皆さん、今日は「暑い」って何回いいました?こんなに暑かったらそう言わずにいられませんよね。

去年の7月は世界平均気温が観測史上最高記録を大幅に更新したことで国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「地球沸騰化」という言葉を用いました。

昔は風鈴に代表される様にこの暑さを少しでも涼しく感じるよう工夫したもんですが、猛暑による災害の大規模化を考えるとそんな工夫だけじゃもう済まされなくなってしまいました。悲しいことです。

落語の「青菜」に出てくる夏は今の夏と比べるとのんびりしております。

暑い夏、さるお屋敷で仕事中の植木屋さん、一休み中に主人から「酒は好きか」と聞かれ暑気払いの冷や酒ですっかりいい心持ちになった上、鯉の洗いまでご馳走になります。そして「菜をおあがりか」「へい、大好物で」と言った会話の後に、次の間から奥さまが「だんなさま、鞍馬山から牛若丸が出まして、その名を九郎判官(くろうほうがん)」と妙な返事。だんなもだんなで「義経にしておきな」と答えます。

2人の言葉を翻訳すれば、菜は食べてしまってないから「菜は食らう=九郎」、「それならよしとけ=義経」という意味になり、客に失礼がないための、隠し言葉となっています。

風情豊かな言葉使いに感心した植木屋さんはさっそく長屋に帰って女房にそのことを教え、2人して友達の熊の前で演じます。ところがここは落語。植木屋夫婦のとんちんかんな真似がとても笑いを誘う噺ですのでぜひ続きは涼しさを感じさせる寄席にてお聞き下さいませ。

落語で爆笑して「お臍で湯を沸かす」のは結構なことでしょう。ただ地球の沸騰は、そろそろ「義経」にしていきたいものです。


監修:真打 春風亭 柏枝

【プロフィール】
芸名:春風亭 柏枝(しゅんぷうてい はくし)
本名:菊池貴紀
出身:北海道札幌市
階級:真打
出囃子:筑摩祭
所属:落語芸術協会