〈シリーズ〉SDGs 企業・自治体の取り組み

「過去を活かして未来を創る。100年後でも持続可能な循環型イノベーション」への挑戦

 株式会社TBMは、東京都中央区に本社を置く、2011年(平成23年)設立、従業員数は、213名(2021年4月現在)のベンチャー企業です。
 2020年の日本経済新聞社NEXTユニコーン(未上場で企業価値約1,100億円以上)調査で紹介されるなど業容を着実に拡大しています。
 主な事業として、石灰石を主原料とし、石油由来原料の使用量を抑えたプラスチックの代替や、水や木材資源を使用せず紙の代替となる新素材「LIMEX(ライメックス)」、再生材料を50%以上含み資源循環を促進する素材「CirculeX (サーキュレックス)」を開発・製造・販売しています。
 NEXTユニコーンである同社が取り組むCSV・SDGs活動について、コーポレート・コミュニケーション本部 コラボレーション クリエイターの石井祐介氏に同社に根付く社会課題解決にチャレンジする事業文化が生まれた背景について語っていただきました。

東京都国分寺市

社名にかけた想い

 TBMの社名は、「Times Bridge Management」の頭文字が由来であり、「100 年後も残る技術や事業を創り、時代の架け橋となる会社にしたい」という想いが込められています。
 企業理念として、「過去を活かして未来を創る。100年後でも持続可能な循環型イノベーション」を掲げ、TBMの持つ技術で、日本だけでなく、世界における環境負荷軽減や社会の持続的な発展に貢献できる事業を目指しています。
 こういった考え方は、SDGsの理念と合致するものであると考えています。
 またTBMの企業理念は、企業の事業活動を通じて社会課題を解決し、「企業価値」を高めるとした、米国経済学者のマイケル・ポーター氏が提唱するCSV(Creating Shared Value )にも通じるものがあると思います。

エコロジーとエコノミーの共存を追求

 世界は爆発的な人口増加やグローバル化する経済活動などによる影響などで、資源の枯渇が懸念されています。なかでも人類が生存していくうえで不可欠な資源のひとつに「水」があります。21世紀が「水の世紀」と言われるように世界では、清潔な飲料水が手に入らないだけではなく、深刻な水不足による農業危機や紛争が発生している地域があります。
 また現在の主要なエネルギー源である石油資源は有限なものと考えられており、資源の枯渇の可能性に配慮した有効活用が求められています。
 この水と石油資源の二つの課題解決に挑戦し開発したものが新素材LIMEX(ライメックス)です。
 LIMEXは、資源が乏しい我が国にも豊富にある石灰石を主な原料とする炭酸カルシウムなどの無機物を50%以上含む、無機フィラー分散系の複合材で、プラスチックや紙の代替が可能な新素材です。
 LIMEXは、世界 40 ヶ国以上で基本特許を取得し、日本の優れた技術として、 UNIDO(国際連合工業開発機関)のサステナブル技術普及プラ ットフォーム「STePP」に登録されています。
 またLIMEXの工場を、地方創生に資する、雇用創出に向け、宮城県白石市と多賀城市に開設しました。これからも海外パートナーを増やすことで、環境保全や資源の確保、雇用創出に貢献が可能となります。
 こういったTBMのビジネスモデルを通じて、エコロジー(自然環境保護)とエコノミー(経済)の共存を追求していきます。

プラスチックや紙をLIMEXで代替するメリット(イメージ),国内生産拠点(地方での雇用創出に貢献)

「サステナビリティ革命」と「競争優位性」の実現

 人類は、「農業革命」から「産業革命」を経て、インターネットやスマートフォン、5Gなどの技術革新により「情報革命」に入っていると思います。
 TBMは、モノの供給だけでなく、技術や循環型の価値観や仕組みを通じて、新しいアタリマエを創ることで、人類にとって新たなステージである「サステナビリティ革命」とも言える世界の実現に貢献したいと考えています。そして、創業者の「分かりやすく世の中の役に立つ」、「グローバルに貢献する」、「100年後も挑戦し続ける」の3つの想いを持って、環境問題や社会課題の解決に貢献するなかで「競争優位性」を実現したいと考えています。

