2023年2023年10月17日~20日 に幕張メッセ(千葉市花美浜区)で、次世代を見越した最先端技術を競う「CEATEC2023」が開催。今回は「CEATEC Award」を獲得した企業中で注目の企業・技術をお伝えする。
【総務大臣賞】 東芝
空間セキュリティマネジメントソリューション
東芝グループは自衛隊向けの各種レーダーを手掛けており、そのノウハウの蓄積を基盤にした車載ミリ波レーダーICの独自統合技術と独自走査技術を応用、衣服に隠された危険物の可視化と検知を1秒以下で行う、「ウォークスルー」検査装置を開発。
【経済産業大臣賞】 エレファンテック
金属インクジェット印刷技術を用いた環境負荷低減PCB
電子回路基板の量産に不可欠な金属インクジェット印刷で、既存製法(サブトラクティブ法)に比べ、地球に優しい「ピュアアディティブ法」を開発。銅使用70%、CO2排出量75%削減、水使用量95%をそれぞれ削減。
【デジタル大臣賞】ザクティ
世界最小最軽量級のカメラが『働く』を変える。
リアルタイム映像DXソリューション”Xacti LIVE(ザクティライブ)”
ヘルメット非着用時でも装着できるカメラへのニーズに対応、従来のウェアラブル・カメラ・モデルに比べ、容積で1/7、重量は30g以下で1/3に小型軽量化。通信状況に応じて最適な画質に自動調整し、「カクカク」といったデジタルにつきものの画像の乱れを抑えた配信も実現。
【アドバンストテクノロジ部門 グランプリ】 京セラ
高品質なGaN系微小光源を作製するためのmicro-LED/micro-レーザー用独自基板と新工法
製造が極めて難しくコスト高で普及にはまだかなりに時間が必要と考えられている微小光源(micro-LED)専用の独自基板(EGOS)と、その基板を用いて高品質デバイスを、低コストで作製できる新工法。本基板の超低欠陥領域から作製されたmicro-LEDを340個配線基板に一括実装してアレイを作製。作製が極端に難しいレーザーも本基板で作製して、世界初のSi基板上で100µm長短共振器レーザーを室温連続発振させた。
【アドバンストテクノロジ部門 準グランプリ】 マクタアメニティ
『おいしさを見える化』が創る未来の食卓
野菜・果物・茶葉などのスマホ等での撮影画像からのAI解析による食味判定と情報化
スマホなどで撮影した画像を使って、野菜の「おいしさ」を瞬時に解析・数値化し「見える化」。クラウド上のAIで解析する点もミソで、通信環境さえあれば地球上のどんな場所でも利用できる。つまり従来のように専門の機器が不要で、可視光での解析も世界初。従来技術と比べてコストを1/100程度まで圧縮することも実現可能といい、現在トマトやキュウリ、キャベツ、レタス、ニンジンなど一般的な野菜に加え、ブドウ、サクランボ、ミカン、イチゴといった果物など啓17品目の生鮮農産物に対応、現在一次加工した茶葉の分析などにも挑む。
【デバイス部門 準グランプリ】 パナソニック グループ
ガラス建材一体型 ペロブスカイト太陽電池
次世代ソーラーと期待される「ペロブスカイト太陽電池」は日本で開発され、次世代ソーラーの本命と期待されるが、同社は「ガラス建材一体型」で透過度の制御も可能とし、意匠性(外観・デザイン)が原因でシリコン太陽電池が採用しにくい窓・壁 などでも発電が可能とし、大幅需要が期待される。同社のペロブスカイト太陽電池は実用サイズ(>800cm2)で世界最高レベルの発電効率(17.9%)を叩き出す。
【コ・クリエイション部門 グランプリ】 大林組
建設段階のデジタルツイン基盤CONNECTIA活用による現場DX実現
「CONNECTIA」は、建設現場の元請けや協力会社の職長を対象に、施工計画業務の効率化や、視覚的な施工シミュレーション、さらにその結果の共有ができる、土木・建築業界における三次元(3D)モデルを基としたデザイン・コラボレーション・ツール。従来の BIM/CIM(建物情報/建設情報モデル化)ソフトや3Dモデル専用ソフトと違う点は、普段3Dツールを頻繁に使わない人でも、ゲーム感覚で施工計画策定や情報共有を直感的に行える点。
施工の世界では「段取り八分」と言われ、事前準備・想定がスムーズで安全な仕事に直結すると言われており、これをシステム上で再現、何度もシミュレーションすることで、髙精度の計画や安全対策に直結すると期待される。少子高齢化で人材不足が深刻な建設業界で、技術伝承や情報共有が難しくなる中、大いに注目されている。
