11月30日~12月12日にアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで行われた国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)。同会議に参加した公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)の研究員からの最新の情報を紹介する「COP28速報セミナー」が12月9日開催された。

2024年以降の気候変動対策の道筋を示す

今回のセミナーではCOP28の総評やグローバル・ストックテイク(GST)、気候変動緩和や適応の成果等について現地に参加した研究員から報告が行われた。

最初にプレゼンテーションでは、今回のCOP28の位置づけについて言及。2年前のCOP26ではNDCの見直しや強化、石炭や化石燃料補助金、メタンへの対応が加速され、削減目標・行動の強化はすべての国に求められ続ける状況にありながら、途上国に対する「損失と損害」への資金の先送りや適応の取り組みや支援は不十分だったこと。しかし、昨年のCOP27の場では「損失と損害」の基金の創設で歴々的合意が得られる中、1.5℃目標に向けた取り組み強化については大きな前進が得られなかった中で迎えたのが今回のCOP28であったと解説した。そして、COP28では世界全体の進捗状況を評価する仕組みであるGSTでパリ協定以降の取り組みの総括を行い、前回進まなかった1.5℃目標に向けての強化、さらの6条メカニズムの本格始動や「損失と損害」基金を運用、適応の世界目標の実現に向けた枠組みへの合意、先進国1000億ドル目標の達成などが焦点となったと話した。

GSTに関する報告では、第一回GSTは2021年のCOP21 から開始され、2022年から2023年の前半においては「技術的評価」が実施されたことを説明。今回はこれまでの評価結果をもとに交渉が行われ、21ページ・196からなるパラグラフの成果文書が採択されたことを報告した。そして、その文書が進捗評価の結果に加えて、それらを受けて様々な主体が取るべき行動や期待される役割も含まれていることを伝えながら、2024年以降の気候変動対策の道筋が示されたと述べた。

非政府主体と各国政府との協働により取り組みを加速

「緩和」の進捗については、これまで継続されてきた技術的評価の中でも議論されてきた内容に改めて合意が行われ、パリ協定の実施に向けて進捗はあるものの目標の達成には程遠い状況にあり、1.5℃目標の達成に向けた緊急行動と支援の必要性が強調された。

また、こうしたギャップを埋める対策と機会としてエネルギー部門における新たな合意や6条炭素市場メカニズムの実施加速、生物多様性や生態系の保全、ライフスタイルや消費パターンを持続可能なものにしていくことなどを列挙した。

今後こうした対策や機会を実際に取り組んでいく必要があり、最も重要な役割を果たすものが各国政府であり、2024年以降、各国政府には気候行動の強化とNDCの更新、強化が求められると述べた。

気候行動の強化では、特定された取り得る対策や機会を自国の気候変動対策や他国支援の強化に取り入れることが期待される。またNDCについては、2024年11月から2025年3月に次期提出と1.5℃目標との整合性の確保が求められ、さらに全ての種類の温室効果ガス、セクターを網羅した経済全体をカバーする排出削減目標を提示することが奨励されている。こうした各国の取り組みを後押しするのが気候変動枠組条約(UNFCCC)を通じたフォローアップであり、既存の仕組みや新たに立ち上がった様々なプログラムを活用し、GSTの成果を効果的かつ効率的にフォローしていくことが期待され、各国政府のNDC策定の後押しになると話した。

また重要な役割を果たす非政府によるフォローアップについても説明。今回特に強調したい点としてGSTの決定文書の中で非政府主体の重要な役割と積極的な関与が認識された。2024年以降、非政府主体には自主的な取り組みにおいて第1回GSTの成果を考慮すること、各国政府との協働により取り組みを加速することなどの奨励事項が含まれ、2024年以降はその成果を活用して、気候変動対策を進めていく必要性を強調。GSTの成果は今後の気候行動の指針になり、その具体的な活用法については実施しながら検討していく必要があると述べた。

2030年までに再エネ容量3倍・省エネ改善率2倍に向けた努力を

COP28の緩和に対する成果としては190超の締約国による交渉・譲歩の結果、2050年ネットゼロの科学的根拠、化石燃料からの脱却、2030年までに再エネ容量3倍・省エネ改善率2倍に向けた努力を加速する等に合意が見られ1.5℃目標の達成へ一縷の望みをつないだことが伝えられた。また化石燃料や再エネ、省エネ、原子力や森林、食糧等、数多くの分野別の取り組みや誓約が発表されたことが紹介された。

さらにネットゼロに向けた国際協力の枠組みであるパリ協定6条については今回、方法論等のガイダンスが議論され、次回COP29では議論が継続されながら本格稼働が期待されると述べた。気候変動への適応に関するCOP28の成果の報告では「グラスゴー・シャルムエルシェイク作業計画」に言及。パリ協定ですでに記載されていた「適応に関する世界全体の目標(GGA)」が今回のCOP28で新たな枠組みを採択したと述べた。そこでは水不足から健康への影響、文化遺産の保護まで7つのテーマ別目標とモニタリングからリスク評価、計画、実施と4つの適応サイクルに沿った目標が設定されていること等が報告された。