<国分寺市のごみ・資源物総量の推移(グラフ)とアート作品>

イノベーションによる社会課題解決への貢献

 TBMはイノベーションを中心においた事業活動を展開しています。
 その初めの一歩として、日本発のイノベーションにより、プラスチックや紙の代替となる新素材LIMEXを開発しました。LIMEXは、従来の発想にとらわれず、資源を輸入するのでは無く、資源の乏しい我が国にも豊富にある石灰石を主原料しています。LIMEXをプラスチックや紙の代替素材として活用することで資源の使用量を抑制し、焼却時のCO2排出量も削減可能となります。
 まさにSDGsの考え方のひとつである“アウトサイドイン”の発想で実現したイノベーションと言えます。
 そして次なるイノベーションとして、廃棄プラスチックが50%以上、再利用した新素材であるCirculeXを開発しました。 CirculeXは、使用後は価値が下がる消費システム(直接経済)から資源を回収し、循環的に活用することで価値を維持する循環型経済に繋がるイノベーションであるとTBMは考えています。我が国のプラスチックごみの処理は、輸出とサーマルリサイクル(熱回収)が主な方法です。
 しかしながら各国での環境意識の高まりや新たな規制により、廃棄プラスチックの海外輸出が困難になってきています。また国内ではサーマルリサイクルへの問題点を指摘する声もあります。まさに我が国においては廃プラ処理と廃プラの資源化の推進が急務であると言われます。

自治体や企業とのパートナーシップを活かした実証実験や協定を開始

 新素材CirculeXなどを活用した実証実験を神戸市や葉山町などの自治体と実施しています。
 神戸市とは2021年1月にペットボトルキャップ15万個を市内スーパーなどの店舗92ケ所で回収し、再生材98%利用の市指定ごみ袋に生まれ変わるプロジェクトを展開しています。
 葉山町(神奈川県)とは、町民の家庭より排出される使用済みプラスチックを回収し、自動選別装置で選別された資源プラスチックを用いた「マテリアルリサイクル* 」の実証実験を2021年3月から実施しています。TBM は、今後高まる市区町村、排出事業者の要請に迅速に応じることができるよう、先行してプラスチックの資源循環スキームを構築し、全国的なマテリアルリサイクルの推進に貢献することを目指しています。
 また2021年4月には京丹後市と「経済・社会・環境が好循環する持続可能なまちづくり」に向けて包括連携協定を締結しています。
*マテリアルリサイクルとは、使用済み製品や生産工程から出るごみなどを回収し、利用しやすいように処理して、
新しい製品の材料もしくは原料として使うこと

<国分寺市のごみ・資源物総量の推移(グラフ)とアート作品>

<国分寺市のごみ・資源物総量の推移(グラフ)とアート作品>

お客さまと一緒に創るサステナビリティ

 TBMは、一般消費者向けの EC サイト 「ZAIMA(ザイマ)」という DtoC*事業を開始しました。
  「ZAIMA」は「素材」を切り口に、お客さまが、サステナブルな製品を選べる「これからの時代のセレクトショップ」です。「LIMEX」やトウモロコシなどを原料にした PLA(ポリ乳酸)を使用した環境に配慮された製品を取り揃えています。
 今後は、グループ会社のバイオワークスと連携して製品ラインナップを拡充、製品のライフサイクル(原材料の調達から製造、廃棄・リサイクル)の透明性を重視しながら製品の背景にある素材のストーリーを発信していきます。素材から考え直すことが、より良い未来に繋がることを信じて、持続可能なライフスタイルをお客様と共に創造していきます。
DtoC*(D2C)= Direct to Consumer:
メーカーが自社で企画・製造した商品を、直接消費者に販売するビジネスモデル

<国分寺市のごみ・資源物総量の推移(グラフ)とアート作品>

SDGs×TBM

 TBMは、SDGsの8つのゴールに関する中核目標を立てています。
 ゴール12 の「つくる責任 つかう責任 」を中心に置き、豊富に存在する原料の使用や官民で連携して素材を循環させる仕組みをつくり、 資源を循環し続けることで、環境への貢献を目指しています。また、被災地や水不足の地域での 雇用と産業の創出によって、社会や経済への貢献も強化します。
 そして何より、多様なパートナーシップによって、私達の与えるインパクトを増大させていきます。

<国分寺市のごみ・資源物総量の推移(グラフ)とアート作品>