1949年の創立以来、ライフラインに直結する石油製品や自動車販売などを通じて地域の生活を支え、地域に貢献することでお客さまから多くの信頼を得て成長している岐阜日石株式会社(本社岐阜市)を取材しました。
我が国でも「2050年カーボンニュートラルの実現」が宣言され、石油製品やガソリンスタンド事業を取り巻く事業環境は、今後大きな変化が予想されます。石油元売りであるENEOSグループもESG経営に舵を切り、ENEOSグループ行動基準を誠実に実践することで、「2040年長期ビジョン」で、ありたい姿を公表しています。グループとして、社会価値と経済価値の双方を創出することで、社会の発展と活力ある未来づくりに貢献していくことを宣言しています。今回は、このような環境認識を踏まえ、地域貢献やSDGsに対する思いについて、岐阜日石株式会社代表取締役社長の和田隆氏にお聞きしました。 気候危機による自然災害の増加、長引くコロナ禍による地域経済への影響が大きくなるなか、地域との繋がりや環境変化に挑戦し続けることの大切さについて思いを込めて語って頂きました。
岐阜日石株式会社グループ(以下、岐阜日石G)は、岐阜県岐阜市に本社を置く、1949年(昭和24年)設立、従業員数305名(2021年10月現在)の72年の歴史を持つ、石油製品や自動車販売を主力とするカーライフ事業者です。本社のある岐阜市は、岐阜城を冠する自然豊かな金華山があり、斎藤道三公・織田信長公・明智光秀公をはじめとする戦国武将ゆかりのまちです。中京経済圏の中心である名古屋からも電車で約20分の好立地にあります。
SDGsに関しては、2020年度に岐阜県、2021年度に岐阜市が政府のSDGs未来都市に選定されています。岐阜日石Gは、岐阜県内で、1日約7,000人が利用するENEOSのガソリンスタンドを直営で22拠点運営するとともに、自動車販売・整備・鈑金・保険事業などカーライフに関係する事業を展開しています。
岐阜日石Gは、永遠に生き残ることを願っています。まさにSDGsが目指す持続可能な経営を実現し、21世紀のみならず、22世紀も、さらにその先もバトンが引き継がれることを想っています。そのためには、「今を見て、明日を見て、さらに数年先、10年先、20年先」の変化予測し対応することが必要です。その際に、「予測は悲観的に、行動は楽観的に迷わず進むこと」が大切であると考えています。しかしながら未来を正確に予測することは困難とも言えます。実際、今回の新型コロナウィルス影響のように、感染症によるパンデミックについて警鐘を鳴らす専門家はいたでしょうが、これほどのインパクトを世界に与えることを予測できた経営者は多くないと思います。まさに「変化はいつのタイミングで、どうのような形で起こりうるか誰もわからない」ものとも言えます。しかし変化の兆候が見えたら、極めて迅速に「対応」し、どこへ向かうか決定し進まねばなりません。それこそが「企業の永続性」であり、地域で最後まで生き残り進化しつづける道であると考えています。
このような経営認識のもと、岐阜日石Gは、2020年1月に「企業の永続性」を願いSDGs経営を念頭に「岐阜日石プライオリティ」を策定しています。
「岐阜日石プライオリティ」
●当社の存続のために、常に目的を考え、スピードを優先する
●従業員にとって魅力的な会社、誇らしい会社創りを常に追求する
●信用・信頼される企業であり続けるために、当社の従業員として高い人格を追求する
●地域の生活を支える責任ある仕事をさせていただけることが誇りである
●時代の変化を先んじてとらえ、適応し続ける企業である
岐阜日石Gは、SDGsの取組みが地域に根差したものになるように地域でのネットワークを広げたいと考えています。そのため岐阜県が運営する「清流の国ぎふSDGs推進ネットワーク」に参加しています。ネットワーク会員は、岐阜市や大垣市などの市町村や民間企業・団体、大学などです。民間企業・団体は683社(2021年10月1日現在)で、県内でのSDGsへの関心の高さを表しています。今後は、地域のために他の会員とのアライアンスを進め取組みを強化していきたいと考えています。
