なんとも、不名誉なことである。実に恥ずかしい!!そして、事態は、深刻である。実は、困ったことに、いまや、日本は、世界中から尊敬もされず信頼もされない国に成り下がってしまいつつある。

先日12月3日、アラブ首長国連邦のドバイで開催されている第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(以下、COP28と略)にて、日本が「化石賞(Fossil of the Day)」を受賞した。

今月12月1日のCOP28会場での岸田首相のスピーチを受け、日本政府が脱炭素化への貢献と銘打って火力発電の水素・アンモニア混焼を国内外で推進していることが「グリーン・ウォッシュ(greenwashing)」であるとして不名誉な「化石賞」を受賞した。これで4回連続の不名誉な「化石賞」受賞である。

「グリーン・ウォッシュ」とは、うわべだけ環境保護に熱心にみせることを意味する。「グリーン(=環境に配慮した)」と「ホワイト・ウォッシング(=ごまかす、うわべを取り繕う)」を合わせた造語である[1]

「化石賞」は、気候変動交渉・対策の足を引っ張った国に毎日贈られるもので、その国に対する批判と改善への期待の意味が込められている。化石賞を主催するClimate Action Network(CAN:気候行動ネットワーク)は、130カ国の1800以上の団体からなる世界最大の気候変動NGOネットワークであり、世界各地で活動するNGOが受賞者を決定する。

昨年のCOP27にても、世界で最大の化石燃料への公的支援を理由に「化石賞」を受賞したのに飽き足らず、日本は再び「化石賞」を受賞した。そして今年、岸田首相は日本政府の火力発電水素・アンモニア混焼戦略が「世界の脱炭素化に貢献する」と宣言し、環境にやさしいとアピールした。しかし、市民社会は、日本政府の試みが日本やアジアの石炭・ガスを延命しようとしていることを見抜いていた。化石燃料への水素・アンモニア混焼はグリーン・ウォッシュでしかない。現に、今年3月に公表された研究論文「Banking on Transition Technologies: Beware of Lock-In Traps」(March 2, 2023 ;Asia Research and Engagement)では、日本政府が提唱している火力発電水素・アンモニア混焼戦略が脱炭素戦略を妨げる危険性があると警告を発している[2]

あまりに世界の潮流に鈍感で、解像度が低劣であることの証左でもあるとも揶揄されているこの日本政府の打ち出した愚策は、火力発電所を将来に渡って稼働させ続け、実質的な排出削減にはつながらないどころか、日本のエネルギーの脱炭素化と化石燃料フェーズアウトの可能性を潰してしまう。その事態の深刻さの自覚がないのか。しかし、気候危機が終盤戦(endgame)に入りつつある中で、現下の日本政府の気候危機への方針に対して、かように世界の市民社会が厳しい評価を下していることの重大さに気付いている日本国民は、まだ多くはない。グテーレス国連事務総長をはじめCOP参加国の首脳の多くは、2015年に採択された「パリ協定」が目指す「世界の平均気温上昇を1.5℃以下に抑える」という目標を達成するため、石炭火力の廃止を推し進めるべきだと強く主張している。この真摯なメッセージを、日本政府が真正面から受け止めているとは、思えない。



[1] Greenpeace(2023)“Greenwash: what it is and how not to fall for it”
[2] Asia Research and Engagement(2023)” Banking on Transition Technologies: Beware of Lock-In Traps”

ほぼすべての先進諸国が、期限を定めて石炭火力発電廃止宣言をしている中で、石炭火力発電廃止を、期限を定めて宣言していない国は、日本だけである。これは、実に恥ずべきことである。2035年までに温室効果ガス60%削減達成が不可欠なこのご時世で、いまだに、石炭火力維持に汲々と拘泥していることは、狂気の沙汰である。こうした政治理念の不在、解像度の低さ、行動力と責任感の欠落に対して、世界中から厳しい軽蔑の視線を集めているという深刻な事実を、日本の為政者は、自覚していないのであろうか。

この10年間に行う対策の成否如何は、現在から数千年先まで影響を与えると言われている。この不作為のままでは、温暖化が加速し、海面が2150年までに5mも上昇するという科学者の研究報告も発表されている[3]。東京も大阪も、鎌倉も、その市街地の大半が水没することが、現実になる。すべて自国に降りかかる災いなのである。そして、海面水位上昇に加え、干ばつ等様々な影響で、世界で20億人以上もの人々が住む場所を失う。

そんな中で、とりわけ率先して脱炭素化が求められる立場にある先進国の一つである日本が、こともあろうか、時代に逆行して、石炭火力の必要性を主張し続けている。地獄への悪魔の道をアクセル全開で踏み続けているのである。日本が石炭火力に固執すること自体は、こういった事態を加速する加害行為に他ならない。はたして、こういった加害意識の自覚が、現政権の為政者の心中にあるであろうか。あるいは、それも感じないほど鈍感なのか。

要は、日本政府にとっては、気候危機の深刻なダメージを被っているグローバルサウスの悲劇や、7世代先の人類の持続可能で安寧な幸福のことよりも、目下政権を支持している経済界の意向の方が最優先なのであろうか。目先の選挙で勝てれば、現政権さえ当面維持できさえすれば、自己保身さえ担保さえできれば、世界中の人々が飢えに苦しみ、住む場を追われ、子孫が気候危機のために生存権さえも失うことは、そんなことは、どうなっても、どうでもよいことなのであろうか。不都合な真実から視線を逸らし、近視眼的な視野狭窄に陥ってしまい、目先の利得優先で、理念なんて放棄してしまっていることに、忸怩たる思いはないのか。良心の呵責はないのであろうか。

そんなことでは、当然世界から厳しい目を向けられることとなっていることは自明である。このままでは、これからも、「化石賞」の常連国として不名誉な歴史を更新してゆくことになるであろう[4]。これでは、世界から尊敬を集められる国になれないのは当然である。世界は、既に、日本政府の悍ましいほどの空虚な欺瞞と姑息さを、そして、その精神の貧困を、しかと見透かしてしまっているのである。

日本の為政者は、こうした恥ずべき事態が意味していることの深刻さをしっかり自覚すべきであろう。昨今、意図的にメディアで喧伝されている、白々しい「日本は素晴らしい」キャンペーンが、なんとも空虚に聴こえる。

日本が、「グリーン・ウォッシュ」という姑息な自己欺瞞から卒業して、世界中の人びとから尊敬される真の環境先進国に脱皮するのは、いつなのだろうか。

一縷の希望は、一部の志高い政治家や民間企業がすでに脱炭素社会構築に向けて着実に動き出していることである。日本にとっても世界にとっても、明るい未来への扉は、すぐ目の前にあるのである。その扉の鍵は開いている。



[3] World Meteorological Organization(2023)”Global Sea-Level Rise & Implications”
[4] むろん、日本でも、「グリーン・ウォッシュ」とは一線を画して、脱炭素社会構築に向け真摯な取り組みを続けてきた多くの志ある政治家や民間企業の自発的な行動があることは、彼らの名誉のためにも、あえて、ここで明確に付記しておきたい。この粘り強い行動に対しては敬意を表し高く評価したい。そこに一縷の希望があるとも思っている。Japan Climate Leaders’ Partnership (2023)” Statement on the Transition to Zero Emission Commercial Vehicles” (https://japan-clp.jp/en)