地域の生物多様性価値を高める「イオン ふるさとの森」
イオンは、新店が開店するとき、お客さまとともに店舗の敷地内に植樹する「イオン ふるさとの森づくり」を1991年から実施し、その地域の環境に適した樹木を数種取り交ぜて植え、自然に近い森づくりを行っている。過去に実施した野鳥生息調査では、植樹から10年前後で近隣の住宅街に比べて野鳥の種類が増えることがわかったほか、森林に生息する野鳥の存在も確かめられたことから「イオン ふるさとの森」が、野鳥の餌場や休息場所として機能し、地域の生物多様性価値を高める役割を担っていることが確認できている。
そういった中で行われるのが「イオン ふるさとの森」いきもの調査となる。この調査で参加者は「イオン ふるさとの森」の生物多様性価値を体験しながら森の豊かさや生態系としての機能を学び、収集結果は、「イオン ふるさとの森」の生物多様性をはかる貴重なデータとして「ふるさとの森 ハンドブック~いきもの編~」の作成に活かされる。
実施店舗を昨年の2倍以上に拡大
今回は、植樹から1年~30年ほどが経過した森を有する店舗で実施。鳥、昆虫、植物など、森で見つけた様々ないきものをスマートフォンで撮影し、アプリ「Biome(バイオーム)」に投稿し、いつ、どんないきものが、どの森にいたかが確認できることも魅力の一つだろう。このアプリは見つけた動物・植物の名前をAIで判定が可能。現在、国内の全種約9万2千種類を調べられる日本最大の生き物データベースとして活用され、生きものの新発見、地球温暖化による分布変化、外来種の拡大状況など、学術的にも使用されている。
昨年は33店舗で同様の調査を実施し、241名が参加。計3.440件の投稿で457種のいきものが見つかり「イオン ふるさとの森」が、地域の生物多様性価値を高める役割を担っていることがわかった。これらの調査データをより精緻なものにするため、今年は実施店舗を昨年の2倍以上に拡大していくとのことだ。
調査の舞台となる「イオン ふるさとの森」は地域の環境に合わせた数十種の樹木を密植し、できるだけ人間が手を加えずに樹木の成長力に委ねる本物の森づくりを目指している。そのために快適で安全なショッピングセンターを運営する責任を果たしながら、誤った伐採で樹木の成長を止めてしまわないよう、植栽帯の管理マニュアルを作成しているほか、各店舗の植栽帯管理スタッフがマニュアル活用法を習得する実地研修会なども行っている。
イオンの基本理念を具現化する森づくり
イオンの植樹活動は、現在名誉会長を務める岡田卓也氏によって始められた。1960年代、岡田氏が、三重県四日市の自宅の庭に植えた南天の花が咲かなくなったことに地球環境の異変を感じ、また、その後も、経済成長に伴い大気汚染などの公害が社会問題となるなか、「自然の恵みを失うことは、豊かさの根源を失うこと」と、大きな危機感を抱くようになった。そして、「小売業としてできることは何か?」を考えた結果、行われるようになったのがイオンの植樹活動となる。それは“お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。”というイオンの基本理念を具現化する活動として位置付けられ、 現在は「イオン ふるさとの森づくり」のほか、(公財)イオン環境財団による植樹と、東北復興に向けた植樹の、3つの「森づくり」が、世界各地のボランティアとともに進められている。
中でも「イオンふるさとの森づくり」は地域に欠かすことのできない店舗の敷地内に創出されることから、基本理念にある “地域社会への貢献”がより鮮明に伝わってくる。
生物多様性の価値を次代へ継承
よく環境問題を語るときに引用される名言がある。それはアメリカ先住民の有名な言葉で、「地球は先祖から譲り受けたものではない。子孫から借りているものだ」というものだ。
その言葉の通り、気候変動や海洋プラスチックごみなど我々が直面している地球環境の課題は、未来の世代のためにこそ解決が求められる。
2022年の「イオン ふるさとの森」いきもの調査は8月から10月までの期間で実施される。そこには子どもたちの参加も多くなることだろう。イオン宣言には“イオンは、日々のいのちとくらしを、開かれたこころと活力ある行動で、「夢のある未来」(AEON)に変えていきます。”とある。その意味でこの調査は、子どもたちも多数集うことで生物多様性の価値が次代に継承され、「夢のある未来」の創造につながるのかも知れない。そういった期待も膨らんでくる。