【コ・クリエイション部門 準グランプリ】 LIXIL
いっしょに考えます、トイレのこと『A-SPEC』
パブリック・トイレ空間を自動設計するクラウド・サービスで、便利なトイレ空間を、いつでも、どこでも、誰でも簡単に設計することが可能。空間計画にまつわる難解なルールや配慮事項を考慮した独自のAIが、条件に合わせて空間レイアウトを自動設計。また、自動設計された複数のプランを比較、確認できる仕組みを提供する。「水回り」で特別な技術が必須で、しかも標準化が難しく手作業が多いトイレ空間のレイアウト、デザインなどの設計業務でも、高齢化による人手不足と熟練技術者の引退による技術伝承の危機が深刻化しており、これらを解決する提案として期待されている。
【スタートアップ部門 グランプリ】 メトロウェザー
エアモビリティー社会を支える小型高性能ポータブルドップラー・ライダー
ドローン、エアモビリティーの普及が急速に進む中、地表近くの「風」の状況をリアルタイム、かつ低コストで把握する技術が必須となっている。同社の技術は、大気中に漂う微粒子の微細な動きを、最大十数km先までの風向・風速を測定する高性能ドップラー・ライダー(光検出・計測)を開発。赤外線を用いて風向、風速をリアルタイムに算出可能で、最大距離15km、最大高度2kmまでの測定が可能で、ノイズの中から信号を取り出す同社のコア技術がキモ。現在、大阪エリアでドップラー・ライダーネットワークの構築を行なっており、大阪万博会場上空と周辺の風況をリアルタイム計測、可視化している。
【スタートアップ部門 準グランプリ】 TopoLogic
TL-SENSING™ ~人肌や吐息さえも高速検知。
『熱』を可視化して異常現象を0.01秒キャッチ~
新素材、「トポロジカル」物質の熱流束センサーで、微細な熱を0.01秒という超高速で瞬時に検知。既存センサーの数百倍高い熱伝導率、1/100の薄膜構造で、高い形状自由度も誇る。バッテリーやパワー半導体部品の異常検出・故障予知、反応触媒・光吸収膜を組み合わせた化学センサー、ガス・センサー、工場・生産現場の熱マネジメント、人体モニタリングなどでの使用が期待されている。特に従来の同種のセンサーに比べ、コストが数千分の1に抑えられる点がミソで、構造が単純で信頼性・製造性にも優れることから、スマートフォンやノートPCの排熱経路設計や冷却構造設計などへの活用はもちろん、物流業界におけるトレーサビリティでの応用も期待される。
【グローバル部門 グランプリ】 R2C2 Limited(香港)
ARC SYSTEM
R2C2プラットフォームは、あらゆるロボットに装着可能な、汎用性の高いユニバーサル・ロボット協調プラットフォームで、異なるメーカー同士のロボットで形成されたシステムであっても、自動化された検査やパトロール任務を監視・制御できる。ロボットは世界的に加速度的な普及を見せるが、反面「単能機」のきらいがあり、目的に応じたロボットがそれぞれ単独でしか運用できない、または複数メーカー製品のインテグレートが困難という課題に直面。同社の知能ロボット統合システム「R2C2 ARC (AI-Robot-Collaboration)」と組み合わせることで、さまざまな種類のロボットを共通プラットフォームで制御することが可能でき、人手不足や事故などの問題を解決することが期待される。
【グローバル部門 準グランプリ】 Cardiomo(ウクライナ)
カーディオモ ~遠隔での心臓モニタリングを実現するAIヘルスケアソリューションの開発~
遠隔で患者のモニタリングと診断を行うための、AIベースのウェアラブル・ソリューションで、病院外でのスマートで継続的、リアルタイムかつコスト効率の高いモニタリングが可能。ウェアラブル・パッチとクラウド・ベースの分析プラットフォームで構成、医療従事者がほとんど関与することなく、不整脈の早期発見を行う。またこのソリューションにより、コネクテッド・ケアモデルを通じて心臓合併症を予防、入院患者の削減で、医療コストの削減や、医療施設の重要なリソースを、救急医療や高度医療に振り向けられるというメリットが期待できる。
(取材・文 深川孝行)