●評価対象となった12,000社近くの企業の中から272社をAリストに選出した。
●水資源保護と森林保全の分野で、これまで以上に企業の先進的な取り組みが見られた。
●先進的な14社が、気候変動、水セキュリティ、フォレストの3分野すべてでAスコアを獲得した。
●評価基準の引き上げに伴い、気候変動のAリスト企業数は減少した。
●2021年、過去最高の13,000社強がCDPを通じて環境情報を開示した。
しかしながら、時価総額で21兆ドル相当の17,000社近くが依然として開示を怠っている。
[2021年12月7日 ロンドン] 時価総額で12兆ドル相当の世界の272社が、気候変動対策、水資源保護、森林保全の分野での情報開示と取り組みにより、環境先進的と評価された。
これらの先進的な企業は、企業や自治体向けに環境情報開示システムを運営するCDPにより、約12,000社の評価対象企業の中からAリストに選出された。
Aリストに選出された企業は、ディアジオ、インフォシス、ペプシコ、テトラパック、アストラゼネカ、コルゲート・パルモリーブ、レノボ・グループなどである。
今年のCOP26において、自然資本は主要議題となった。また、グラスゴー合意とIPCC第6次評価報告書では、環境課題の相互連関が指摘され、一体で解決されなければならないことが明確に示された。企業は、このことを理解し始めており、開示においてより包括的なアプローチを採用し始めている。
2021年、ロレアル、花王、ユニリーバ、HP、不二製油グループ本社、レンチングなどの先進的な14社が、気候変動、水セキュリティ、フォレストの3分野すべてでその取り組みが評価され、Aスコアを獲得した。このトリプルAを達成した企業は、昨年の10社から増加している。
また、水セキュリティのAリスト企業数は106社から118社に増加し、フォレストのAリスト企業数は16社から24社に増加した。
2021年、気候変動のAリスト企業数は、昨年の280社から200社に減少した。これは気候変動対策における先進性の定義が引き上がったことにともない、評価基準を引き上げたことに因るものである。簡単な対応策の多くは実行に移され、より野心的な対策が早急に求められている。
Aスコアを獲得するためには、他の基準を満たした上で、気候課題に対する堅牢なガバナンスと監視、厳格なリスク管理プロセス、第三者検証を経たスコープ1、2の排出量報告が求められ、また、バリューチェーンを通じた排出削減も求められる。また、ほとんどのAリスト企業が、現在、SBTイニシアティブの認証を受けたしっかりとした排出目標を持ち、スコープ3の排出をカバーする目標のエビデンスを提出している。
本年、Aリスト企業以外で、多くの開示の質の向上とそれに伴うランキングの上昇が見られた。2021年、前年にCスコア以下の評価だった509社がBスコアを獲得している。これは、当該企業がただ単に開示を行うだけの状態から環境影響を認識しそれを管理する状態へ移行したことを意味している。
先駆的な企業のリーダーシップやその他企業の改善の努力が見られる一方で、これら企業は全体のほんの一部に過ぎない。Aリスト入りを果たしたのは、評価対象企業のわずか2%である。58%はCスコアからD-スコアの間に位置し、環境影響を認識し始めたばかりである。また、懸念されるのは、シェブロン、エクソンモービル、グレンコア、バークシャーハサウェイ を含む時価総額の総計にして21兆ドルとなる16,870社が、機関投資家や購買企業の開示要請に応じない、または十分な情報を開示していないことである。
現在、これらの非開示企業は変化の波に抗っている。COP26において、あるいは2021年を通じて、環境情報の開示要請は高まりを見せ、また、毎年、開示企業数は過去最高を更新し続けている。2021年、グローバル時価総額の64%に相当する過去最高の約13,000社の企業がCDPを通じて開示を行った。また、企業の環境情報開示に対する市場の需要も高まっている。
2021年、運用資産総額が110兆ドルとなる590社強の機関投資家と調達総額が5.5兆ドルとなる200社の大手購買企業が、CDPを通じた環境情報の開示を企業に要請した。 環境情報を毎年継続的に開示する企業は、評判を維持あるいは改善し、規制の先を行き、競争優位を獲得し、リスクと機会を見定め、業界の動向に乗り遅れることなく、資本コストを削減できている。また、環境分野で高評価を獲得する企業は、株価のパフォーマンスが良いことを示す例証もある。
CDPの気候変動Aリスト企業に基づいて構成されたSTOXX Global Climate Change Leaders Indexは、過去8年間、参照インデックスよりも5.8%高い平均年間収益率を示している。
Aリスト企業の環境先進事例
事例1:
ユニリーバは、2020年12月、ネットゼロ目標を達成するための気候移行計画を発表した。同計画は、2021年5月の年次株主総会において採決にかけられ、99.6%の圧倒的多数の承認を得た。
事例2:
不動産開発投資会社のランドセックは、気候変動の最悪の影響の回避に資する事業活動とするため、1トン当たり107.50ドル(80ポンド)のインターナルカーボンプライシングを導入した。
事例3:
ブラジルの穀物企業アマッジは、すべての調達決定に地理空間解析ツールを導入しており、サプライヤーと環境の双方を確認している。この導入により、アマッジは、バリューチェーンを通じた森林減少リスクを管理することが可能となっている。
事例4:
花王は、2021年、インドネシアの約800の小規模パーム農園に対してRSPO認証を取得するための支援事業を開始した。この事業は、2030年までに対象を5,000農園に拡大することを目指している。
事例5:
富士通は、アジアのクライアントとバリューチェーンを通じて協働し、深刻化する同地域の水問題の解決に努めている。例えば、ジャカルタ特別州防災局は、富士通の防災管理システムを活用し、自然災害への適時適格な対応をとっている。
事例6:
世界最大のガラス繊維複合材メーカーであるオーウェンス コーニングは、CEOとCSOに対して、同社の2020年と2030年の目標との関連で水使用の削減を促すため、インセンティブを付与している。パフォーマンス指標は、取水量削減、消費量削減、直接操業の効率性改善に関連するものである。