて開示しているJTグループ人権方針を解説。指導原則に則り、リスクベースの基準を用い、人権リスクが高い国を優先し、評価をしていることなどを語り、教育機会の提供や農家の生活支援など背景にある課題に光を当てた葉たばこ生産地における児童労働撲滅の取り組みについて語った。

リクルートの菊地氏は、その取り組み事例の一つとしてパートナー向けの取り組み施策として「リクルート行動規範」を共有。理解にとどまらずパートナーの各社で取り組めるよう動画や人権リスクチェックツールの配布活動を説明した。さらにクライアントに対する人権啓発研修を行っていると述べた。またホットペーパービューティアカデミーによる訪問美容支援やSUUMOによる啓発活動である百人百通りの住まい探し100mo!などの事例をピックアップした。

続いてファシリテーターの矢守氏は製造業であるアシックスの吉川氏と日本たばこ産業の向井氏にバリューチェーンにおける人権対応の実態把握ではどのような悩みがあるかを質問。吉川氏は自社の影響力が少なく、しかしリスクの高いところは対話を重視し、意識を変えることの大切さを伝えた。向井氏は人権対応が自社一社だけではできないところもあり、同業者との横連携の必要性を語った。

次にファシリテーターの矢守氏はリクルートの菊地氏にものづくり企業でない立場から人権対応にどのようなハードルがあるか、を尋ねた。菊地氏は、人権問題が他人ごとと捉え、自分ごと化できないことが壁であることを強調。そのために抽象論ではなく、自分と関係あることを気づかせる事例を収集し、伝えることで気づきを与えられると話した。

最後に矢守氏は、企業は本来、「人や社会のためにある」ことを強調。企業の使命に戻ることが、得意領域である本業を生かしながら、社内意識の統一をどう工夫していくか、がビジネスと人権で重要になると話し、セッションを結んだ。