
東レ株式会社は、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」において、「資源が持続可能な形で管理される世界」を、2050年に目指す世界の1つとし、持続可能な循環型社会を実現するために研究・技術開発を推進。企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んできた。
今回、ケミカルリサイクルが困難と考えられていたナイロン66について、亜臨界水※1を用いた独自の解重合新技術により、ナイロン66の解重合が均一かつ数十分程度の短時間で進行し、モノマー原料として回収できることを見出した。
ナイロン66は、日本で約10万トン/年、世界で約130万トン/年の市場規模があり、高耐熱性、高強度である特徴を活かし、主に自動車や産業資材用途に使用されている。例えば、エアバッグやタイヤコードなどの自動車用繊維、ラジエータータンク、シリンダーヘッドカバー、オイルパンなどの自動車用樹脂成形品などに用いられている。自動車等のプラスチックリサイクル規制の動きが強まっている中、日本では、ナイロン66が用いられているエアバッグの回収が義務づけられており、ケミカルリサイクル原資として有望と考えられる。
先行して実証を進めているナイロン6ケミカルリサイクル※2においては、1種類のモノマー(カプロラクタム)を回収。一方、ナイロン66ケミカルリサイクルにおいては、2種類のモノマー(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸)を回収する必要がある。東レは、ナイロン6ケミカルリサイクル技術の知見を活用し、亜臨界水中におけるナイロン66の解重合反応解析を行い、副反応を抑制する独自技術により、高収率・高効率で2種類のモノマーを回収し、再重合してナイロン66を再生することに成功した。同技術を用いたナイロン66の製造によって、石油から製造する場合のCO2排出量を半減できる見込みとなる。
まずは自動車素材をターゲットとして、エアバッグなどの使用済み原資に含まれる他素材の分離技術や、ナイロン66解重合、さらにはモノマーの分離および精製技術を確立し、2025年に品質確認、顧客評価のためのサンプルワークができる体制を整え、2030年近傍にプラスチックリサイクルが法規制化される動きを見据えて、本格量産準備を進める。
ナイロン6とあわせて、ナイロンリサイクル技術を構築し、衣料品や自動車以外の産業資材にもケミカルリサイクル技術の適用範囲を拡大し、資源循環社会の実現、カーボンニュートラルに貢献していく。

※1 亜臨界水水の臨界点(374℃、22MPa)よりもやや低い領域の高温・高圧状態の水であり、有機化合物を溶解、加水分解する等、常温常圧水とは異なる特性を有する。
※2 2023年9月19日 ニュースリリース(HPリンク)
東レとHonda 自動車用ナイロン6樹脂のケミカルリサイクルに関する共同実証を開始