GPNセミナー「プラスチック資源循環の促進に向けて ~事例から学ぶプラスチック問題の捉え方~」がオンラインで開催

 グリーン購入ネットワーク(以下、GPN)は6月18日(金)にGPNセミナー「プラスチック資源循環の促進に向けて ~事例から学ぶプラスチック問題の捉え方~」をオンラインで開催した。
 今年3月、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定され、「プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化に資する環境配慮設計」、「ワンウェイプラスチックの使用の合理化」、「プラスチック廃棄物の分別収集、自主回収、再資源化等」の3点が基本方針に位置付けられた。この閣議決定は国内でのプラスチック問題への対応としては、2019年の「プラスチック資源循環戦略」に続くものとなる。
 それらの背景を受けて、今回のセミナーではプラスチック問題の解決を目指す企業の取り組みとして、第21回グリーン購入大賞(2020年)プラスチック資源循環特別部門の受賞団体である2社が事例を発表。昭和電工株式会社 川崎事業所 企画統括部兼プラスチックケミカルリサイクル推進室長 栗山常吉氏、日本コカ・コーラ株式会社広報・渉外&サスティナビリティー推進本部 サスティナビリティー推進部 部長 飯田征樹氏の2者が登壇した。さらにGPNのアドバイザー石川雅紀氏(叡啓大学特任教授/神戸大学名誉教授)が、「プラスチック資源循環促進法案」やEU等の国内外の動向をふまえて、今後日本企業に求められるプラスチック問題への対応について解説した。ここでは3氏の講演の概要を紹介する。

ケミカルリサイクル

廃棄プラスチックからの水素エネルギー再生とその実用展開2021

昭和電工株式会社 栗山常吉氏

 昭和電工のプラスチック ケミカル リサイクルは、 プラスチックからクリーン水素を取り出す手法で 「プラスチック問題」 と 「地球温暖化問題」 の同時解決を目指している。当社のプラスチックリサイクルではプラスチック製容器包装を取り扱っている。

 家庭から出るごみの約60%が容器包装である。しかし、食品容器には醤油、マヨネーズ、ケチャップ、ソースなどの残渣が付着しているものもあり、リサイクルには困難が生じる。しかし、当社のケミカルリサイクルはこれらの問題を解決し、安定的で大量のリサイクルを実現。複合材や分別できないものも全て一括処理が可能であり、塩素分、食材の汚れも問題なく処理を実現している。それらの工程で発生する低炭素水素・アンモニア、CO2を製品化し、 国内初、製造プロセスとして エコマーク認定を取得している。
 これらの取り組みは川崎エコタウンプランの一環として実施。使用済みプラスチックのアンモニア原料化施設として稼働している。
 また水素の有効利用では 2015年より環境省の「地域連携・低炭素技術実証事業」を受託し、2017年7月から東京都江東区 新砂水素ステーションにて低炭素水素を提供。また、2018年からは川崎市 殿町国際戦略拠点 キング スカイフロント内 東急REIホテルに設置されている純水素型燃料電池へ低炭素水素を供給し、発生した電気・熱(お湯)がホテルで利用されている。さらに2020年には川崎市の実証事業として、日本マクドナルドと連携し、市内マクドナルド店舗から使用済みプラスチックをリサイクルし、デリバリー用電動バイクの電気へ循環させる試験を実施した。
 当社のケミカルリサイクル設備は首都圏近傍に立地しており、プラスチックを多く消費する排出地から近いということも、事業がうまく継続している要因の一つとして考えられる。
 今後も水素社会構築に対し、強みを生かしたビジネスの可能性を模索していきたい。

マテリアルリサイクル

コカ・コーラシステム 「容器の2030年ビジョン」と
100%リサイクルペットボトル製品

日本コカ・コーラ株式会社 飯田征樹氏

 日本コカ・コーラは多様性の尊重、地域社会、資源の3つのプラットフォームにフォーカスした活動を展開している。そこに9つの重点課題が盛り込まれているが、その中でも「容器・PET」は最重要課題となる。
 それらを受けて日本のコカ・コーラシステムでは容器の2030年ビジョン「設計」「回収」「パートナー」を3つの柱に、取り組みを推進していく。
 「設計」では容器の原料や形状を100%サスティナブルにすることを目指し、ボトル to ボトルや容器の軽量化 、ラベルレスボトルを実現していく。「回収」では販売した自社製品と同等量の容器を回収&リサイクルし、「パートナー」では政府、自治体、業界、顧客、 地域社会との協働を通じ、 着実な容器回収・リサイクル スキームを構築していく。
 ここで日本のペットボトルの現状に目を向ければペットボトルは93.0% 回収され、85.8% リサイクルされている。そこで不可欠なのは「ボトルtoボトル」の水平リサイクルとなる。なぜなら、ペットボトル以外に衣類や食品トレーなどにリサイクルされると焼却などでリサイクルが終了してしまうからだ。
 そのために2019年には日本コカ・コーラとセブン&アイ・ホールディングス共同企画商品“世界初”店頭で回収された使用済みペットボトルをリサイクルした「一(はじめ)緑茶一日一本」を発売。
 2020年3月からは「い・ろ・は・す 天然水」というナショナルブランドに100%リサイクルペットボトルを導入した。4月には、「い・ろ・は・す 天然水」のラベルレス製品も発売。さらに、2021年5月には、旗艦製品である「コカ・コーラ」、「ジョージア」の一部製品にもリサイクルペットボトル100%を導入し、拡大している。日本コカ・コーラは2030年には、すべてのペットボトルへ 100%サスティナブル素材の使用を目指す。

日本国内のプラスチック資源循環の行方~企業に求められる対応~

叡啓大学特任教授/神戸大学名誉教授/GPNアドバイザー 石川雅紀氏

 プラスチック問題は1963年にアメリカの建築家・思想家であるバックミンスター・フラーが資源枯渇に対して提唱した「宇宙船地球号」が淵源となると考えられ、昨年の菅首相による「2050年カーボンニュートラル宣言」でより一層注視されている。
 プラスチック問題の原因は、廃棄量の急増がある。その背景には消費量の急増と静脈産業の不在があげられる。そして焼却処理で環境汚染物質の発生源となり、非分解性であるため、海洋プラスチック問題も引き起こしている。
 しかし、EPR制度(Extended Producer Responsibility:拡大生産者責任)によって、かつて「ごみ」として買う人がいなかったペットボトルが、買い取る人がいる「くず」になるという構造的変化が起きた。さらに近年は「ボトルtoボトル」が推進され、その付加価値が上がり、さらなる技術開発や投資が行われている。プラスチック新法案で狙っているのは依然として「ごみ」になっている残りのプラスチックを循環させていくことである。
 プラスチックリサイクルでは、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルへの期待が高い。プラスチックは幅広く使われていて代替素材の実用化がなかなか進まないため、現状のマテリアルリサイクルは、さらに付加価値の高いリサイクルに育ってほしい。しかし、マテリアルリサイクルに向かないものもある。だからこそ汚れや多様な種類に対応できるケミカルリサイクルも重要となる。2050年のカーボンニュートラルが実現した世界では、サーマルリサイクルは温暖化ガス排出削減効果が見込めないので選択肢ではない。
 ボトルtoボトルといった水平リサイクルは消費者に理解されやすい。しかしケミカルリサイクルは一旦プラントに入るのでわかりにくい。そのハードルをどうやって乗り越えるかが課題になるだろう。昭和電工のようにケミカルリサイクルでできた水素を宅配用バイクに利用するということは、消費者とのコミュケーションの上でも意義がある。