2050年カーボンニュートラルの達成を加速させるグリーン購入へ 第21回グリーン購入大賞 表彰式が開催

 環境負荷ができるだけ小さい製品を、環境負荷の低減に努める事業者から優先して購入するグリーン購入。それを推進するネットワークがグリーン購入ネットワーク(以下GPN)であり、グリーン購入に関する普及啓発や情報提供、調査研究などを行っている。また2018 年度からは、パリ協定や SDGs 等の世界的動向をふまえ、活動の領域をグリーン購入から持続可能な調達に拡大し、購入原則の改定や取り組み度を測るための仕組みを構築し、事業を推進している。
 グリーン購入大賞は、GPNがグリーン購入に関する事例を広め、全国の各種団体等による取り組みを顕彰し、推進するために98年に創設。以後毎年実施され、今回で第21回となる。その表彰式が2020年12月11日に都内のJPタワーホール&カンファレンスにおいて開催された。

第21回グリーン購入大賞 表彰式

SDGsの目標達成に向けて持続可能な調達の先進的事例を表彰
~梅田 靖GPN会長挨拶~

グリーン市場の拡大に貢献した企業や団体を顕彰

 冒頭、挨拶に立った審査委員長 梅田 靖GPN会長(東京大学大学院教授)は大要、以下のように語った。

 SDGs、パリ協定、サーキュラーエコノミーなどが世に出たのが2015年、それから5年が経過した。我が国においては菅首相が2050年カーボンニュートラル宣言を行い、サステナビリティに向けた動きが一段と加速した感がある。これが一過性の動きにならないよう、そして2050年に向けて目標を実際に達成するように確実に歩みを進めていくことが重要であると思っている。
 その基礎となるのは我々が持続可能なモノやサービスを購入し、提供側がそれに呼応して循環をつくることだと考えている。そしてGPNはこれを支援するために草の根レベルから活動を行っている。
 グリーン購入大賞は持続可能な調達に向けて、グリーン市場の拡大に貢献し、さらにSDGsの目標達成に寄与した取り組みを表彰するものである。そういった中でプラスチック問題は環境への影響が大きく、同時に我々の消費やものづくりのあり方を問い直す問題だと考えている。そういった背景から今回はプラスチック資源循環特別部門を新たに設置した。
 この部門の大賞と経済産業大臣賞を受賞されたのは昭和電工株式会社様の取り組みである。同社は世界で唯一のプラントを活用して使用済みのプラスチックから水素と炭酸ガスを精製する事業をビジネスベースで実施している。この他にも多様なプラスチックへの取り組みを表彰することができた。
 また、今、注目を集めているフードロスの問題に関して農林水産大臣賞において、株式会社クラダシ様が通常の流通ルートでは販売できない食品のシーズと消費者のニーズをマッチングさせるビジネスモデルを確立した取り組みを顕彰することができた。

商品に留まらず様々なステージの取り組みを称える

 グリーン購入大賞は単に商品を表彰するものではない。たとえば環境大臣賞に輝いた法政大学川久保研究室の取り組みは、SDGsに関する地方自治体の活動をデータベース化し、それを学生自らが運営、バージョンアップしていく活動となる。このようにグリーン大賞は大企業のみならず、中小企業や地方公共団体、民間団体などの活動を大切にしている。さらに再生可能エネルギーも非常に重視している。
 今年も多様な取り組みを表彰することができた。特に今回はグリーン購入や持続可能性に配慮した調達を実施する仕組みの構築や教育というものがキーワードだったのではないか。今年度の受賞事例のヒントを得て、グリーン購入をはじめとするSDGsに向けた多様な取り組みが世の中に普及することを願っている。

梅田靖GPN会長

ローカルSDGsの取り組みを後押しする仕組み
大賞・環境大臣賞

法政大学 川久保俊研究室(行政・民間団体部門)

