近年、持続可能な社会の実現に向けたサーキュラーエコノミーの推進が各産業で加速するなか、建築プロジェクトにおける資源循環の重要性が一段と高まっている。特にアルミニウム製品の製造に必要な新地金は、その100%を輸入に依存している現状があり、国内におけるリサイクルアルミを活用した建材の利用拡大は極めて重要な課題とされてきた。また、アルミの主要原料であるボーキサイトから新地金を精錬する工程では大量の電力を消費するため、リサイクルの推進は脱炭素社会の実現に向けても非常に大きな効果をもたらすアプローチである。こうした背景のもと、戸田建設株式会社は株式会社LIXILと協働し、解体建物から発生したアルミサッシ廃材を新たな建物のアルミサッシへと生まれ変わらせる、画期的な「Building to Building」水平リサイクルモデルを確立した。

解体から製造までの
一貫したトレーサビリティを確保

今回の先進的な取り組みは、同社が所有していた「旧 東京建設会館」の移転に伴う解体工事を契機として行われた。東京都中央区八丁堀に位置し、1955年に竣工したこの建物は、一般社団法人日本建設業連合会や一般社団法人全国建設業協会などの拠点施設として長く使用されてきた歴史を持つ。この歴史ある建物の解体工事において発生したアルミサッシ廃材を原料として抽出し、現在新築工事を進めている「筑波技術研究所(仮称)構造材料棟」のカーテンウォールとして再生利用する。解体建物のアルミサッシ廃材を再び同一種類の製品として再生し、特定の建物に採用するという試みは業界に先駆けたものであり、資源循環の新たな可能性を示す事例となった。

本取り組みにおける最大の特筆すべき点は、資源の行方を明確にする仕組みの構築にある。旧建物から発生したアルミサッシ廃材の解体、搬出、運搬をはじめ、その後の選別、溶解、鋳造、そして新たなサッシ製品の製造に至るまでのすべての工程において、一貫したトレーサビリティが厳格に確保されている。これにより、どこの建物から出た素材がどのように形を変えたのかが完全に可視化されるため、建築主にとっても極めて透明性の高い資源循環プロセスが実現した。さらに、新築される構造材料棟では、この再生サッシだけでなく、その他のアルミサッシ部分についても、LIXILが開発した100%リサイクルアルミ使用のアルミ形材「PremiAL R100」が全面的に採用される予定である。

図 _アルミサッシ廃材のトレーサビリティを確保した水平リサイクル

思い入れを未来へつなぐ顧客ニーズの充足と
サーキュラーエコノミーへの貢献

この「Building to Building」という水平リサイクルモデルの確立は、単なる環境負荷の低減や環境技術の誇示にとどまらない意義を有している。長年親しまれてきた歴史や思い入れのある建物の建て替えを計画する顧客に対して、その歴史的・精神的価値の一部を新たな建物へと受け継ぐという、高度な顧客ニーズに応える具体的な解決策としても期待が集まる。解体される建物の記憶や素材が、最新の技術によって形を変え、次の世代の建築物へと確実に継承されるアプローチは、今後の都市再生や建築物の更新において重要な選択肢となる。

戸田建設では、本取り組みを通じて構築された確かな水平リサイクルルートを今後さらに積極的に活用していく方針を掲げている。建築プロジェクトにおける資源循環の仕組みをより高度化させることで、持続可能な社会の基盤となるサーキュラーエコノミーの実現に向けて、今後も確かな貢献を続けていく構えである。都市の代謝を単なる廃棄の連鎖で終わらせず、価値ある資源として未来へつなぐ同社の取り組みは、建設業界全体の資源循環を牽引する重要な一歩となる。