独自の技術で様々な「世界初」を生み出してきた東レ株式会社が、今回も世界で初めてとなるレアアースレスを実現する高耐久性ジルコニアボールの量産技術を開発した。同技術で作製したジルコニアボールをMLCC(積層セラミックコンデンサー)用セラミックス材料やLIB(リチウムイオンバッテリー)用電極材料の粉砕・解砕に用いることで、各種製品の信頼性・供給安定性向上に貢献するとともに、ボール交換頻度の低減によりお客様の製造コストダウンに寄与することが可能となる。

耐久性が大幅に向上したジルコニアボール
量産技術の開発に成功

ジルコニアボールは、主に材料を粉末状にするための分散や破砕、表面研磨などに利用される。東レは、高性能セラミックス「トレセラム™」を展開し、MLCC用セラミックス材料やLIB用電極材料向けなどで採用されている。

近年、スマートフォンの高機能化に伴い、製品を構成する原材料の信頼性・供給安定性向上が求められている。また、今後拡大が期待されるEVなどに使用されるLIBの電極材用途では、コストダウン要求が厳しく、ジルコニアボールの長寿命化が課題であり、劣化に強く摩耗しにくいジルコニアボールが求められていた。

そういった中で東レは、ジルコニアボールを構成する一部組成を再設計することで、ジルコニアボール表面状態の結晶構造劣化を最小限に抑え、一般的なジルコニアボールと比べ、耐久性が大幅に向上したジルコニアボール量産技術の開発に成功した。

1,300℃以下で焼結が可能となり、
焼結温度低下によるCO2排出量削減にも貢献

同開発品は、MLCC用セラミックス材料やLIB用電極材料の粉砕・解砕において、高耐久性であることからジルコニアボール起因の不純物混入を最小限に抑制でき、対象物質の品質向上や安定化が可能となる。また、ジルコニアボールの長寿命化を実現し、ボール交換頻度の低減によるお客様の製造コストダウンと生産性向上に貢献していく。さらに従来のジルコニアボール生産における焼結工程では1,500℃での高温処理が必要だが、組成再設計によって1,300℃以下で焼結が可能となり、焼結温度低下によるCO2排出量削減にも貢献することができる。 

加えて、従来の一般的なジルコニアボールは、組成の一部にレアアースのイットリアが採用されていたが、本開発品は産出国が限定されない非レアアースの素材を採用しており、原材料の調達不安の解消にも繋がる。

2023年度初頭からサンプルワークを開始し、
年度内の量産化を目指す

高耐久性ジルコニアボールは2023年度初頭からサンプルワークを開始し、年度内の量産化を目指していく。また、高耐久性を活かし、ジルコニアボール表面の再研磨によるリサイクル利用も視野に入れ、お客様とともにSDGsの達成を目指したリサイクルシステムの検討を進めていく。

今後も東レは、コア技術である「有機合成化学」、「高分子化学」、「バイオテクノロジー」、「ナノテクノロジー」を駆使し、社会を本質的に変える力のある革新的な素材の研究・技術開発を推進することで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでいく。