地球環境や生物多様性の保全に注力してきた両者

公益財団法人イオン環境財団(以下、同財団)と千葉市との千葉市動物公園(以下、同園)における生物多様性に関する連携協定についての締結式が7月13日千葉市役所にて行われ、千葉市長 神谷俊一氏、千葉市動物公園園長 鏑木一誠氏、公益財団法人イオン環境財団専務理事 山本百合子氏、が出席した。

1985年に開園した同園は、長年、動物園の社会的役割とする「種の保存」「調査研究」「教育普及」「レクリエーション」に取り組み、環境の保全や種の保存活動など動物園の役割を果たすことを通じて、自然や生命の大切さを発信し、伝えていく取り組みを推進してきた。現在、約34ヘクタールの公園内に109 種577点の(2023 年6月末現在)動物を飼育し、中でも立ち姿で有名なレッサーパンダの「風太」は特に人気を集めている。また園内にある大池は、かつて田圃であり、その時代にはホタルも飛んでいたと言われ、9年前に行った大池の生物調査おいても、モツゴやスジエビといった千葉市で貴重な在来種が確認されている。

一方、同財団は、日本で初めてとなる地球環境をテーマにした企業単独の財団法人として1990年に設立。以来、生物多様性の課題に関し、各地で地域の住民や大学研究機関等と連携し、植樹や助成、環境教育等に取り組んでいる。野生動物保護を中心とした施策としては、これまでカンボジアのプノンタマウ野生生物保護センターなどで、荒廃した森林再生、生物多様性の保全のための植樹を実施。また、2009年には生物多様性の保全や持続可能な利活用、それらの普及・啓発・共有の推進を目的とした「イオン生物多様性みどり賞」を創設し、顕著な功績が認められる国内外の個人・団体を顕彰している。

種の保存や環境教育について多彩な取り組みを推進

今日まで同財団と同園とは、生物多様性をベースに、子どもの起業家精神を育む機会創出を目的とする「ちばアントレプレナーシップコンソーシアム」の推進や、同園内の森林整備ボランティア活動等の事業に取り組んできた。今回の締結は、持続可能な社会の実現のために、生物多様性の保全がより不可欠であるとの認識のもと、同園に地域の住民をはじめとする多様な人々が集い、生物多様性について考え、行動することを目的としている。
締結式では千葉市長 神谷俊一氏、千葉市動物公園園長 鏑木一誠氏、公益財団法人イオン環境財団専務理事 山本氏が挨拶に立った。


鏑木氏は協定締結にあたり、地球環境や生物多様性の保全に関して両者に共通するテーマや取り組みがあったことを強調。今後もさらに協力を深めながら、生物多様性に貢献するとともに同園の再生に向けた各種事業を行っていく方針であることを伝えた。また連携する事項は、1.環境、生物等の調査・保全に関する事項、2.植樹に関する事項、3.環境教育活動に関する事項、4.ボランティア活動に関する事項、5.その他、前項を達成するのに必要と認める事項となり、これらを3か年かけて進めていくと述べた。

千葉市動物公園園長 鏑木一誠 氏


山本氏は、同財団が設立以来、その植樹本数は1255万本を超え、千葉市においても泉自然公園、富田都市農業交流センター等、これまで3000人の市民とともに樹を植える活動をしてきたことを紹介。同園との出会いは、カンボジアのプノンタマウ野生生物保護センターでの植樹活動であったことを述懐した。そして、「地球は一つしかない」という想いを共有し、千葉市から世界へ発信しながら、子どもたちといっしょに次世代へ健全な地球を引き継いでもらえるように今日から新たなスタートを切りたいと抱負を語った。

公益財団法人イオン環境財団専務理事 山本百合子 氏


神谷氏は、これまで同財団が同園のガイドブックを発行し、市内小学生に寄贈してきたことや昨年実施したオンラインサファリについても協力があったことを紹介。そういった相互連携の蓄積があっての連携協定締結であることを伝えた。また、今回の協定でさらに種の保存や環境教育について具体的な取り組みが新たに進んでいると話し、「この協定を契機にさらに連携を前へ、前へと進めていただきたい」と結んだ

千葉市長 神谷俊一 氏

地域から世界へ、持続可能な地球へ

今回の連携協定の締結によって今後、3年間、同財団と同園は、大池周辺の生物多様性に関する調査・計画、保全活動や園内樹林地再生を目的とした植樹を実施。正門前のさくら並木も再生させていく。また子どもたちへの環境教育活動も継続しながら、一般市民やイオンピープル(イオンの役員や従業員)参加による同園内の清掃・整備など森林整備ボランティア活動も行っていく。

同財団と同園は「持続可能な地球を次世代に残す」という想いで一致し、今回の連携協定の締結に至った。それに加えて、もう一つ、着目すべきは、「地域」という観点ではないだろうか。

イオンの基本理念は『お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する』であり、同財団もその理念を実践してきた。一方、同園も『市民に身近な動物園(私たちの動物園)』をリスタートの基本理念に掲げ、再生へのチャレンジを続けている。用いられている言葉は異なるが、どちらも暮らしに根を下ろした場所を最大限に重視していることがわかる。 地球環境問題を考える上では忘れてはいけないフレーズに「Think globally, act locally(地球規模で考え、足元から行動せよ)」がある。この連携協定もそのかけがえのない一歩となることを期待したい。


(取材・文 宮崎達也)