企業側より事例を発表、消費者とのコミュニケーションの在り方などを議論
8月8日(火)、日本LCA学会 企画委員会、グリーン購入ネットワーク(GPN)、LCA日本フォーラムの共催セミナー「環境ラベル タイプⅡラベルの課題と未来 ―自己宣言型の情報開示の可能性―」がオンラインで開催され、参加者は280名を超えた。
製品やサービスの環境配慮事項を消費者に伝える手段として用いられる様々な環境ラベル。それは商品やサービスがどのように環境負荷低減に資するかを購入者が知ることのできるマークや目じるしであり、製品や包装などに表示している。ISOではタイプⅠ(エコマーク)、タイプⅡ(自己宣言型)、タイプⅢ(環境負荷の定量的情報)と規格化。このうち、タイプⅡのみ、第三者の視点は入らず、自主基準(環境要件)を満たした環境配慮型製品となる。
また昨今、脱炭素やSDGs、資源循環等の社会課題への対応が求められるなか、多くの企業において製品等の機能だけではなく、社会課題の解決に寄与する情報をどのように伝えるか、付加価値の情報の届け方の検討がなされており、タイプⅡ(自己宣言型)の情報開示に着手し、発信する企業が増えてきている。
そこで今回のセミナーでは、自己宣言型の情報開示(タイプⅡラベルの活用)について、製品・サービスを提供する側より事例を発表。製品やサービスの一連の流れを査定し、環境負荷を評価する方法であるLCA(ライフサイクルアセスメント)の視点に基づく基準の設定方法や信頼性をどのように担保するのか、消費者とのコミュニケーションの在り方などについてパネルディスカッションで議論した。
セミナーは冒頭に日本LCA学会 企画委員会委員長の正畠宏一氏(TCO2株式会社代表取締役)が挨拶。ISOにおける環境ラベルに関する3つの規格と、自己宣言型の環境ラベルの取り組みについて、ISO14021の概要を解説した。
タイプⅡ事例 「暮らし、まいにち、エコ。」
ライオン株式会社
最初にライオン株式会社 サステナビリティ推進部 宮澤彩氏が、タイプⅡ事例①「暮らし、まいにち、エコ。」マークについて説明した。まずオーラルケア事業やファブリックケア事業、リビングケア事業、ビューティケア事業、薬品事業などのフィールドに広がる同社の一般消費財事業を紹介。そしてLIONEcoChallege2050「人と地球の健やかな未来に向けて」との長期目標に則り、事業活動や製品を通じて脱炭素社会や資源循環型社会の実現に向け様々な取り組みを進めていることを伝えた。また独自のエコ基準を制定し、環境活動のシンボルマークとして2006年に環境ラベル「eco LION」が誕生。その活用範囲を拡大するために環境シンボルマークの見直し、「暮らし、まいにち、エコ。」が2013年に生まれるまでの経緯を話した。同シンボルマークは企業スローガン「今日を愛する。」の考えに則った、環境スローガンと環境マークを合わせて表現した、ライオンの環境活動のシンボルであることを強調。ユーザーが環境に配慮した商品を選べるよう、同社独自の「ライオンエコ基準」をクリアした商品に、エコな理由とともに表示し、エコ商品の環境コミュニケーション手段として重要な位置づけにあることを訴えた。
そして、その普及活動としてエコプロダクツ展などの大型規模展示会への出展、教育機関への出前授業を進めてきたことを紹介。
残された課題として認知率の向上や生活者がより選びやすい工夫、社会状況を踏まえ、必要に応じた基準の見直しなどを挙げた。最後に今後の展望としてエコ商品・サービスの増加、生活者の環境意識向上、行動変容 製品・サービスを通じた「エコの習慣化」への取り組みを通じて、脱炭素・資源循環型社会を実現していきたいと語った。
タイプⅡ事例 「100ねんあそぼ おもちゃのエコ エコトイ」
株式会社タカラトミー
次に登壇した株式会社タカラトミーサステナビリティ推進室 サステナビリティ推進部社会活動推進課 高林慎享氏はタイプⅡ事例「100ねんあそぼ おもちゃのエコ エコトイについて紹介した。
まず同社がトミカやリカちゃん、プラレールなどの親子3世代で愛される主力商品ブランドやトランスフォーマーなどの世界的な玩具も提供し、明年創業100周年となるといった概要を説明。サステナビリティビジョン「世界中の子どもたちと友だちになる」を実現するために持続可能な社会の実現と成長を目指す中、30年前から目や耳の不自由な方も楽しめる共遊玩具として盲導犬マーク・うさぎマークの活動を推進し、それらを土壌にして生まれたマークがエコトイであることを述べた。
そして、全社で長期的に環境に取り組むことがミッションとなり、製造時や遊ぶ際などを考え、エコの工夫を行い、同社が定めるエコトイ基準を1つ以上クリアすることによってこのマークを表示していることを述べた。さらにそのコンセプトが「100ねんあそぼ。」であり、それは100年後の未来も楽しく遊べる持続可能な社会を子どもたちと共につくっていくことを意味していると語った。
