2月14日第2回エコ・ファーストセミナーがオンラインにて行われた。テーマは第1回に引き続き、「環境に関する企業の情報開示」。パネルディスカッション形式で環境担当者の日頃の苦労や対応策などを共有し、同様に抱えている問題点や解決事例等を語り合った。

写真左より(株)エフピコ 若林大介氏、サステナビリティ会計事務所 福島隆史氏、
シチズン時計(株)豊田剛士氏、(株)セブン&アイ・ホールディングス 笠井彩氏

パネラーとして登壇したのは株式会社エフピコ サステナビリティ推進室チーフマネージャー 若林大介 氏、シチズン時計株式会社 環境マネジメント室 豊田剛士 氏、株式会社セブン&アイ・ホールディングス ESG推進本部 サステナビリティ推進部 笠井彩 氏。ファシリテーターとして前回と同じく株式会社 サステナビリティ会計事務所 代表取締役 福島隆史 氏が進行した。

まず3人のパネラーから各社の取り組みがプレゼンテーションされた。エフピコの若林氏からは、同社がプラスチック製簡易食品容器の製造・販売を行いながら、現在、10,500店舗で食品トレーのリサイクル活動に取り組み、発砲スチロール・透明容器の回収量は約463億枚、環境配慮型容器エコトレーのCO2排出量削減効果が30%に及ぶことを紹介。トレーからトレーという水平リサイクルを30年間続けながら、社会実装したクローズドリサイクルなどについてどのように情報開示するかが課題となると語った。また、CDPの評価は第三者からの検証を加えることで2023年はAリストを獲得、今後は情報開示から本業へのフィードバックを図りたいと述べた。

シチズン時計の豊田氏は、同社の事業が時計、工作機械、部品の生産、電子機器事業の4つの柱からなることを解説。上位概念である「シチズングループ環境ビジョン2050」に基づき、「シチズングループ環境目標2030」に則って9つのKPIを掲げ、環境活動を展開していると説明した。情報については、サステナビリティサイトを設けて実施。GRIスタンダードに準拠した形でESGデータを開示し、TCFDの義務化で質と量の向上を目指し、TNFDの開示時期と開示内容について検討段階に入っていると話した。また温室効果ガス排出量の検証については昨年SBTの認定を受け、Scope1、2、3の第三者検証を受けるなどの対応を実施していることを伝えた。

セブン&アイ・ホールディングスの笠井 氏はグループの海外比率が営業収益において74.9%、営業利益では57.2%を占めている現状を報告。グローバル企業として情報開示においても海外を含めたことをする段階になったと述べた後に同社グループのサステナビリティ基本方針を紹介。ステークホルダーとの対話を通じて、特定した7つの重点課題の中の「地球環境に配慮し、脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を実現する」という重点課題3にふれた。そして、FTSEやMSIC、DJSIやSustainalytics世界の各ESG評価機関のスコアが向上するなど情報開示を推進することで評価が向上していると語った。

3社のプレゼンテーション後に行われたパネルディスカッションでは、開示物の作成の上で社内調整時や社内の意識向上での苦労などについて意見交換した。セブンアンドホールディングスの笠井氏は、売り上げや利益を重視する小売業においては理解促進のために機関投資家であるGPIFの存在を活用。情報開示の質によって投資額に影響が出ることを訴えることで社内意識の向上を図っていると話した。

シチズンの豊田氏は情報公開に関する取り組みによって企業価値が上がることを強調。温室効果ガスの排出量をCO2換算して「見える化」できた女性の腕時計の開発と販売の事例を紹介した。

エフピコの若林氏はプラスチック容器を扱う企業という立場からリサイクルしたトレーでCO2の削減効果を上げて開示しても、それは店頭での数値となることを説明。企業活動そのものがCO2削減にチャレンジしなければ評価されない厳しい現状を述べた。

情報開示に関する業務は短期的な利益に直結せず、社内で理解や協力が得にくい上に、業務内容が複雑で量も膨大となる。今回のセミナーは日頃の苦労や対応策などを共有でき、様々な示唆を受けられる機会となったのではないだろうか。