多くの社会課題を解決するには、イノベーションが不可欠であり、若い方々の自由な発想が大切であると考えています。岐阜は「楽市楽座」が生まれた場所です。当時の「楽市楽座」という考え方は、新たに城下町を形成し、地域の経済成長に貢献しました。まさに持続可能なまちづくりや経済活動を実現するための「時代の転換点」を生んだイノベーションと言えます。
岐阜日石Gは、地域の活性化や地方創生に向け、SDGsを活用したイノベーションを岐阜から発信していきたいと考えています。そこで、若い世代へのSDGs啓発に向け、2021年9月25日に『SDGsで語ろう「岐阜の楽市楽座と女性活躍」』と題して、岐阜県や岐阜市の後援を頂きオンラインでのセミナーを開催しました。当初は対面での実施を検討していましたが、コロナ拡大の影響を踏まえ、オンラインでの開催となりました。
しかしながら結果は、定員30名を超える岐阜県内の大学生や高校生を中心に約50人に参加してもらいました。イベントを通じて、SDGsの基礎知識を学ぶとともに、岐阜日石Gで活躍する女性社員2人との意見交換の場を持つことが出来ました。参加者からも活発な意見も出て、改めて若い世代のSDGsへの関心の高さを知ることになりました。
「岐阜日石プライオリティ」で、従業員にとって魅力的な会社作りを目指しています。会社作りをするうえで、社員の健康維持はそのベースになるものと思います。また仕事を通じてお客さまに最高のパフォーマンスを提供するには、社員が心身ともに健康であることが大切だと考えています。
岐阜日石Gは、2018年10月1日に、「清流の国ぎふ健康経営宣言企業」として岐阜県に登録をしています。また社員代表とともに「新はつらつ職場づくり宣言」をして、岐阜労働局から「登録証」の交付も受けています。2019年には、全国健康保険協会岐阜支部より、「健康経営推進事業所」の認定を受けています。そして、ワーク・ライフ・バランスの推進に向け、2021年に岐阜県の「岐阜県ワーク・ライフ・バランス企業」に登録しました。今後もディーセントワークの実現に向け、健康経営の取組みを推進していきます。
1987年に「Our Common Future(アワーコモンフューチャー)」、「我々の共有の未来」がブルントランド委員会で発表され、持続可能性つまり「サステビリティ」が定義付けされました。サステナビリティの定義は、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」とされています。
岐阜日石Gは、地球温暖化対策であるカーボンニュートラルの実現は将来の世代に対応する責任であると考えています。今後も元売りであるENEOSと連携をする中で貢献をしていきたいと思います。一方、岐阜県は地方であり、三大圏のように電車路線が普及しておらず、自動車の利用は生活や仕事において不可欠なものと言えます。一般的には「ガソリンスタンド」と呼ばれることが多いですが、岐阜日石Gは、地域のカーライフをサポートするサービスステーション(SS)の機能を果たすなかで現世代のニーズに応えたいと思います。お客さまの中には、高齢ドライバーや女性ドライバーも多く、地域に根差した気軽に相談できるきめ細かなサービス提供が大切であると言えます。そのためにも「誰一人取り残さない」というSDGsの理念を理解し、さらなるサービスの充実をしていきたいと考えています。
また自動車関連の仕事と言えば、男性の職場のイメージが強いかと思います。しかしながら自動車が好きな女性もいます。岐阜日石Gには、そんな自動車好きの女性社員が活躍しています。なかには所長(管理職)として一つのSSを切り盛りする女性社員もいます。また自動車の修理や点検などで男性社員以上のスキルを持つ女性社員はお客さまからの厚い信頼を得ています。今後もジェンダー平等の視点から女性活躍にも力を注いでいきたいと考えています。こうした考え方と地域に根差したアプローチ方法は、「企業の永続性」を実現できるSDGs経営そのものだと確信しています。