また同社では環境、生産、安全、事業、パッケージ等の部門から選出した部員で構成されるエコトイ委員会が中心となり、GPNからアドバイスを受け、省資源・省エネ、長期使用など様々な観点でエコトイ基準を設定していることを伝えた。同時に玩具業界では初となるエコマークの認定も受けていることを紹介。パッケージにマークと環境配慮情報を購入者にわかりやすく発信するとともに、おもちゃ市場におけるグリーン購入に努めていることを強調した。
そして、今後もタカラトミーグループだからできることであるおもちゃ(本業)を通じて子どもに環境の気づきを伝えていきたいと結んだ。
グリーン購入法の「適合品」としての情報開示及び、環境ラベル等データベースの紹介
続いて、情報提供として、GPN事務局長 深津学治氏が登壇。グリーン購入法の「適合品」としての情報開示及び、環境ラベル等のデータベースがあることを紹介すると共に今日のセミナーのテーマである環境ラベル、あるいは環境表示とは何か、について解説。それが製品の原料採取から製造、流通、使用、リサイクル・廃棄の段階において、環境に配慮した点や環境保全効果等の特徴を説明したもの(環境表示ガイドラインより)となり、これを説明文やシンボルマークに加工し、広告媒体や製品、包装などに表示したものであると述べた。そして、それらはISOによって規格化され、「環境ラベル及び宣言」には① あいまいな表現や環境主張は行わないこと② 環境主張の内容に説明文を付けること③ 環境主張の検証に必要なデータ及び評価方法が提供可能であること④ 製品又は工程における比較主張はLCA 評価、数値等により適切になされていること⑤ 評価及び検証のための情報にアクセスが可能であること等の要求事項があることを伝えた。
また、環境ラベルの評価範囲は、ライフサイクル全体を評価するものと調達や製造、製造使用や廃棄段階など特定の段階を評価するものやその廃棄物3RやCO2、生物多様性など何に影響を与えているか、あるいはどのスコープと関係するかで異なるマークもあることを紹介した。
次の話題、グリーン購入法の仕組みについて解説。それが2001年からスタートし、調達する側にむけた法律であり、基本方針が毎年つくられ、国や自治体が積極的にグリーン購入することで環境配慮型商品が市場に広がり、多くの人が購入し、参入しやすい市場づくりを目指していることに言及し、グリーン購入法適合の表示例を、GPNが運営する「エコ商品ねっと」などより紹介した。
そして、情報提供のまとめとして今後の商品情報の収集と伝達のポイントを環境省が行った環境ラベルに関するアンケート結果をもとに解説。他社製品と比較ができる統一のマークや科学的に裏付けのある根拠、わかりやすい表示や説明が求められ、何をどう配慮しているか、ラベルの意味や基準を求める声があり、丁寧なわかりやすい説明へのステップアップが攻めどころになることを訴えた。
セミナーの後半はGPN アドバイザー/横浜国立大学大学院 環境情報研究院 教授 松本 真哉氏をファシリテーターにパネルディスカッションを実施。先に登壇したライオン株式会社 宮澤彩氏、株式会社タカラトミー 高林慎享氏、グリーン購入ネットワーク(GPN)事務局 深津学治氏がパネリストとして参加した。そこでは「テーマ①環境基準の設定 基準の強化に向けた検討」、「テーマ②消費者への情報開示・信頼性担保に向けた取り組み」、「テーマ③タイプⅡラベル(自己宣言型)の今後の運用」の3点について議論。登壇者からは、自己宣言型のラベル適用が、既存の商品価値(ブランド価値)を毀損しないために、慎重にその内容を検討する必要があることや、タイプⅠやⅢの併用を考える場合があることなど意見が出された。
パネルディスカッションを終えて、松本GPNアドバイザーより「事例発表いただいた2社は社内の合意形成をはじめ、消費者とどのようにコミュニケーションを図っていくか、戦略的に組織的に進められていることを感じました。このタイプⅡラベルの運用は、自己宣言型の取り組みとなり、商品の本当の意味での価値を損なわないように運用する必要があります。ラベルをつけて終わりではなく、本当に基準を満たしているかどうか、商品パッケージや自社ウェブサイト、環境省の環境ラベル等データベースのような外部サイトでの情報開示、そして、自社のチェック機能(管理)について考えなければなりません。また、自主基準の設定では、1つの工程だけ着目し、環境配慮を謳うのではなく、ライフサイクル全体での環境への影響を把握し、ほかの工程での環境負荷が増大しないよう考慮する必要があります。」とコメントがあった。
質疑応答では、タイプⅡラベルの取り組みを検討している方から社内の合意形成の取り方や、基準設定時の検討事項に関する質問が寄せられ、登壇者が回答した。そして、セミナーは日本LCA学会 企画委員/GPN事務局 竹内孝曜氏が今後の活動を紹介し終了した。