地域に密着し、地域に貢献することで地域のお客さまから多くの信頼を得て企業成長している、愛知県瀬戸市に本社を置く、大橋運輸株式会社(以下、大橋運輸)を取材しました。
同社は、厚生労働省による「くるみん認定」や経済産業省の「健康経営優良法人ブライト500」に選定されるなど多くの優績表彰を受賞しています。
今回は、地域貢献やSDGsに対する思いについて、代表取締役社長の鍋嶋洋行氏にお聞きしました。コロナ禍による影響が大きくなるなか、地域との繋がりや挑戦し続けることの大事さを静かな口調ながら思いを込めて語って頂きました。
大橋運輸は、1954年(昭和29年)設立、従業員数106名(2021年6月現在)の70年近い歴史を持つ、運送事業者です。本社のある瀬戸市は、“瀬戸物”の語源とも言われる焼き物「瀬戸焼」で有名で、日本六古窯の一つに数えられる由緒ある陶磁器の産地です。1000年以上の土と炎の歴史があると言われ、今も多くの窯元や工房が集まり、日々新たな作品を生み出しています。
また国の特別天然記念物であるオオサンショウウオの生息地としても、知られています。
主な事業は、愛知県は自動車産業が盛んな地域であることから、法人部門は陶磁器や自動車パーツなど、地域のニーズに合わせた配送サービスを提供しています。
個人向けには、生前整理・遺品整理をはじめ、引っ越し・片付けレンタルコンテナなど、地域の高齢化とともに需要が高まりつつある片付け・整理サービスも提供しています。
きっかけは、経営方針とSDGsの理念が合致したことです。大橋運輸にとって「人材の採用・育成は最優先すべき経営課題である」という認識から、以下の3つを柱にSDGsの取組みをスタートしました。
大橋運輸は、仕事で最高のパフォーマンスを発揮するには心身ともに健康であることが大切だと考えています。そのため、健康診断に加え、2018年から「管理栄養士」を採用し、 食を通じたきめ細かい健康指導を行い、長く健康に働ける環境を作ることを目的としています。ユニークな取り組みとしては、社員に「旬の野菜・果実」や腸内環境を整える「乳酸菌飲料」の現物を支給するなど歯の「8020運動」に取り組んでいます。
また「仕事悩み相談室」や、社長に直接相談できる「社長直通メール」などを通して、社員の意見や不満・悩みなどを把握し、一人一人が働きやすい職場環境の構築にも取り組んでいます。こういった取組もあり、ESも向上し、「健康経営優良法人ブライト500」に選定されるなど結果に結びついています。
その結果、入社応募者数の増加(※)に繋がっています。
※2017年80名→2020年140名(1.75倍)
大橋運輸には、個性豊かで魅力的な社員が大勢はたらいています。
その理由のひとつに、"ダイバーシティ<多様な人材活用>"に積極的に取り組んでいることがあります。誰もがやりがいを持ち、笑顔で働くことができる会社を目指し、いずれはそれを地域へ、そして世界へと広がっていくことを信じています。
具体的には、女性、高齢者、外国人、障がい者、LGBTQ社員が、活躍することのできる環境づくりに積極的に取り組んでいます。
例えば、入社申込書の性別欄の廃止、性別と関係の無い「誰でもトイレ」の設置、技能実習生ではない外国人の直接雇用などに取り組んでいます。
また就業規則を改定し、同性パートナーも配偶者に認定し福利厚生の適用の対象に致しました。そして、心と身体の性別が一致しないトランスジェンダーの方は本人の希望があった場合には通称名での勤務が出来るように致しました。
またより多くの人にとって過ごしやすい社会になって欲しいという想いから、名古屋で開催されるセクシュアルマイノリティ(LGBTQ)とその理解者(ALLY)のプライドパレード「名古屋レインボープライド(前身:虹色どまんなかパレード)」に協賛をしております。
こういった取組も評価され、経済産業省の「新ダイバーシティ経営100選プライム」を受賞しました。
<参考:経済産業省ベストプラクティス企業動画>
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/ceremony/index.html
大橋運輸は、1954年の会社設立以来、「誰もが安心して暮らせる持続可能な社会を実現する」ためにSDGsの視点で行政、外部団体・企業などと連携をしながら社会貢献活動や環境負荷の削減・環境保全の取り組みを行っております。持続可能な社会を実現していくことが企業の持続可能な成長につながると考えています。
具体的には、地域課題の解決に向けて、SDGsゴール17のパートナーシップを活かし、警察や自治体とも連携し交通安全イベントや 環境活動、 高齢者のケガや 詐欺被害対策、地域防災に関する活動など継続的に行っています。
具体的には、瀬戸警察署とのアライアンスを進めるなかで、「箸(橋)の日」の8月4日、瀬戸警察署が主催される「交通安全橋(箸)渡しキャンペーン」に、瀬戸市役所・瀬戸女性ドライバー交通安全運転クラブの皆様と共に参加させて頂きました。
私たち大「橋」運輸の社員が、交通安全の「橋」渡しとして道行くドライバーの皆様に「箸」などをお配りし、安全運転の呼びかけを行うなどの顔の見える地域貢献活動をしています。そしてこのような交通安全 橋(箸)渡し作戦へ参加することで、 全ての社員の安全運転への意識が更に高まり、業務全体の質の向上に繋がっています。
加えて、学校での授業実施や商工団体、業界団体での講演や国の天然記念物「オオサンショウウオ」の瀬戸市内生息地の清掃活動などの環境保全や地域の環境美化にも取り組んでいます。そしてこのような活動を「大橋運輸CSRレポート」で多くのステークホルダーに向け情報発信しています
大橋運輸は地域に密着して事業展開していることから、地域の課題に気が付きやすいと考えています。地域活動に取り組むことで、新たな地域課題に触れ今後の取り組むべき方向が見えます。
そして、その地域課題解決に取り組むことで職場内そして企業の成長に繋げています。
まさにこうした考え方とアプローチは、はSDGs経営そのものだと確信しています。
具体的には高齢化率が高い瀬戸市の健康寿命を延ばすために地域の方を対象に社内管理栄養士が健康無料相談を毎週1回開催しています。
また防災月間での家具処分、終活セミナー開催などを通して、新たな事業分野の開発に挑戦しています。
大橋運輸ではNPO法人監修のもと、お客さまや社員の意見も反映させたオリジナルの「エンディング・ノート」を作成しています。
「エンディング・ノート」は、ご自身の財産に関する情報やご希望などを書き留めておくことで、死後、残された家族の役に立つだけでなく、ご自身の現在の身の回りの整理もでき、これからの人生においてより豊かな生活を送る上でご活用いただけるものです。
この「エンディング・ノート」は、瀬戸市と尾張旭市の包括支援センターで無償配布しています。
地域課題解決から生まれた、「生前整理・遺品整理サービス」ですが、今後も地域に提供することで、お客さまから喜ばれるようにより良いものに仕上げ、また自社の企業成長にも繋げていきたいと思います。
そして瀬戸市の企業アンバサダーとして、 瀬戸市の良さを伝えながら、更に瀬戸のまちを良くする活動を増やしていきたいと思っています。