 大賞・環境大臣賞は 法政大学 川久保俊研究室(行政・民間団体部門)が受賞。
 受賞タイトルは「自治体のSDGs に関する取組/成功事例を検索、発信、共有するローカルSDGs プラットフォームの開発」となる。
 同研究室ではSDGs の達成に向けて取り組みを進める全国の自治体関係者を支援することを目的に「ローカル SDGs プラットフォーム」を開発、その運用を行っている。このプラットフォームは、SDGs に関する約 200 もの指標ごとに全国約 1,800 の自治体の情報をデータベース化して公開。また、自治体が策定、公開している計画や戦略などを検索でき、SDGs 達成に向けた取り組みを自治体が自主的に発信できる機能も実装しているところが特徴となる。
 受賞に対し、法政大学 准教授 川久保 俊氏は「SDGsは、“think globally, act locally”と言われているが、理念的に素晴らしいSDGsを普及させていく鍵になるのは地域への落とし込みだと考え、その課題解決に取り組んでいくためにこの研究を開始しました。日本各地で先進的にSDGs達成に向けて取り組まれている自治体の皆様の知見や経験、成功事例等を共有できる場を構築できれば、ローカルSDGsの取り組みを後押しできるのではないかと思い、学生たちと手作りで開発したのがこのローカルSDGsプラットフォームです。ユーザーの皆様からは今も貴重なご意見を賜りながら改良を加えています」と語った。

法政大学 川久保俊 氏

使用済みプラスチックを安定してリサイクルする事業
大賞・経済産業大臣賞

昭和電工株式会社(プラスチック資源循環特別部門)

 大賞・経済産業大臣賞を受賞したのは昭和電工株式会社(プラスチック資源循環特別部門)。受賞タイトルは「使用済みプラスチックのケミカルリサイクルによる低炭素な化学品原料化・資源循環事業」となる。
 同社川崎事業所では、家庭などから排出されたプラスチックを皆様の日常生活へ循環させるリサイクルの輪を創出することを目的に、世界で唯一のプラントで使用済みプラスチックから低炭素な水素や炭酸ガスにリサイクルする資源循環システム事業「川崎プラスチックケミカルリサイクル(KPR)」を展開してきた。
 KPR では、使用済みプラスチックをガス化して、水素と炭酸の合成ガスを製造、水素はアンモニア合成の原料に、炭酸ガスは炭酸製品やドライアイスの原料に使用しており、廃棄物の削減や低炭素な産業の実現、資源利用効率の向上など、様々な社会問題解決に貢献する循環システムとして稼働、それが受賞対象として評価された。
 執行役員であり川崎事業所長を務める 竹内 陽一氏はスピーチで鉄のリサイクルをはじめ、日本で最初にアルミ缶リサイクル活動を実施するなど資源循環型社会の事業活動を積極的に行ってきた同社の歴史に触れながら、その中で同社の取り組みが使い捨てライターや小型のリチウムイオン電池など発火する危険にも対応していることを強調。様々なリサイクル活動の取り組みの中で同社には安定的に処理するノウハウが長い時間をかけて蓄積されていると力説した。

昭和電工株式会社

フードロスを約1万トン削減するプラットフォーム
大賞・農林水産大臣賞

株式会社クラダシ(中小企業部門)

 大賞・農林水産大臣賞には株式会社クラダシ(中小企業部門)が選ばれた。受賞タイトルは、「日本初の社会貢献型フードシェアリングプラットフォーム「KURADASHI」~もったいないを価値へ~」となる。
 同社は、日本国内で大量のフードロスが発生している状況を踏まえ、廃棄食品を買い取り、社会貢献型フードシェアリングプラットフォーム「KURADASHI」上で販売することにより、フードロスの削減に取り組んできた。その中で売上金の一部を環境保護支援団体などへ寄付するという付加価値を付けることで、利用者も持続可能な社会の実現に貢献できる仕組みを構築してきた。
 「KURADASHI」では、食品の賞味期限、パッケージの汚れやキズ、自然災害による被害などの要因で、消費可能でありながら通常の流通ルートでの販売が困難な商品と、これらを利用する消費者のマッチングを行っている。また、個人単位だけではなく、「オフィス de クラダシ」を展開し、企業単位でのフードロス削減も実施。そういった活動が受賞に結実した。
 株式会社クラダシ 代表取締役社長 関藤 竜也氏は、スピーチで社会貢献型フードシェアリングプラットフォーム「KURADASHI」は現在会員が全国に約14万人、取引社数は850社、フードロスにおいては約1万トンの削減につながっていることを紹介。世の中で正しいことを気軽に無理なく、負荷なくできるようにした努力が受賞につながったと熱く語った。

