
工学院大学の小林潤教授(機械工学科)は、電磁波で加熱して炭素繊維強化プラスチック(CFRP)から炭素繊維を分離・回収する技術を考案した。5月28日に開幕する次世代ものづくり基盤技術産業展(主催:名古屋国際見本市委員会・公益財団法人名古屋産業振興公社)において、最新成果を企業に紹介し、社会実装を進めていく。
CFRPは、軽量で高強度な特徴から、航空機のボディやレーシングカーの骨格構造などに使われている。今後の消費量は拡大が見込まれる一方で、炭素繊維は高価であるにも関わらずリサイクル技術は確立されていない。
小林教授が考案した技術では、炭素繊維に電磁波による熱を加えて周辺素材を熱分解し、CFRPから炭素繊維だけを回収可能。研究室で試作した装置では、樹脂部分の90%以上を除去しているとのことだ。熱処理をして残った炭素繊維は、元の強度の8-9割を維持し、ベンチスケールプラント設計やエネルギー効率評価およびリサイクルCFRPの成型加工方法に関する検討などから、「技術的には、CFRPのリサイクルは実現可能」と小林教授は考えている。
リサイクル技術の確立と実装に向けて企業と実験・検証を希望しており、次世代ものづくり基盤技術産業展にてマッチングを図っていく。

■研究者コメント
自動車関連企業が集まる名古屋圏では、効率的に回収し、再利用するサイクルが構築しやすいと考えています。日用品の分別回収同様、制度浸透における要は「人」と感じ、社会学や心理学の専門家を交えてリサイクルシステムの構築に取り組んでいます。実用化に向けて、試作や社内試行いただける企業様と出会えることを期待しています。