近年の樹脂凸版印刷から環境負荷の少ないからフレキソ印刷への移行やモノマテリアル化が進む印刷業界。そして気象変動により、雨に濡れる状況が増える中、「雨の日もおしゃれをして、快適に出かけたい」という消費者の要望が高まるファッションの分野。東レ株式会社(以下「東レ」)がこの2つの市場にそのコア技術を駆使することで新しい価値を創造する新素材を開発した。

業界初の完全水現像フレキソ版「RESOLUCIA™」を開発
-樹脂凸版印刷市場で世界No.1シェア*¹を誇るTORELIEF™の技術を応用展開-

東レは、樹脂凸版印刷市場において、長きにわたり高精細な印刷品質と高い耐久性を両立したTORELIEF™⁽³⁾を世界の顧客に提供してきた。そして、近年の樹脂凸版印刷からフレキソ印刷への移行を受け、これまで樹脂凸版印刷市場で世界No.1シェア*¹を築き上げてきたTORELIEF™の技術を展開し、このたびラベル用途向けのフレキソ版RESOLUCIA™を開発した。

新ブランドRESOLUCIA™は、高精細(Resolution)+鮮明(Lucid)+先端を行く(Advance)を組み合わせており、フレキソ版で色彩鮮やかな印刷を実現したいという思いから誕生。

RESOLUCIA™は、東レの技術革新によって200線レベル⁽⁴⁾の高精細に対応したことで、画像再現性が向上しただけでなく、完全水現像により、製版時間が約24分と業界で一般的な溶剤現像方式と比べ約70%以上*¹短縮され、高い生産効率も実現した。また、TORELIEF™をはじめとした樹脂凸版を既に利用している場合は、RESOLUCIA™の導入にあたり新規の製版設備投資が原則不要であることもメリットとなっている。

フレキソ印刷は、従来の用途であるダンボールなどに加え、近年ではラベルや軟包装などの包装材料にも使用が拡大。また、将来的に包装材料のリサイクル志向が強まることにともない、パッケージを単一素材から構成することでリサイクル適性を向上させる包装基材のモノマテリアル化が進むと予想されることから、東レではモノマテリアル軟包装印刷にRESOLUCIA™を適用するための研究も進めている。

なお、RESOLUCIA™は、ラベル業界の総合展示会Labelexpo Asia 2023⁽⁵⁾(2023年12月5日~8日 上海)を皮切りに、今後国内外の印刷関連展示会でのプロモーション活動を展開していく予定だ。

左)RESOLUCIA™刷版   右)RESOLUCIA™印刷物



*1:自社調べ

<用語・説明>

1)完全水現像方式
印刷版の現像*に有機溶剤や添加剤を使わず、常温の水道水のみを使用する方式のこと。
*現像:非画像部の樹脂を除去して画像を目に見えるように形成すること

2)フレキソ印刷
版の素材に樹脂やゴムを使用した凸版印刷方式の一種。表面が平らではないダンボールなどの印刷に多く利用されている。
色調整等の操作が比較的容易なことから、近年ではラベルや軟包装などの包装材料にも使用されている。

3)TORELIEF™
画像再現性の高さと厚み・硬度の豊富なラインナップ、多様な用途を特徴とする世界No.1シェアの感光性樹脂凸版。

4)200線レベル
「線数」とは、1インチあたりの網点(細かい点)の数のことで、印刷物のきめ細かさを示す尺度。例えば175線の場合、1インチ当たり175個の網点で画像が表現される。線数が高い(=数値が大きい)ほど、それぞれの網点の大きさは小さくなり、よりきめ細かい表現が可能。一般的なカラー印刷物では175線が使用されることが多く、200線ではより高精細な印刷が可能。

5)Labelexpo Asia
アジアエリア最大のラベル・パッケージ印刷技術展示会。2023年に20周年を迎える。
Labelexpo Asia 2023は2023年12月5日から8日まで上海新国際博覧センター(SNIEC)にて開催。

優れた水滴除去性をPFASフリーで実現した撥水ストレッチテキスタイル
「DEWEIGHT ™(デューエイト)」を開発し、“雨の日もおしゃれに快適”を実現

東レは、優れた水滴除去性(*)をPFASフリー(フッ素を使用しない)で実現した撥水ストレッチテキスタイル「DEWEIGHT ™(デューエイト)」を開発。2025年春夏シーズン向けからメンズ・レディス向けにアウターからボトムスまでの展開を予定しており、2025年度 20万m、2027年度50万mの販売を目指す。

「DEWEIGHT ™」は、2種類のスパイラル構造を有する原糸からなるマルチラフネス構造(特殊な凹凸構造)により、テキスタイル表面を水滴が転がるように滑落する優れた撥水性と、肌離れの良いさらっとした心地よい着心地を実現する。加えて、原糸のスパイラル構造により、適度なストレッチ性を有すると共に、テキスタイル表面の微細な凹凸が天然素材のようなナチュラル感を表現する。

今回開発した新素材に用いたのは、バイオミメティクス(生物模倣)の考え方。蓮の葉や蝶の翅などに代表される撥水性の高い天然物の表面には、サイズの大きい凹凸の上にさらに微細な凹凸が形成されたマルチラフネス構造が形成されており、この表面に載った水滴の下には複雑な空気の層が生まれ、水滴がコロコロと転がる、優れた水滴除去性を発現する。

東レは、この自然界に存在する撥水性に優れた天然素材の構造を参考に、 これをテキスタイル表面に形成させるべく、NANODESIGN®によって繊維断面を精密に制御した新しい原糸と、形態の異なる2種類のスパイラル構造を発現させる特殊な高次加工技術によって、天然素材のようなマルチラフネス構造を実現した。

この「DEWEIGHT ™」が持つマルチラフネス構造は、体に蓄積される有害性が指摘され、規制が強化されるフッ素系(PFAS)の撥水剤での加工を一切行うことなく、PFASフリーの環境配慮型撥水加工で優れた撥水性を発揮することができる。

世界的な気象変動により、線状降水帯やゲリラ豪雨が発生する頻度が増え、外出先で激しい雨にさらされ、傘を差している場合でも腕や肩が濡れることや、濡れた路面からの水ハネによって不快を感じるシーンが増えている。

今回開発した「DEWEIGHT ™」は、「雨の日もおしゃれをして、快適に出かけたい」といった消費者の要望に応えるべく開発した素材であり、日常シーンで活躍するタウンユースで幅広く展開していく。今後は、雨に長時間さらされるなどの過酷なシーンにも対応する防水・防風機能を備えた防水透湿素材のラインナップも取り揃えることで、人々のライフスタイルの多様化に応じていく。

(*)水滴除去性・・・生地構造により、表面についた水滴が滑らかに転がる優れた撥水性能