株式会社クラダシ

中小企業や行政団体も優秀賞に輝く

大賞:
株式会社東急ホテルズ 川崎キングスカイフロント東急REIホテル(大企業部門)
小川珈琲株式会社(中小企業部門)
横浜市(行政・民間団体部門)
日本コカ・コーラ株式会社(プラスチック資源循環特別部門)

優秀賞:
大東建託株式会社(大企業部門)
デジタルグリッド株式会社(大企業部門)
有限会社生活アートクラブ(中小企業部門)
町田市(行政・民間団体部門)
宇陀化成工業株式会社(プラスチック資源循環特別部門)
FYS 株式会社(プラスチック資源循環特別部門)

 さらに大賞は大企業部門では、株式会社東急ホテルズ 川崎キングスカイフロント東急 REI ホテルの「再生可能エネルギー100%!日本初の『CO2 フリー電力ホテル』」、中小企業部門においては小川珈琲株式会社の「一杯のコーヒーからできること【京都小川珈琲 SDGs 宣言】」が受賞。
 東急ホテルズ 川崎キングスカイフロント東急 REI ホテルは、サステナブルなホテルづくりを目指し、ホテル内で発生する廃棄物を有効活用。使用済みプラスチックから水素を、食品廃棄物からバイオガスを生成し、CO2 フリー電力に転換している。一方、小川珈琲は日本国内でのいち早くフェアトレードや有機 JAS 認証コーヒーなど、生産段階での環境面・社会面に配慮したコーヒー豆を調達し、それらの商品化、普及啓発に積極的に取り組んできた。
 行政・民間団体部門では、横浜市の「横浜市グリーン購入推進 ~e ラーニング研修等を通じた人材育成について~」、プラスチック資源循環特別部門では日本コカ・コーラ株式会社の「World Without Waste(廃棄物ゼロ社会の実現を目指す)100%リサイクルペット素材で作られた『い・ろ・は・す』」受賞。
 横浜市では、e ラーニング研修を通じて担当職員のグリーン購入の理解促進に努める他、環境配慮印刷企業の視察により知見を得、庁内職員向けの「グリーン購入通信」で情報共有と人材育成につなげている。
 日本コカ・コーラは、「い・ろ・は・す」において 100%リサイクルペットボトル、ラベルレスの取り組みを進め、業界に先駆けてサスティナブル・パッケージ「持続性可能な容器」を導入した。
 また優秀賞では大企業部門で大東建託株式会社、デジタルグリッド株式会社、中小企業部門においては有限会社生活アートクラブ、行政・民間団体部門では町田市、プラスチック資源循環特別部門では宇陀化成工業株式会社とFYS 株式会社が選出された。
 大東建託は建設業の中でも SBT 目標や RE100 加盟等、積極的に取り組んでいること、本業と関連する木質バイオマス発電を重視する考え方や、「追加性」「ストーリー性」「社会性」の観点を取り入れた再エネ購入、建設現場の再エネ電力プランの開発協力等、意思を持った取り組み姿勢が評価された。
 デジタルグリッドは再生可能エネルギーの需要と供給をつなぎ、手軽に売買が可能な電力取引システムを構築し、 需要家のニーズに合わせた再エネ購入を可能にしたことが受賞につながった。
 アートクラブは竹紙の利用という独自性とともに、環境配慮型印刷用紙の開発と普及を進めるための継続的な取り組みを展開。
 町田市は、グリーン購入の取り組みを推進するために必要な要素(環境づくり、結果の見える化、意識改革)を的確に捉え、PDCA で実践している。
 宇陀化成工業は創業以来、一貫してリサイクル原料の調達とリサイクル原料 100%の製品づくりを推進し、ポリエチレンフィルムを製造するための中間処理業者へ働きかけや、安定供給を実現している。
 FYSは製造事業者の立場から流通ハンガーのリユース・リサイクルの道筋をつくるなど、アパレル業界に実践を働きかけて成果を残している。
 さらにグリーン購入推進自治体特別賞では新潟市と大阪市が選ばれた。

大東建託 デジタルグリッド 生活アートクラブ 町田市 宇陀化成工業 FYS